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最弱四天王転生~1年後に死亡するクズ悪役に生まれ変わったので、原作知識と努力で破滅エンドを塗り変える~  作者: 御鷹穂積


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10◇勇者

本日複数更新

こちら3話め





 さすがは将軍、兵の統率はしっかりととれていた。


 バーンズの軍がエルフ村を侵略し、次々にエルフを捕らえていく。

 男は殴られ意識を失い、女子供が泣き叫ぶ。


 エルフは老人だろうが見目麗しいので、不要だと処分される者がいないのが救いだ。


 ちなみに、エルフは男が攻撃に、女が守りに特化しているという。

 しかし女はその魔力の大部分を結界維持に使っている為、結界が破られると簡単に捕まってしまうのだとか。


 だからこそ、これまでのバーンズは邪魔な男を殺していたのだろう。


「グレン殿! こちらへ!」


 ほどなくして、崩壊したエルフの隠れ里へ、オレは足を踏み入れる。


 橋は焼け落ち、樹上に築かれた家は炭と化していた。

 随分とむごいことをするものだ。


 バーンズは、地上の開けた場所に、捕らえたエルフたちを並べていた。

 魔力は体力のようなもので、一度切れると、そう簡単には回復しない。


 瞳が無事な女エルフたちはみな憎悪や恐怖を目に宿しているが、後ろ手に縛られても抵抗できないのは、その手段がないからだ。


 こうして捕らえられたエルフたちは、契約魔法で縛られ、奴隷として売られる。

 本来契約魔法は互いに取引を完遂させるためのものであったが、『脅迫に屈する形での同意』でも発動する為、『家族を殺されたくなかったら、奴隷契約に同意しろ』なんて理不尽も罷り通ってしまう。


 そんなガバガバでいいのだろうかと思うのだが、契約魔法の強要は法で禁止されており、露見した場合は最悪処刑される。

 だが、この法が適用されるのは魔族が相手の時のみ。


 人間やエルフなどには適用されないのだ。

 合法とはいえ、コキューリアあたりはブチ切れそうだけれども。


 当然、オレも胸糞悪い。

 あとで助けるのだとしても、エルフたちが感じた恐怖は本物なのだから。


「選りすぐりを用意しておいたぞ! どのメスにする?」


 四人の美少女エルフが、服を剥かれた状態で立たされている。

 あまりに酷い光景だが、グレンとして顔を顰めるわけにはいかない。


 精一杯平静を保ち、四人を見回す。


 ――いた!


 編み込みの入った、金の長髪。青い瞳に、白磁の肌、細い身体に、丸みを帯びた豊満な胸部。

 エルフヒロインの、ミュークルだ。


 本来は心優しい子だったのだが、バーンズに故郷を奪われたことで復讐の鬼になる。

 今はまだ、不安そうに瞳に涙を湛えていた。


「この者を」


 と、オレが手で指し示すと、ミュークルはビクッと震えた。

 罪悪感が凄まじい。


「さすがグレン殿、お目が高い! これは、隠れ里の長の娘だそうだよ。性奴隷に教養など不要という考えもあるだろうが、最低限の考える頭は必要だものな。いやはや、審美眼まであるとは!」


 バーンズの部下が、ミュークルをオレの前まで引きずってくる。


「いやぁ……ッ! お母さん! お父さん! お兄ちゃん!」


「ははは! そいつら全員、負けたんだよ! お前を助けられるものか! バカな耳長め!」


 バーンズが楽しげに笑い、部下も追従する。最悪の空間だ。


 オレはマントを外すと、彼女にそっとかけた。

 バーンズが怪訝な顔をする。


「自分のモノを、見せびらかす趣味はなくてな」


「なるほど! それは失礼した! そうだ! あそこに天幕を張らせてある。商品の鑑定や積み込みに少々時間がかかるから、よければ休憩されてはいかがだろう? 奴隷契約は、また後ほど行えばいい」


 つまりは、早速ミュークルとエロいことをしてこい、と気を遣っているつもりなのだろう。

 吐き気がするが、この場を離れるには好都合か。


「お心遣い、ありがたい」


「いや、貴殿のおかげで被害を最小限に抑えられた! こちらこそ感謝が絶えないよ! 今後ともよろしくできれば幸いだ! ははは!」


 オレはそっとミュークルの背中を押す。彼女はまだポロポロと涙を流していたが、抗っても無駄だと悟ったのか、下を向きながら歩き出す。


 天幕に入ると、誰かが聞き耳を立てていないかを確認。

 魔力探知を行うことで、大抵の魔族は検知できるので、索敵にも使える。


「よし。見張りはついていないな」


「ひぃっ」


 オレが突然話しだしたからか、ミュークルが怯えてしまう。


「あぁ、すまない。こんなことを言っても信じられないだろうが、オレは敵じゃない」


「…………」


 どう伝えたものか。色々考えてはいたのだが、実際の被害を目にすると、用意していた言葉はどれも薄っぺらく、彼女に届かない気がする。


「君の、お母さんも、お父さんも、お兄さんも、大丈夫だ。助かるよ」


 なんとか捻り出した言葉に、彼女が目を見開いた。


「……どういう、ことですか」


「少し話が長くなるんだが……」


 オレは、リットにしたのとほとんど同じ話を、彼女に伝える。


「魔王軍にも、いい人と悪い人がいて……貴方は、いい人?」


 ミュークルはオレの話をそう解釈したようだ。


「そう在りたいとは思っている」


 同胞を陥れようとしている者が善人と言えるかは別として。


「いい人なら、あの人がここを襲う時に、止めてくれれば……」


 恨みがましい視線に胸が痛む。


「そうだな。だが、オレの立場では、それは出来ないんだよ。出来るのは被害を最小限に抑え、君たちが助かる道を用意することだった……」


「勇者様が来て、悪い人たちをやっつけてくれるんですか……?」


 襲撃前には間に合わなかったようだが、リットにこの場所は伝えてある。


 バーンズが移動を開始する前には到着してほしいものだが……こういう時、スマホですぐ連絡がとれないのはもどかしい。


 使い魔を通してやりとりしているが、これは伝書鳩で連絡を取り合っているのと同じなのだ。地球とは、情報伝達の速度が雲泥の差なのである。


「グレン様」


 天幕にニャルルが入ってきた。


「ひゃっ」


 驚いたミュークルが飛び上がった。

 その拍子にマントがズリ落ちそうになり、俺は咄嗟に支える。


「大丈夫だミュークル。オレの味方だ」


 ニャルルはミュークルを一瞥したが、特に何を言うでもなく、俺の前に膝をつく。

 今の彼女が身にまとっているのはメイド服ではなく、女スパイが着てそうなピチッとした服であった。


 獣人は身体能力に優れるが、魔力の少なさから魔族内で冷遇されている。

 だが、見方を変えれば『魔力が少ないゆえに魔力探知に引っかからず、素の身体能力が高いので魔力強化をする必要がない』とも言える。


 獣人は真正面からの戦いを好むが、そこの意識さえ変えることができれば、非常に優れた諜報員や暗殺者になれる素質があるのではないか。


 俺はそう考え、ニャルルに相談したところ、彼女の一族が率先して協力してくれることになった。

 屋敷ではメイド、任務に出れば諜報員というわけだ。


 諜報技術に関しては、元監察官の部下に指導させている。


「勇者パーティーが近づいています。最も近い部隊と接敵するまで、五分ほどかと」


「そうか、来たか」


 俺はミュークルに向き直る。


「もうすぐ助けがくる。だが、バーンズという男は周囲への被害を考えるような奴じゃない。劣勢になればエルフを人質にとることも厭わないだろう」


「そ、そんな……」


「だから、君たちを逃がす。バーンズの部下もいるだろうが、安心してくれ。しばらく行った先で、俺の仲間が必ず君たちを助けてくれる」


 バーンズはグレン部隊を警戒しているかもしれないので、シンラとコキューリアに救援を頼んでおいた。


 無理やり性奴隷にされた――と思われている――コキューリアが俺に協力するなど誰も想像していまい。

 実際は、ニャルルと代わる代わる、夜這いを仕掛けてきているのだが。


「ニャルル、お前はシンラたちと合流してくれ」


「はいにゃ!」


 シュッとニャルルが消える。すごい身体能力だ。


「行こう、ミュークル」


「……信じて、いいんですか?」


「必ず君を助ける」


 死にたくはないからな。

 ミュークルはこくりと頷き、俺についてきた。


「敵襲だ! 戦闘の邪魔になる! 奴隷を逃がせ!」


 俺が叫ぶと、近くの者たちが反応する。


「え? い、いやしかし――」


「バーンズにはオレが説明する! この強大な魔力が感知できないのかグズめ! 逆らう奴はここで消し炭にしてやってもいいんだぞ!」


 グレンの悪評は、こういう時には役に立つ。

 バーンズの部下たちは、怯えたように震えると、すぐにエルフ奴隷たちを馬車に乗せ、襲撃者たちと反対方向に走り出した。


「こいつも頼む。傷一つでもつけたら承知せんぞ!」


「は、はいぃ……!」


 ミュークルにだけ見えるように、ウィンクする。

 彼女は、少し、ほんの少しではあったが、笑ってくれた。


「グレン殿!」


「バーンズ、貴殿なら気づいていよう」


「あぁ、異様な魔力が急速に近づいてきている。なんだこれは!?」


「オレは戦場で数度、この魔力を感じたことがある――勇者だ」


「なんだと!?」


 勇者パーティーは、勇者ゼニス、魔法使いレジーナ、剣士エイリ、重戦士ゴードン、強化付与士リットという構成だ。


 勇者ゼニスは『十倍の速度で成長できる聖剣』を持っており、それによって無双している。

 そこに仲間たちのフォローも入り、手が付けられない魔族の脅威となっていた。


 勝利を重ねるごとに調子に乗っていく残念な性格の所為で、原作始まって数十ページで破滅する、可哀想な奴だ。

 リットが加入してからの成長分は、彼を追放して全て失ってしまう。


 一年分の経験値を喪失したゼニスは、リットの快進撃に反してどんどん落ちぶれていく。

 しまいには聖剣まで失い、『喰った相手を取り込む魔剣』に食べられ、変わり果てた姿でリットたちの敵となり、討伐されるというオチだ。


 しかし、現時点では、仲間と連携して勝利を積み重ねる、まさに最強の敵。


「勝手だとは思ったが、馬車は逃がしておいた」


「いや、迅速な判断に感謝する。最近はエルフも減ってきたからね、貴重な商品を失うわけにはいかない。して、どうするグレン殿!」


「ここで奴らを食い止めねば、商品に追いつかれる」


「チッ……なんだって、このような場所を嗅ぎつけたのだ」


「奴らの魔法使いは魔力探知能力に優れているという。我々の行動が、探知に引っかかったのだろう」


「忌々しい……! だが、『十二魔将』が敵前逃亡などするわけにはいかない。ここで迎え撃つ――グレン殿、手伝ってくれるか?」


 ……嫌だなぁ。

 できれば彼にはここで一人死んでほしい。


 だが俺は堂々と頷く。


「もちろんだ。ここはバーンズ殿の戦場、敵将の首は譲ろう。残りを、オレが頂いても?」


「フッ。これが終わったら、ドワーフから奪った、特別な酒を共に呑もう」


 ドワーフにもちょっかいかけてたのかよ。本当にどうしようもないな。


「それは楽しみだ」


 耳を澄ますと、バーンズの部下たちの断末魔が徐々に近づいてきた。


「おらおら死ね死ねクソ魔族共がぁ! 正義の裁きを受けやがれぇッ!」


 正義の味方のセリフとは思えないセリフが森に響き渡る。


 しかしこの、整った容姿を醜い性格で歪めまくっている金髪碧眼の男こそが、勇者ゼニスであった。

 勇者一行が、オレたちの前までやってくる。


「なんだぁ……? お前らがここの親玉か?」


「『十二魔将』『爆塵』のバーンズ」


「『四天王』『炎の番』グレンスフィオール」


「ハッ、今から死ぬゴミの名前なんか覚えるかよ。だが、俺の名前は脳みそに刻んどきな。勇者ゼニスにぶっ殺されたと、地獄で宣伝しろやカス魔族共!」






みなさまのおかげで、早速日間総合240位&

[日間]異世界転生/転移21位となっておりました。

ありがとうございます!!!!!!!

-------読者のみなさまへのお願い-------

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