夫婦円満の秘訣(アステル、シンシア、ミーロ)
珍しく、ミーロが短い髪になっていた。
かつてのルアンくらいの短髪に、アステルは驚く。
アステルが理由を聞くと、トゥリフェローティタに髪を変なふうに切られたので、泣く泣く短髪にしたそうだ。
ミーロは、どんよりしている。
「しばらくトゥリフェローティタの悪行を言いふらすためにこのままで居ようと思います」
(言いふらさなくても、トゥリが魔物をいたぶるのが好きなのはみんな知っているんじゃないのかな?)
「父様って髪を切ったりしないんですか?」
アステルは白状する。
「ほんとうはぼくも、短いほうが好き」
ミーロはびっくりする。
「なぜ、ずっとずーっと長いんですか?」
「シンシアが長いほうが好きだから。歴代のシンシアに、長い髪のほうがウケが良いんだ」
アステルはさらさらと答え、複雑そうな顔をした。
(シンシアの初恋の人の、ウィローが長い髪だったからな気がしてならないんだよね……)
「そうしたら、喪が明けてから、転生待ちの期間くらいは短くしたらどうですか?」
「その時期は、願掛けしている。はやくシンシアに会えるようにって。長い髪に。
だから、短くしてみるとしたら、ちゃんとシンシアがそばにいる時期だよ。今とか。
試してみようか?」
アステルはミーロと同じ髪型にして、ふたりでシンシアを訪ねる。
ペンギンのシンシアはアステルの脚に抱きついたかと思うと、バシバシ! と両方の翼でアステルの脚を叩いた。
「ほら、ぼくの髪が短いと、怒るんだ」
アステルはため息をついて、魔術で髪を顎先くらいまで長くする。
シンシアはアステルから離れると嬉しそうに見上げる。アステルはしゃがみこみ、シンシアの目を覗き込む。
ペンギンのシンシアが嬉しそうで、アステルも嬉しそうだ。
「ずーっと相思相愛ですね」
「ぼくの長い髪は、夫婦円満の秘訣だよ」
アステルはミーロに笑いかける。




