表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しょまのおまけ  作者: おおらり
一周目
6/44

招待状(ヤンデレ気味 アステルとシンシア)


 結婚式のあと、シンシアは手紙をもらうようになった。お茶会やパーティーのお誘いなどだ。それまでシンシアのことは噂にささやかれる程度だったが、結婚式で少しコルネオーリの社交界に存在が知られるようになったようだった。


 ある朝、シンシアは夫のアステルに「手紙をもらうようになったんです」と相談した。アステルは一瞬、変な顔をしたが、シンシアにはいつもどおり優しく「城外の、お茶会やパーティーに行ってみたい?」と聞いた。シンシアは、一人ではとても参加できそうになかったので「アステルと一緒なら」と答えた。 


 アステルはこう言った。 


「わかった。じゃあ、ぼくが選ぶから、シンシアにきた手紙を全部見せて」


 シンシアは大人しく、夫に全部の手紙を渡した。アステルは手紙を読みながら、ずっと真剣な顔をしていた。


 シンシアが「手紙の返事を書くのが大変です」と言うと、「メイドに代筆させるように」とアステルは言った。


「どうしてですか?」

 シンシアは不思議だ。相手は気持ちを込めて書いてくださっているのだから、こちらももしお断りするのだとしても、気持ちを込めて返事を書かなければ、とシンシアは思っていた。


「そういうものだよ、自分で書いているお妃様なんていないよ」

「そうでしょうか?」

「とにかくぼくは、シンシアに直接書いて欲しくないんだ。シンシアが手紙を書きたいなら、ぼくに書いてよ」

(いつも一緒にいるのに?)

 シンシアは首を傾げる。アステルの言ってることの意味がわからない、と思う。


 手紙には、アステルが頷いてくれるようなパーティーは、なかなかなかった。結局、アステルが頷いてくれたのは、エルミスからふたりに宛てられた手紙だった。子どもが生まれてお披露目のパーティーをするから、来ないかという内容だった。

 

「じゃあシンシア、他の手紙はいらないよね。持って行ってしまってもいいかい?」

 なぜかシンシア宛ての手紙を束にして、持って行こうとするアステルの白いローブの裾を、シンシアはつかむ。

「まって」

 シンシアは少し勇気をだして、夫に言った。

「私、とっておきたいです。アステル」

「……どうして?」

 アステルの青い瞳には、シンシアに隠そうとしているがーー不機嫌の色がある。

 シンシアは気づかず、アステルに笑いかける。


「せっかくどなたかが、私にくださったものですから」

「……わかったよ、シンシア」

 アステルはシンシアの机の上に、手紙の束を戻す。

 

「今度、ぼくもきみに手紙を書くね」

「いつも一緒にいるのに、書いてくれるの?」

「もちろん。ちゃんとシンシアを愛してるって、文章でもきみに伝えないと」

 アステルは微笑む。シンシアの頬に手を添えて、キスをする。離れたあとで、シンシアの机の上の手紙の束をちらりと横目で見た。


(燃やしたかったのになあ)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ