表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しょまのおまけ  作者: おおらり
マヴロス開拓記
50/57

前髪(ルキリーリア小話その2)


 朝から晴れていたのに突如として豪雨になった。馬車が屋敷につき、レヴァンタとルーキスが帰ってきたのを、執事やメイドが慌ただしく迎えている。


 レヴァンタもルーキスも頭からバケツに入った水をいっぱいに被ったかのように、びしょ濡れだ。


 リーリアは、前髪の下がったルーキスをはじめて見た。階段の上から様子を眺めていて、黒い前髪の隙間から、灰色の目と目が合った。

(なぜ?)

 リーリアの視線に、ルーキスは目を逸らす。



 湯浴みに行ったレヴァンタと対照的に、メイドと執事の世話を断って廊下を曲がったルーキスは、リーリアに鉢合わせた。


 紺色のスーツの肩もびしょ濡れだ。リーリアはもう一度『なぜ?』と目で訴える。

 ルーキスはリーリアを素通りするようにして、何も言わずに歩く。リーリアもついて行く。私室の前まできて、辺りに誰もいないのを確認するとルーキスはリーリアを振り返り、小声で伝える。


「……教会の聖騎士隊が近くにいたので」

「そうだったのね」


 それで、魔術で雨を防ぐことができなかったようだ。


 リーリアは指を伸ばして、濡れたルーキスの前髪に触れた。そこから、髪を分けようとしたリーリアの手首をルーキスは軽く掴み、制した。嫌がられたリーリアは、手を下ろす。


「前髪が長すぎるわ」

「上げるのだから、これで良いでしょう」

「下ろしているのも格好良いと思うわ」

「私はそうは思わない」


 リーリアは考え込む。


「もう、いいですか?」



 リーリアと別れたあと、ルーキスは部屋で魔術で湯浴みして、髪を乾かし、梳かし、前髪を上げる。スーツの黒いズボンと襟のついた白い長袖のシャツに着替える。

 シャツの手首のボタンを留める頃、リーリアがもう一度、ルーキスの部屋の前まで来たのを察して困惑する。


 用件がわからず。ジャケットを着ないまま、ルーキスは扉を開ける。


 ルーキスを見上げるようにして、リーリアは告げる。

「私もやってみたい」


 ルーキスがなんの話かわからないでいると、リーリアがニコニコとルーキスの前髪を見ているのに気づく。


「メイドに頼めば良いでしょう」

「ルーキスさんと同じにして欲しいの」

「だからメイドに……」

 

 ニコニコニコニコ。


「……はあ、」

 ルーキスは折れ、部屋にリーリアを入れる。



 ルーキスはリーリアが座るように椅子をひく。

「どうぞ」

 座ったリーリアの前にかがむ。


「……触れても?」


 リーリアが頷くと、ルーキスは香油を手につけて、リーリアの前髪をあげる。そのあと、自らの魔術ではなく、魔石の魔術で固定する。

 ルーキスが真剣な表情で前髪を触るので、リーリアは思わず笑いそうになり、目をつむって堪える。



 前髪の上がったリーリアは鏡を見て機嫌よさそうだ。


「なぜ、髪型を変えようと思ったのですか?」

「ルーキスさんが『上げているほうが格好良い』って言ったからよ」


 そんなこと言っただろうか? とルーキスはリーリアを見る。


「リーリアは、いつもの髪型のほうが良いと思うが……」


 リーリアは、ぱあっと顔を明るくする。ニコニコと微笑む。

 ルーキスは黙り込む。


「……」

「おそろいで嬉しいわ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ