表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しょまのおまけ  作者: おおらり
未分類の話(しょま)
39/46

ダンスの練習 (1周目 アステルとルアン)

ブロマンス〜ほんのりBLくらいです。


 アステル19歳 ルアン17歳 秋


「ダンスの練習に付き合ってくれない?」

「え? 誰の話ですか?」

「きみに練習に付き合ってほしいんだけど」

「は?」


 アステルの研究室を片付けに訪れたルアンは、机に本や紙を山盛りにしたアステルに声をかけられる。


「……婚約者様についてなんだけれど」

「またその話なんですね」

 

 冬に14歳になったシンシア姫がくることが決定してから、アステルはその話ばかりで、ルアンは少々呆れはじめている。


「彼女は病を持っているから昼間のパーティーは免除されると思う。でも、初夏にある陛下の誕生日パーティーの夜の部には出なきゃいけないんじゃないかって気付いたんだ」

「アステル様、ダンス下手ですものね」


「ダンスなんて、ぼくの人生に不要だって思っていたんだ。パーティーは嫌いだから強制参加の初夏の陛下のパーティーか、エルミス兄さんにむりくり引っ張られたやつしか行かないから」


「私、アステル様が踊ったのを見たことがないですよ」

「そう、ぼくはパーティーで一度も踊ったことがない。『踊りましょう』って誘ってくる人間の誘い自体が煩わしいと思っていた」


「でも、彼女はもう妻になると決まっている人だし……14歳の女の子に恥をかかせるわけにはいかないだろう? 婚約者様に踊りたいって言われたら、断れないよ。断ったら可哀想だ。しかも彼女はあまり目が見えない、ぼくがリードして踊るのが確定だ」


「話はわかりましたが……」

 ルアンは眉をひそめる。

「さっきなんて言いました? 私と踊るって言いませんでした?」

「そうだよ、ルアンと踊るって言ったよ」

 アステルは面白そうに笑っているが、ルアンはふたたび、(はあ?)という顔をしている。


「なんでですか? だれかテキトーに女性を捕まえて、練習に付き合ってもらえば良いじゃないですか」

「そのテキトーに捕まえて、が問題なんだよ。これから婚約者様が来るっていうのに、他の女性に気を持たせるわけにはいかないだろう?」

「使用人とかは……」

「メイドだって、『花を贈る日』にぼくに花を持ってくる子もいるよ。やっぱり、気を持たせるわけにはいかないよ」


「真面目すぎませんか? アステル様は、エルミス殿下を見習ってもう少し遊んだらどうですか?」 

「ルアン、ぼくがそういうの嫌いなの知ってるくせに……それにぼくを好きだって寄ってくる女の人ってちょっと、怖いんだよ」

(まあ、下心ありありだろうからなあ……)


 アステルが幼少期から男女ともにアプローチを受けることがあり、(人の好意が気持ち悪い)、(人間って、何考えてるかわかんない)と気味悪がっていたのを思い出し、ルアンは考え込む。


「それで、ぼくは名案を思いついたんだ。ルアンと踊れば良いじゃん! って」

「意味がわからない。身長、私のほうが高いと思うのですが……」

「ぼくとそんなに変わらない」

 アステルはムキになっているようだ。

 チラ、とだけアステルを見て、ルアンは続けた。


「とにかく。私、14歳の姫君とは比べものにならない体格ですよ。ミルティア様と踊るのはどうですか?」

「母上はダメだよ。ダンスが上手すぎる。からかわれそうでイヤだし……それに比べてルアンのダンスはぼくと、どっこいどっこいだろ? だから、ちょうど良いかなって」


 失礼な、とルアンは思う。


「それに、ダンスは大事な人と踊るもので、その練習なわけだから、ルアンがちょうど良いなって思ったんだ」

「……」

(なんだこの人)

 最初に話をもらったとき、ルアンは何を気色悪いことを言い出したんだ、と思った。でも、今の言葉は『ルアンが大事だから練習にちょうどよい』と聞こえた。そんなことを言われたら、断れない気がするのだが。


(いや、やっぱりダメだろう)

 ただでさえアステルと仲が良すぎると、騎士団のメンバーからも言われるルアンだ。それを「何を気色悪いことを言う」と、否定してきたルアンだ。


「お断りします」

「えー!?」

「アステル様に悪評がたつのが耐えきれないので……」

「なんで悪評がたつのか、ぼくにはわからないよ」


 アステルはむすーとした顔でそっぽを向いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ