追われる身
「.............」
ロウは目的の資料を探し、急いで工作室に戻った。
「博士!その機関は......」
「おや?あなたは」
こちらも茶色の軍服を着た男がいたが、腕章に『憲兵』と書かれていた。
「ロウ博士、このエターナルエンジンが何か?」
「いえ......」
「ロウ、例の資料は持ってきてくれたか?」
「ええ、ここに」
チラと後ろを見るが憲兵はまだいる。
憲兵を気にしても仕方がないので、設計と計算を繰り返す。
「オットー博士、これが計算の結果です」
手渡す。
「おお、ありがとう」
「これはいつ出来るかい?」
「今すぐにでもできますよ」
突然オットー博士とロウは憲兵に飛びかかり拘束した。
「何を!!........」
口元は抑えられ、腰の拳銃を抜こうとするも、それも取られ一切抵抗できなくなる。
「ロウ、逃げろ」
「しかし、オットー博士は!?」
「ワシは長くない、まだ未来ある若者が逃げるべきだ」
「しかし.....」
「さっさと行かないか!?」
「はい!!」
工作室を出て連絡路を走り資料室を過ぎて飛行艇のあるドッグまでたどり着いた。
「確かここに1人乗りのが.........」
貨物の運搬や搬入、飛行艇の誘導などをする飛行船がある場所へと走る。
「あった!」
そこには、先ほどまでの飛行船とは違う戦闘用の飛行船が鎮座していた。
「蒸気はいっぱいだ、弾もある、逃げなきゃ.........」
1人で大きなバルブの開閉ハンドルを回し、飛行艇と外を隔てる扉を開けた。
「うわ!」
外の冷たい空気が一気に流れ込んで、帽子が飛ばされそうになるのを抑え飛行船に乗る。
エンジンの横にある小さなレバーを下ろすと破裂音と共に、エンジンが回り始めた。
「うまくいった、この空砲もどこかで調達しなきゃ」
ある程度エンジンが温まったところで、飛行船の固定具を外した。
飛行船は下にあるレールに沿って後ろ向きに滑り落ちた。
「博士......」
少しの未練を残し飛行船の操縦桿を握る。
飛行艇の後ろから飛行船が落ち、飛行艇の下をスッと飛び抜ける。
「博士待っていてださい、絶対に助け出しますから」
蒸気雲を残し、飛行艇は遠くに飛び去っていった。