帝国の天才機械技師
「ロウ・フォード博士、機暦38年を以って、極秘研究への参加を命ずる」
「ロウ・フォード、謹んで拝命致します」
ロウ・フォードと呼ばれた男は命令書を受け取り、事務室を後にする。
「彼があの有名な天才機械技師で博士か」
軍属の彼は、軍が新たに研究している永久機関『エターナルエンジン』の開発を任された。
ロウは、連絡路を歩きつつ、ふっと窓の外を見た。
窓の下半分を占める白銀の雲と、上半分を占める蒼穹の青空が広がっていた。
「..........」
ロウはそのまま歩き出し、研究所に入った。
「おお、ロウか待っていたぞ」
「オットーさん、ただいま戻りました」
50過ぎで白衣とゴーグルを頭に乗せたオットー博士が出迎えた。
「帝国の要求で、永久機関の開発が命ぜられました、オットーさん」
「無理難題を言うな、しかし帝国からの命令だ、できるところまでやってみよう」
2人は研究室の更に奥の工作室へと入っていった。
「帝国からの要求は?」
「はい、少量の蒸気を使用しつつ、大きな動力を永久的に出せる機関、と」
オットー博士とロウは早速設計に取り掛かった。
「資料室でさまざまなエンジンの資料を探してきてくれるか、ロウ?」
「分かりました」
ロウは工作室を出て、連絡路を歩き資料室に入った。
「おお、これはロウ・フォード博士ではありませんか」
茶色の軍服を着たヴァルター提督がロウを見た。
「お久しぶりですヴァルター提督、そちらの方は?」
もう1人茶色の軍服を着た男がいた。
「これは失礼、お初にお目にかかります、私はヴァルター提督の補佐官であります」
「とのことだ、ロウ・フォード博士、よろしくお願いしますね」
含みのある顔で去っていた。
「あの補佐の顔どこかで??」
疑いを晴らすべく密かに後を追った。
「あのロウ博士は永久機関を開発しているらしいな」
「はい、どうも帝国からの要求で従来の蒸気エンジンを一気に旧式化できるようなエンジンらしいです」
「俺が聞いた話だと、新型のエンジンを使った新型の兵器だとな」
声を低くして補佐官が聞いた
「それはどのような?」
「これはまだ秘密だがな、一度その兵器を使うとその街が全て蒸発するんだ、跡形もなくね」
それを盗み聞きしたロウは、自分が恐ろしい兵器の開発に携わっていることに気付いた。