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しょまのおまけ  作者: おおらり
一周目
4/44

騎士団の訓練 前編(過保護なアステルとシンシア)

アステルとシンシアは婚約者同士の時期。アステルがシンシアに過保護、もしくは束縛してるだけ。


 朝、魔術院の玄関先で、ルアンとシンシアが談笑している。ルアンは鐘楼の鐘の音を聞く。


「訓練の時間なので、行って参ります」

「騎士団は、どちらで訓練されているのですか?」


 ルアンはシンシアに場所を教える。

 魔術院からそんなに離れていない。


「私もルアンについて行って、見学しても良いでしょうか?」

 ふわっと笑いかけたシンシアの言葉に、ルアンは息をのむ。

「ど、どうでしょうか……」

 ルアンから快く「良いですよ」と言ってもらえると思っていたシンシアは、残念そうな顔をする。


「いえ、私の一存で決められないだけなんです。アステル様に聞いてみてはいかがですか?」

「わかりました、アステルに聞いて、行けそうなら行きますね」

 シンシアは笑う。


(これは困ったことになったぞ)

 ルアンは内心ヒヤヒヤだ。男性だらけの場所にアステルがシンシアを連れて行くと思えない。アステルに、逆恨みされないと良いが。



 シンシアが研究室の扉をノックしようとしたとき、ちょうどアステルが中からでてきた。

「きゃっ」

 シンシアは扉に額をぶつけ、しりもちをつく。アステルは目を丸くして、慌てる。

「シンシア、大丈夫? ごめんね、きみがいるとは思わなくて」

 すぐにシンシアの額に回復魔法をかけ、手をとってシンシアを起こす。アステルは微笑む。

「ぼくに何か用? シンシア」

 

「あの、アステル。ルアンの訓練を見に行ってみても良いですか?」

「……」

 アステルの表情はかたまる。

「シンシアは、王国騎士団の訓練が見たいってこと?」

「そうです、見てみたいです」


 アステルは口に手をあてて何か考えている。

「少し待っていて」


 アステルは何かをとりに部屋に戻る。ついでにローブを研究用から外出用の白いローブに着替えてきたようだ。


「じゃあ、行こうか、シンシア」

 アステルはシンシアに先んだって歩きはじめる。シンシアは顔を輝かせて、アステルのあとをついて行く。



(……)

 シンシアは木箱の上に立って、城の塀の上からオペラグラスで騎士団の訓練を見ている。

「見える? シンシア」

「見えますけれど……」

 思っていたのとなんだか違う。

 確かに訓練場はすぐそこなのだ。オペラグラス越しなら、ルアンの姿もちゃんと、よく見える。剣を交える音も聞こえる。


 アステルはとなりで、のんびりしている。風でアステルの金色の髪や、白いローブが揺れている。シンシアの髪も、さっきから風でぐしゃぐしゃだ。


「もっと近くで見てみたかったです……」

 しゅんとして木箱から降りてきたシンシア。

 アステルは、シンシアの頬に指で触れる。そのあと、風でシンシアの顔にかかった髪を、そっとかき分ける。シンシアの髪をなおす。


「あんなところに、シンシアを連れていけないよ」

「騎士団って、こわいところなんですか?」

「そうだよ、とってもこわいところだよ。狼がたくさんいるからね」

「おおかみ?」

(人間に見えましたけど……)

 アステルは、きょとんとしているシンシアの髪を撫でる。

「だからシンシアは、ぼくと一緒にここから見ていようね」

「……はい」

 シンシアは、残念そうに呟く。



 帰るために階段を降りながら、あんまり面白くなかったな、とシンシアは思う。強い風でアステルの髪がぐしゃぐしゃになったのだけ、シンシアにとって新鮮だった。階段を降りたところで、アステルの髪先に手を伸ばす。


「何? シンシア」

 急に髪を触られて、アステルは頬を赤らめている。

「髪がぐしゃぐしゃだなと思って」

「自分でなおせるよ」

 アステルは髪を整えようとする。

「私も自分でなおせたのを、アステルがなおしたので、私もアステルの髪をなおしたいなあって思ったんです……」

「ぼくはシンシアより短いから、いいよ」

「なおしたいです」

「……」

 アステルは戸惑いつつも、折れる。

「わかった、いいよ」


 アステルは、少し屈んでシンシアが触りやすいようにする。シンシアは両手を伸ばして、サラサラの髪に触れる。嬉しくて微笑む。


「アステルの髪はサラサラで、うらやましいです」

「ぼくはシンシアの癖っ毛がうらやましいよ」

 アステルは指にシンシアの髪先をくるくる、と絡め、ほどく。

「お互い、ないものねだりですね」

「そうだね」


 アステルは立ち上がると、くすくす笑うシンシアを愛おしそうに見つめる。


 そこで背後に視線を感じて、アステルは振り返る。咄嗟にローブでシンシアの姿を隠す。

 騎士団の男性がこちらの様子を見ていたようだ。男性は、アステルに敬意を払う仕草をする。


 アステルはニコリともせず、冷たい一瞥を投げると、アステルの様子に首を傾げているシンシアを連れて、魔術院に戻る。


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