マヴロス大陸 くりすますの歴史(小話)
◯ リョーちゃんの場合①
リョーは、飢えている。
「チキン……ピザ? とか…… 食べたいなあ ケーキ……」
◯ リョーちゃんの場合②
「アサナシア、クリスマスくらいの時期だ。ご馳走を食べよう」
「くりすます ってなんですか、マスター?」
「ご馳走を食べて、贈り物を贈りあって、大切な人と過ごす日だよ」
アサナシアは不安になる。
「マスターはだれと過ごすんですか?」
「それはもちろん、アサナシアと……かな」
アサナシアは嬉しそうな顔をした。
「えへへ」
「あはは」
◯ リョーちゃんの場合③
「アサナシア、今年の贈り物はブレスレットを作ったんだ」
「……」
「つけるね。気に入ってくれると良いんだけどな」
◯ レフコスの場合
「おとうさま、朝起きたら枕元に贈り物があったよ! ありがとう、おとうさま」
「レフコス、俺じゃない。それはサンタクロースの仕業だよ」
「サンタクロース?(って、なに?)」
◯ ルーキスの場合
リーリアの前には、ご馳走が並んでいる。
ルーキスが料理人に今日はご馳走にするようにと話したようだ。
「カタマヴロス陛下が、冬の一番寒い日には贈り物をしあったり、ご馳走を食べるのだと仰っていました」
「そうなの? 魔物の習慣って変わってるわね」
「魔物の習慣……というよりも、異世界の慣習なのでしょうね」
「なんて名前なの?」
「残念ながら、そこまでは伝わっていないのです」
◯ リーリアの場合
「シンシアちゃん、冬の一番寒い日だから、贈り物をあげるわね」
「ありがとう、ママ! だいすきよ!
冬はお誕生日もあって、贈り物の日もあって、ご馳走が2回も食べられて、うれしいな」
◯ リアの場合①
「ばあや、マフラーをあげるわ。私が編んだの!」
太い糸で編まれた、すこしボロボロしたマフラーがある。
「太い糸なら、私だって編めるのよ。編み物なんて私にできないって思ってた? お顔をすごく近づけて、おててを信じれば、できるのよ」
◯ リアの場合②
「辺境領では、冬の一番寒い日には贈り物をし合ったり美味しいものを食べる習慣があったの。だから、はい、ウィローとロアンにこれあげる」
「ありがとう、リア」
「ありがとうございます。今日はご馳走にしましょうか、リア」
◯ アステルの場合①
アステルは、ハッとする。
「くりすます、だ!」
「くりすます?」
リアは聞き返す。
「今日はご馳走を食べて、贈り物を枕元に置いて眠る日だよ、シンシア」
「ああ……その名前がくりすます なの?」
「そうだよ」
リアは、ルーキスに話す。
「お父様、くりすます ですって」
「名前があったのですか」
「辺境領の行事ってお父様が広めたの?」
「私というより、私から話を聞いたリーリアが、貴女にしたのでしょうね」
◯ リョーちゃんの場合④
アステル?はごちそうをたべる。
「マヴロスでもローストチキンが食べられるなんて……よい時代になったなあ」
「アサナシア、おいしいな」
「何か言った? アステル」
「えっ ぼく 何か言ってた?」
◯ アステルの場合②
「シンシア、今年はお誕生日のちょうちょに合わせて、蝶の絵の入ったコップをあげるね」
「ありがとう、アステル」
「ちゃんと返さなきゃね、はい、アステル。マフラーを編んだの」
リアは、いつまでも姿かたちの変わらない夫に、マフラーを巻く。
「ありがとう、シンシア。あったかいよ」
◯ミーロの場合①
魔物は名前のない赤ちゃんに、お花を持ってくる。
「今日は贈り物の日だからね! キミも覚えておくように」
赤ちゃんは、お花を食べようとしている。
「ああ! そうじゃなくてえ〜」
◯ミーロの場合②
「ミーロ、贈り物をあげましょう」
「ありがとう、ルアンおじさま」
「ミーロ、贈り物をあげるわね」
「ありがとう シンシアさま」
「ミーロ、ぼくからも、これをあげるね」
「あ、ありがとう とうさま……」
(こわい!)
◯ ミーロの場合③
「ルアンおじさま、贈り物ですよ」
ミーロはアステルに内緒でこっそり、犬のルアンに美味しそうなお肉をあげる。
ルアンは、ミーロに山盛りのどんぐりを持ってくる。
(おじさまのなかでボクは、いつまでも子どもなのかな?)
「ありがとう、ルアンおじさま。大切にしますね」
◯ アステルの場合③
「今年はシンシアの具合が悪いから、ルアンとご馳走を食べようね」
「わん!」
ルアンはしっぽを振っている。
アステルは、ルアンの毛並みを撫でる。
「あとでシンシアの枕元に贈り物を置いておこう。返せない って気を遣わせるかもしれないけれど……」
◯ アステルの場合④
「はい、ルアンには、骨付き肉のぬいぐるみ」
「わん!」
「はい、シンシアには、お魚のかたちのぬいぐるみだよ」
「にゃあ……」
白い猫は、かなしそうな顔でぬいぐるみを見ている。白い猫は、食べ物が良さそうだ。
◯ ルーキスの場合②
「シンシア 今日は、すこし特別なごはんにしましょうか」
「にゃあ!」
白い猫は、嬉しそうだ。
◯ アステルの場合⑤
「父様、性夜ですよ」
「せいや? それってクリスマスと関係ある?」
「関係あるかもしれません、他国で異世界転生者が広めたイベントだからです」
「そうなんだ……あんまり聞きたくないけど、何をするの?」
「実践しましょうか?」
「いや、いい」
◯ ミミの場合
「ルーキスおとうさん、朝起きたら贈り物が枕元にあったんだよ!」
「冬の一番寒い日ですから、ミミ」
「お父様、ご馳走を食べによったよ」
「うわ 一気に最悪な日になった」
「ここもボクの実家だって、キミはわかってるかい? ミミ」
◯ ミミの場合②
「クルト、贈り物をあげる」
「え、なんで、どうして?」
「そういう日だからだよ」
「わあ、絵の具だあ! 変わった色をしているね。でも、綺麗だ。ありがとう、ミミ」
◯ トゥリの場合①
「あすてる」
「トゥリ、今日はクリスマスだから、美味しい葉っぱを山盛りにして持ってきたよ」
「ありがとう、あすてる」
なめくじ姿の魔物は、むしゃむしゃ と嬉しそうに、葉っぱを食べている。
「なにかかえせたらいいんだけど、わたしはなにももっていないから」
「気持ちだけで充分だよ、トゥリ。
それに、持ち物はこれから集めていけばいいんだ」
◯ トゥリの場合②
「アステルさま、冬の寒い日? なので、ご馳走を作ってみました」
アステルの前には、毒の入った料理が並んでいる。
「きみは、相変わらずだね……」
「ミーロもどうぞ」
「ボクには毒無効はないんだってば」
「じゃあ、ぜひどうぞ」
「殺す気か?」
銀髪の少年は、意気込んでいる。
「私、いつか絶対 アステル様にきく毒を作りますから! 楽しみにしていてくださいね」
「もちろん、楽しみにしているよ トゥリフェローティタ」




