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Memory of the Ring  作者: 夜空に奏でるカノン
コスモスの女神
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第4話 空駆ける天馬 その①

第一章 ~コスモスの女神~

4,空()ける天馬(てんま) その①



「とうとうたどり着いたね。」


 私たちは〝世界を救う九つの指輪〟の内、一つの指輪が眠っているとされる〈秋の大陸コスモス〉にある小さな村へやって来た。


 この村はかつて緑が豊かで、豊作や資源に恵まれ、小さな村でありながら水資源を利用した交易で栄えていた。しかし、突然の異常気象により、森や大地、水は瞬く間に枯れて、干からびた砂漠地帯のような荒れ地へと変わり果ててしまった。こうして、王への信仰心が深い村人たちが僅かに残り、それ以外の村人は別の場所へ住処を移してしまった。

 このように、小さな村が廃村になること自体は珍しいことではなく、むしろ今までに見てきた多くの廃村に比べたら、まだマシな方だと思ってしまったのは黙っておこう。きっと、このパーティメンバーの中には、これほどの荒れ地を見たことはないだろうからね。


 こうして、美空を含む四人のパーティメンバーは、入国許可証を手に入れるために出入り口に差し掛かったところ、異常なほど警戒心の高い警備態勢であることに気付いた。何でこんなに傭兵を配置しているのかな?と、顔をしかめていた。すると、私たちに気付いた険しい顔をする傭兵に呼び止められた。


「そこで何をしている!⁉」


 私たちは怪しいものでは…、とか言う前に、私たちの周りには大勢の傭兵が取り囲んだ。いかにも罪を犯した囚人のようだ。


「お前たちも、王殿の宝物を盗みに来たのか!!!」


 お前たちもってどういうこと?そもそも〝王殿の宝物〟って何?指輪のことだろうか?


 そんなことを考えている暇はなく、私たちは多勢の傭兵から逃げることに専念した。このままだと、あの人たちに拘束されてしまいそうだからね。何としてでも指輪を見つけなければならない。それが私たちの使命だからさ!


 こうして私たち四人は痕跡を隠すため、森林の中を駆けることにした。時には茂みの中にひっそりと潜んで身を隠し、時には木によじ登って様子を窺ったりして、傭兵の目をかいくぐってひたすら逃げた。逃げた。逃げた。逃げた。



 ポタ、ポタ



 突然、雨が降り出した。降り出したと言っても小雨であるため、しばらくさらに先まで遠くまで逃げようと考えていたのだが。



ザアアアアアアァァァ!!!



「これはいくらなんでも降りすぎじゃない?」


 急激に雨脚がひどくなり、逃亡することを中断せざるを得なくなってしまった。仕方なく雨宿りをするために、近くにあった入り口の狭い洞窟の中へ潜むことにした。中に入ると、外から見た時には分からなかったが、意外と奥行きが広く、それぞれが足や腕を広げても相手にぶつからないくらいの広さだった。


 私は自分のお尻のサイズに丁度良さそうな岩の上に腰を下ろした。その岩は雨に湿気を含んでいて、少しひんやりと冷たかった。


 しばらくの間、私たちは雨が止むのを待ちながら、滴り落ちてくる雨粒をぼんやりながめたり、雨音を楽しんでいたりしていた。

 美夜は洞窟から滴り落ちてくる雫を掌に受け止めて、両手をビチャビチャにさせながら、それをながめていた。流星は洞窟に落ちている石を上に積み重ねて、次々と石の山を増やしていった。そんなこすもは、意味不明な遊びをする二人の様子を、ただぼんやりと見守っていた。



ポチャン

ピチャン

ポタッ、ポタッ、ポタッ



 こうしてじっくり聞いてみると、雨音にも一つ一つに様々な音があり、重なり合った音が、硝子(ガラス)を弾く音や、鈴を鳴らす音とは違い、なぜか心地よくて神秘的だった。そしてそれは、雨粒の儚い命のような切ない音にも聞こえた。


「天然のオーケストラみたい。」


 その時だった。


「後ろから風を感じる。」と美夜が背後を振り返った。

「あそこに光が漏れている。」と流星が指さした。


 風に吸い寄せられるかのように、てこてこ進んでいくと、その視線の先には人一人が通れるくらいの細い道があった。

 好奇心が止められない私は、ある提案を出してみた。


「行ってみよう‼」

「良いですよ。」


 一瞬の間があった。

 気のせいだろうか。美夜が賛成したような…?


「だから、良いって言っているじゃないですか。それともこの期に及んで、行かないとでも言うんですか?」

「……いつも辛辣な美夜ちゃんがすんなりと承諾した‼」と、驚きと感動で思わず心の声が漏れてしまった。

「何があるか分からないから、私が先頭になって皆を案内するよ。この中では私が一番年上だからね。」と言って、こすもがリードしてくれた。おまけに、段差があるかといってエスコートまでしてくれた。


 なんて頼りがいがあるんだろう。一瞬にして、私たち三人はこすもの虜となった。




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