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最弱四天王転生~1年後に死亡するクズ悪役に生まれ変わったので、原作知識と努力で破滅エンドを塗り変える~  作者: 御鷹穂積


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7◇真の忠臣

本日複数更新

こちら7話め





 再び、場が静まる。

 だが今度はみんなが、続くオレの言葉に関心を向けているのが表情で分かった。


「これまで、オレは人類の目をこの部隊に引きつける為に戦っていた。そしてその目標は果たされた」


 部下にまで嘘をつくのは心苦しいが、真実が状況を好転させるとは限らない。

 ならば嘘を貫くのみ。

 いずれ歴史が、嘘の方を真実として記すまで。


「これからは、ド派手な演出は不要。お前たちの勇猛さは、オレの指示したタイミングで発揮してもらう」


「ど、どういうことだ?」「グレン様らしくねぇな」「ばっか、今までは魔王軍のために、イカれたワルを演じてたってことだろうが!」「マジかよ! 本気でイッちまった激ヤバ上司だと思ってたが、とんだ役者じゃねぇか!」「おいおい、拾ってくれた魔王様の為に、憎まれ役を買って出たってことか? 泣けるじゃねぇか」「しかも俺たちのことまで考えてくれて……」「つっても、具体的に何してくれんだ?」


「まずは配偶者について! 各方面に協力を仰ぎ、結婚願望のある女性を募集! 希望者は結婚活動推奨会、通称婚活パーティーに参加できるものとする!」


「ひゅー!」「こんな仕事じゃ出会いもないから助かるぜー!」「しかも最初から結婚願望あると分かってんだから、こっちも気合い入れて口説けるってもんだ!」


「次に親孝行! 今までのような無茶を繰り返すことはしない! よってお前たちには休暇を出す!」


「これで母ちゃんに会いに行ける!」「おれ、妹の子供と遊んであげるんだ」「両親を王都旅行に連れて行くぜ!」


「戦場での待遇も改善する! 水魔法の使い手を登用し、日に一度の水浴びを実現! 食事にはそれ専門の人材を同行させ、甘味も提供しよう!」


「グレン様、あんたさすがだよ!」「これまでついてきてよかったー!」「どんな戦場にもついてくぜ!」


 財源も問題ない。

 これまで略奪した品々をたんまり溜め込んでいるからだ。


 グレンは二度と孤児時代の貧しさを味わいたくないからと財を築きたがっていたのだが、オレには関係ない。

 残り一年でぶち殺されるかもしれない状況で、金貨を惜しんでいられるか。


「新生グレン部隊として、今日、オレたちはここで生まれ変わるのだ!」


「うおおおおおおおおおおお!!!!」


 練兵場が大熱狂に包まれる。


 ――よし、上手くまとまった。


 あとはお下品な言動をなんとか矯正しなければ。


 ◇


「報告を」


 御簾で隠された玉座。

 そこに腰掛ける魔王の言葉に、ひざまずいた魔人が「ハッ!」と応える。


 グレンスフィオールの部隊には、監察官が派遣されていた。

 正確には、監察官はその身分を隠し、あらゆる部隊に潜んでいる。

 そしてその動向を魔王に報告し、問題ありとなれば相応の処罰がくだされ、叛意ありとなれば処刑される。


「グレンスフィオール殿について、調査を続けた結果――」

 

 彼の知らないところで、彼の運命が決まろうとしていた。



「彼ほど愛国心に溢れた者はおりません」



 監察官はそう告げる。


「粗野な振る舞いも残虐な行為も、全ては魔王軍が為。人類の注意を己の部隊一つに向けるのが目的と判明しました。一定の成果が出たからか、彼は方針を変更。作戦を他部隊の補助に切り替え、己の部隊を囮にした作戦で戦果を上げています。また、戦場における兵站や衛生環境も改善。配下には惜しみない褒賞と休暇を与え、希望者には結婚活動の補助まで行っています」


 熱に浮かされたように語る監察官に、玉座の王もこころなしか呆気に取られている感があったが、監察官はそれに気づかず続ける。


「そればかりか、戦死者の遺族に見舞金とは別に援助を行っていることを確認。更には『三界』『森聖』のシンラスフィオール殿に依頼し、自領に巨大な農園を築き、人類との戦いで故郷を失った者たちを積極的に雇用。これら全ては、私費を投じて行われています」


「ふむ……」


 魔王の影が己の顎を撫でる。


「彼が略奪などによって財を溜め込んでいたのは、いずれくるこれらの計画を実行する為の資金が必要だったからと判明。魔王様、グレンスフィオール様は真の忠臣でございます」


「そうか」


 監察官は懐から一枚を紙を取り出す。


「私はこれより、監察官の任を辞し、グレンスフィオール様の配下として力を尽くそうと思います」


 辞表であった。

 グレンスフィオールの悪行を暴き、裁きにかけると誓っていた監察官だったが、今や彼に心酔していた。


「……許可する」


 魔王は面食らったような間を開けながらも、厳かな声で告げる。


「ハッ」


 跪いたままの監察官を置き、王は玉座を立ち、その場をあとにする。


「……ふ、グレンスフィオール。かつてお主の目に燃えていた上昇志向に、我は期待した。それが誤った形で発揮されてしまったかと危惧していたが、杞憂だったようだな」


 魔王は、孤児だったグレンとシンラを拾った時のことを思い出す。


 弟分のシンラを背中に庇い、王を前にしても毅然とした態度を崩さなかった小さな豪傑の姿は、今も目を閉じれば脳裏に浮かんでくる。


 そんなグレンは、シンラの急成長を機に屈折してしまったかに思えた。魔王の励ましも彼には届いていないようだった。


 このまま暴走を繰り返していては、いずれ取り返しのつかない失敗をすることは目に見えていた。


 コキューリアとの魔神決闘で目が覚めることを期待していたが、まさか全てが彼の手のひらの上だったとは。


「見事だグレン。次の魔王は、お前やも知れぬな」


 魔王さえグレンの中身が変わってることには気づかず、全てがいい感じに解釈されて評価が爆上がりしていくのだった。





この7話までで、作品の雰囲気をお伝えできたなら幸いです。

今後の更新の励みになりますので、

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