目覚め
ずっと同じフラッシュバックのような映像を見ていた
また例によってあの神経に直接働きかけるような映像だった
突然現れた不気味な男
オレにやたら話しかける不気味な男
血の通ってないような不健康そうな肌の奥の混沌と濁った瞳
その瞳が期待を寄せる先で巻き起こる業火
その炎が女を焼きつける
そして男は言う
「僕は"失敗"じゃなくて成功が見たかったのになー」
と。
そこで映像はいったん途切れ空白の時間が流れ、そしてまた繰り返す
そんな映像をただ何度も繰り返しみているうちに、ふと目が開いた
白い天井
どうやらオレはベッドの上で横になっているらしい
左の腕からは管が伸び、点滴に繋がっている
上半身を起こし周りを見てみると、向かい側に2つの空いたベッドが目についた
…どうやらここは病院らしい
元の世界に戻ってきたのか?
「潤!??」
オレを呼ぶ声が耳に入った
声のする方へ目を向けると由美子が立っていた
「…由美子」
すると由美子はいきなりオレに抱きついてきた
目には涙を浮かべている
点滴の針が痛い………
「ばか!!心配したんやから!!!潤ちゃんが…潤ちゃんずっと寝てるから……もう起きへんのちゃうかって、、」
そうか…
そんなにオレの事心配してくれてたんか…
「ごめんな。」
オレは由美子の小さな頭をそっと撫でた
少しの間、由美子はオレの胸に顔をうずめて泣いていた
由美子が泣き止み、落ち着いてからオレは体を離した
「オレ、何日くらいこんな状態やった?」
「んー、10日くらい。傷は治るの早かったみたいやけどずっと意識が戻らん状態やってん」
「そっかあ…」
そう言えばあの時撃たれて意識無くしてたっけ
それから将吾と高島がここまで運んでくれたのだろう
「そうや!!由美子、高島と将吾に連絡取れるか?」
「もっち♪あの二人も良くお見舞い来てくれててんで。まぁ由美子ちゃんと比べちゃったらそりゃ…「わかったから今すぐ連絡してくれ!」」
「ほーい。」
由美子はひとりブツブツ言いながらケータイを取り出して2人に連絡を始めた
それから程なくして2人がこの場に集まった
「やっと目が覚めたようね。ぐーたらぐーたらとまったく、呑気なものね。」
「それが死にかけたヤツに言う事かよ。もっとさ、こう、気のきいた"神倉クン、元気になってよかった。私、心配したんだから"みたいな事とか言われへんのかよ」
「あなたの無謀な行動が招いた事じゃない。自業自得よ。それにあなたみたいな男の事なんかこれっぽっちも心…「はいはいはい、2人とも。せっかく神倉が起きたってのに、言い合いはやめて。」」
「将吾、ありがとうな。オレをここまで運んでくれたんオマエやろ?」
「ああ、僕と高島で一緒に。調子はどうだい?」
「完璧や、10日も寝てたと思えんくらいに頭も体の調子も冴えてる」
「それは良かった」
「…で、何の用?こんな茶番をするために私達を集めたわけじゃないでしょ?」
高島の言葉で本題に気づいた
そうだ、これからの話だ
オレは目覚めるまでの話を二人にした
そして二人はオレが眠っている間に起きた出来事を話してくれた
先程から話についてこれてなかった由美子はぼけっとした顔でオレ達三人の顔を見つめていた
「つまりその"マイティ"とかいう男の話によると、最近起きた変化が力の始まり…ってわけね」
「そうゆう事や。オレが今日ここで目覚める前に見たフラッシュバックの男、確かうちのクラスの…森本かなんかゆうやつ?オレはアイツが黒幕と踏んだ」
「ああ、あの地味な転校生のか」
きっとあの時女教師を襲った炎もヤツの能力だったのだろう
「そうや。アイツが現れてから全部変わった」
「あなたの考えに賛成よ。私も前からあの男が全ての始まりと読んでいたの。そこにあなたの情報で推理が固まった。」
そこまで言うと高島の表情が曇った
「どうした??」
「ただ…唯一噛み合わないのが、あの男に能力者の反応が無いこと」
「能力を隠せるレベルの能力者だっているんじゃないのか?」
オレも思っていた事を横から将吾が口に出した
「ええ。つまり、とてつもなく強力で尚且つ検討もつかないかなり危険な能力者ってこと。きっと一筋縄でいく相手じゃないわ」
沈黙が少しの間病室に続いた
下手をすると命を落としかねない
もう取り返しのつかない事になるかもしれない
きっと皆、それを考えているのだろう
少しの時間がたち、将吾の口が開かれ、その沈黙は閉ざされた
「例えどんな相手でも戦うんだろ、神倉」
「ああ、全部終わらしてやる」
全て終わらせる
それが望の願いだから
それがオレの生きている意味だから
「神倉が戦うなら僕も戦うよ」
「本当にいいんやな?死ぬかもしらんで」
「どっちにしろSCDの人間殺してしまったしね。もう充分取り返しのつかないとこまで来ちゃってるよ。もう追われ続けるだけも嫌だし」
将吾は儚げに笑った
オレは本当に良い仲間を持った
「そうか。じゃあ元凶を叩いた次は政府も潰すか」
「ああ!!」
「全く聞いてて呆れるわ、あなた達には。政府の力がどれ程のものか知っているの?」
高島は心底うんざりしたような顔をしていた
将吾はそんな事も気にせず言葉を放った
「で、高島はどうするんだ?」
「私が居なかったらあなた達、どうにもならないでしょ?…もう少しだけつき合ってあげるわ」
「ありがとう、高島」
「別にあなたの為に言ってるんじゃないんだから!どうせあなた達みたいな馬鹿で無謀な二人じゃ…「ありがとうな、助かるよ」」
「だから…もう……。もう、いいってば!!!」
オレは本当に良い仲間達を持った
素晴らしい仲間達に出会えた事を誇りに思う
きっとコイツらがいればどんなデカい敵でも戦える
そう思った
「私も戦うよ!!」
話に入らなかった由美子が突然声を出した
「私もさ、一応能力あるねんよな。そりゃみんな程役にたつかわからないけど…。でも、でも潤ちゃん達の役にたちたい!!」
由美子がそこまで言うのは正直予想外だった
性格上そんな事を思うくらいまでは考えていたが、自らの命を危険にさらしてまで戦うとは考えていなかった
「私…潤ちゃんの役に立ちたい。潤ちゃんの為に戦いたい」
「由美子…。」
由美子は真剣な眼差しで見据えてきた
「やっぱりオマエまで巻き込む訳にはいかん。」
「なんで?この二人は巻き込むのなんで私はあかんの??」
由美子はちょっと泣きそうだった
「中野さん、神倉は中野さんに危ない思いをさせたくないんだ。わかってやって」
「どうして!?どうして私だけ危ない目にあわしたくないの!?高島さんだって女じゃない」
「由美子…。」
「あなたと私じゃ格がちがうの、能力からなにから何まで。あなたみたいな子供じみた仲間がいても足手まといなの、わかる?」
「おい高島、そんなキツい事言わなくても」
由美子はおもちゃをねだる子供のようにだだをこねていたが、高島の言葉を受け病室を飛び出した
「……これでよかったんでしょ?」
「あぁ…。悪役やらしてわるかったな」
「別にあなたの為じゃないから」
かくして戦いは幕をあけようとしていた




