みじかい丈のワンピース(ウィロー、ロアン、リア)
リア12歳、ロアン15歳、ウィロー18歳。
3人は、リアの新しい服を買いにアズールの市場に着ている。港町らしく、今日は異国からたくさんの品物が入ってくる日のようで、賑わっている。
リアは「これもかわいいな」「あれもかわいいな」と話をしている。店主に許可をとり、気に入った服を広げてみて「これはどう?」と肩のところで持ち、体にあてるようにして見せてくる。ひらひらっとスカートの裾が揺れる。
ウィローはすべての服に「かわいいよ」と言い(心の底からの言葉のようだ)、ロアンは(はやく決めてくれ〜)と思いながら「はいはい……」と受け流していた、のだったが。
「これ、すっごくかわいい!」
「た、丈が、短すぎるでしょう 破廉恥な!」
ロアンは顔を真っ赤にする。
ワンピースの丈が、膝上くらいの丈なのだ。コルネオーリの文化からしたらありえない長さだ。
(こんなの絶対ウィローもダメっていうに決まっている!!!)
「……」
「……ウィロー?」
口に手をあてて考え込む主人を、信じられない気持ちでロアンは見る。
「……いいと思う」
「ウィロー!?」
ロアンはウィローにつめよる。
「何言ってるんですか、短すぎますよ!!」
「たしかに短すぎるけど……でも、リアがあんなふうに、自分の見た目を気にせずに、楽しそうに服を選んでいるのが良いと思ったんだ」
「見た目を気にせず?」
(ウィローは、おかしなことを言う)
ロアンから見てリアは、それなりに美しい少女であったし、そうであるからウィローは人目を気にしておしゃれをさせないのだとロアンは思っていた。
けれどいざ、服を買いにきたら……リアが楽しそうなのを見てウィローも楽しんでいる様子なのだ。
(ウィローは、あれはダメこれはダメと言うと思っていたのに……)
ウィロー説得のあの苦労はなんだったんだ、とロアンは不満にも思ったが……リアの楽しそうな、嬉しそうな様子。それを見るウィローの楽しそうな、幸せそうな横顔を見ていたら、自分だけ仏頂面なことが馬鹿らしく思えてきて、ロアンは自分の機嫌をなおそうとする。
「リア、その服は異国の踊り子の衣装みたいだね」
「え、そうなの? アズールの街で着ていたら、目立つかな」
「そうだね、目立つかもね」
「じゃあ、やめる……あ! これもかわいい」
(いやいや、やっぱり、この買い物も長そうだぞ)
ロアンはまた仏頂面にもどる。こんなことなら、家にいれば、やりたい仕事がたくさんあったのに……と思ったからだ。
(でもふたりきりでアズールの街にだすのは、ウィローがおかしくなりそうで心配だ……いろんな意味でこのふたりに、護衛は必要だから……私がしっかりしないと)
ロアンは背筋を伸ばすが。リアがきゃいきゃいとしてまだまだ続きそうな買い物に、嘆く。
(でも……はやくおわってくれ〜)




