もふもふわんことおやすみ
エピローグで、犬が帰ってきたあとの話です
アステル113歳(見た目は20歳)、リア115歳
リアが寝込んでいる冬のこと。
この年、タフィのコミューンは長く雪が降り積もり、一面、白い雪に覆われていた。
リアの体調がよくなくて、アステルは気落ちしている。リアの部屋に魔術を張ったあと、寝ようと思って自分の部屋に入ると、ベッドの上の毛布が何枚か折り重なり、ぐしゃぐしゃとしている。そのなかに、まあるくおおきな生き物がいる。
最近、寒くて、こういうことがままある。
「ルアン」
アステルが毛布をめくると、大きな愛犬がまるくなっている。アステルをチラッと見たが、毛布をぐしゃぐしゃにしたことが気まずいのか、顔を伏せた。
紺色の犬は、顔とお腹と足先としっぽの先が白く、紺色の瞳に黒い鼻。三角にピンと立つ耳。全身もふもふもさもさとした長毛に覆われて、大きな尻尾を振っている。
「ひとの寝床にしのびこむなんて悪い犬だなあ」
アステルは毛並みに沿ってルアンの背中を撫でる。紺色の長い毛は、あたたかく柔らかい。
「きみがぼくに言ったのに。寝床にしのびこむな、って」
ルアンは、覚えていなさそうな顔だ。
アステルはルアンのとなりにごろんと横になると、ルアンの首〜背中にかけて、顔をうずめる。
犬のルアンのにおいがする。
「ひとの寝床にしのびこむと、噛まれたって仕方ないんだ」
アステルはルアンを噛まないが、優しくそう脅す。ルアンは耳をぱたぱた、とするが、なんのこっちゃ、という様子だ。
愛犬は眠そうだが、アステルがとなりにきてくれて嬉しそうだ。アステルがあたたかいからかもしれない。
「まあいいか。寒いから、一緒に寝よう」
アステルはルアンがぐしゃぐしゃにした毛布をなおして、ルアンの上に掛け直す。自分もテキトーに丸くなると、毛布をかける。ルアンの背に手を置く。あったかくて、幸せだ。
(となりのルアンも幸せだと良いな)
アステルが首を伸ばして確認すると、犬のルアンも幸せそうな顔をして寝ていた。
アステルは微笑み、目をつむる。




