3◇魔神決闘の誓いは絶対
本日複数更新。
こちら3話め
おかしいな。
今、コキューリアが敗北宣言をしたように聞こえたのだが……。
「たった今、理解しました。貴方の粗野な態度は、相手を不快にさせることでその判断力を鈍らせる為の武器なのですね」
確かに今日のオレは、グレンの仮面を被りながらも、コキューリアを怒らせる為の言動を心がけていた。
冷静さがウリの人物と戦うなら、そのウリを奪ってしまえば戦力が削られるも同然。
実際、彼女は勝負を急いだわけで、オレの作戦は効果があったと言えるだろう。
けれど、昨日までのグレンの場合、ただの素だ。
「わたくしは、敵を人とも思わぬ貴方の暴虐を許せませんでした。しかし今日の貴方は、己の究極魔法を鼻にかけず、一兵士たちに余波が及ばぬよう完全に制御していました。そのような配慮ができる者が戦場であのように振る舞っていたのなら、相応の理由があるのでしょう」
ないよ。
言葉通り、人が変わっただけだよ。
逆に、決闘に勝つ為に客ごと巻き込む攻撃を放つやつは異常だよ。
いや、グレンはそれだけ異常だった、ということか。
「言われてみれば、人類側の憎しみは貴方の部隊に集中しています。他の部隊や四天王の戦果は、貴方が憎まれ役を買って出たからこそのものだったのかもしれません」
すごい。
人って好意的に解釈すると、暴虐の四天王をここまでよく言えるのか。
出世欲で人類を蹂躙し、部下の被害も出しまくった擁護不能のクズなのだが。
釈然としない気持ちと、己に都合がいいから黙っておこうという気持ちが同居する。
「貴方からしてみれば、矢面に立つ己を愚弄するわたくしは度し難い存在だったでしょう。同胞の気遣いさえ汲めぬ愚かなわたくしにそれを教える為、決闘を受けたのですね」
なんかめちゃくちゃいい感じにまとめてくれた。
この人、もしかしてチョロいのだろうか。
いや、根がいい人なのだろう。
なにやら晴れ晴れとした顔をしている。
ともかく、勝敗が決したということで、戸惑いつつも地上に降りる。
「にゃーい! さすがグレン様にゃー!」
興奮して猫が出ているニャルルの他に、部下たちも叫んでいる。
「脱げー! 脱げー!」「ここで剥いちまってくだせぇグレン様!」「楽しんだら俺たちにも、な?」
「……部下の教育は、したほうがよろしいかと思いますが」
コキューリアがその美しい顔を歪める。
尤も過ぎる指摘だ。
イイジママサタカとしても、是非改革していきたい点である。
ともあれ、同意するわけにはいかない。
「……戦場では役に立つ」
「ふむ。思えば、貴方は獣人族を庇護し、種族を問わず登用するなど、見習うべき点もありました。そういったことに目を向けず、表面的なことに捉われたわたくしの完敗ですね」
ここまで言われると心苦しくなってきた。
「オレはオレの思うまま振る舞っているだけだ」
だがまぁ、よく思われる分には問題ない。
「感服いたしましたグレン殿。これまでの非礼をお詫びいたします」
コキューリアが頭を下げる。
「その必要はない」
「ふふ。そうですね、人類側に誤った認識を持ってもらう為、戦場では引き続き無礼な態度をとることといたしましょう」
俺が主人公たちに最初に狩られる四天王となったのは、オレの部隊が魔王軍で孤立していたからだ。
他の部隊と険悪で、連携がとれていないことは人類側にも知られていたのである。
だがこの調子だと、今後コキューリアの部隊はピンチに駆けつけてくれそうだ。
「そ、それで……賭けについてですが」
賭け? と内心首を傾げていた俺だが、すぐに記憶を探って該当の情報を引き出す。
そして固まった。
グレンの奴は「負けたらオレの性奴隷になれ」とか全年齢向け作品とは思えぬ発言をしていたのだ。
コキューリアの側も、負ける気がしなかったのでこれを了承してしまった。
本来は調子に乗ったグレンはここで右目を失うのだが、仲間がイイジママサタカになったことで結末が変わったのである。
彼女は棄権し、オレが勝ってしまったのだ。
ということは……。
「いや、待て。あれは忘れろ」
オレはそう言うのだが……。
「そ、そういうわけには参りません。忘れたのですか? 魔神決闘の契約は絶対。破れば魂が引き裂かれます」
そうだ。そうだった。
この世界では神への誓いは強い力を持つ。
魔神決闘は魔界の神に捧げる戦いで、賭けの清算は絶対。これを破ると神罰が降る。
原作のグレンは負けたことで他の四天王に敬語を使うことを強制され、内心ブチ切れていた。
性奴隷と秤にかけるには重さが足りないにもほどがあるが、グレンにはかなり効いたようだ。
だが今回はオレが勝ってしまったので、コキューリアの方がこれを遵守せねばならない。
「……棄権などするからだ」
というか、性奴隷になると分かっていて棄権するとはどういうことだろう。
氷雪剣を使うべきだったのではないだろうか。
「やはり、わざとわたくしに負けるつもりだったのですね? 究極魔法の直後に追撃してこなかったことで確信いたしました。大方、油断したふりをしてわたくしに氷雪剣を抜かせるつもりだったのでしょう」
げ、バレてる。
表情に出てしまったのか、コキューリアが慈愛の笑みを浮かべる。
子供の嘘を優しく許す母のような優しい笑顔だった。
「わたくしに真実を悟らせ、その上で花を持たせるつもりだったのでしょうが、そこまで恥知らずにはなれません」
「いや、しかし……」
「貴方の深淵なる器、わたくし如きに見定められるとは思いませんが、その一端を目にすることは叶いました。そして、貴方の真実を知った今、わたくしは貴方を……強く認めています」
な、なんだかコキューリアの頬が赤いのだが。
瞳も熱っぽく潤んでいるのだが。
原作ではグレンの訃報を聞いて「そうですか、これで次の四天王を探せますね」とか言っていた人と同一人物とは思えないのだが。
なんとか困惑を表に出さぬよう気をつけつつ、オレが口にできたのは――。
「勝手にしろ」
の一言であった。
顔を歪めてもいい素っ気ない発言に、コキューリアは頬を染め水気を帯びた瞳で「はい、勝手にしたします」と微笑むのだった。
そしてその夜。
「お務めに参りました。四天王『氷の番』にして、貴方専用の性奴隷コキューリアです」
いつもの服の下に色っぽい下着を着込んだコキューリアが屋敷にやってきた。
その行動力に驚愕したオレだが……二次元美女に迫られる、しかも相手がノリノリという状況に鋼の精神――などまったく機能せず、彼女を招き入れてしまう。
それでもギリギリのところで手を出さないよう耐えていたのだが……。
「賭けの精算は絶対。抱いて頂かねば……わたくしに神罰が下ってしまいます。……これ以上、乙女に恥を掻かせないでください」
と上目遣いに潤んだ瞳で言われては、拒めるわけがなかった。
◇
「ま、まさに烈火の如き激しさでしたね。わたくしも、精進いたします」
翌朝、オレの腕を枕にしたコキューリアが、うっとりした顔で言う。
……こうなったら仕方ない。
これからはコキューリアと共に手を携えて頑張っていこう!!!
手を出した以上、責任はとるつもりだ。
というか、グレンの身体は凄まじかった。英雄色を好むとは言うが、さすが最弱とはいえ四天王に至るほどの男ということか、まさに底なしであった。
「子供はどちらに似るのでしょうね?」
コキューリアの変化が怖いほどなのだが、オレはそれを顔に出さないよう気をつける。
こんなふうにして、転生初日から予想外の展開を迎えることになった。
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