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しょまのおまけ  作者: おおらり
エピローグあたり
29/46

噛み跡だらけ


「いた……!」

 アステルは痛みに目を覚まして、寝ぼけてアステルの腕をくわえている子犬を睨む。

 アステルは怒る。

「ルアン、どうして、ぼくの寝床にきてぼくを噛むの?」

 アステルは居間のほうを指さす。そこにルアンの寝床があるからだ。

「ぼく、きみの小さな寝床に入ってない。きみがぼくの寝床に入ってくる。約束と違う」


 子犬のルアンは、くぅん、と鼻を鳴らす。

 しかし、アステルがルアンを抱き抱えると、ルアンはまた噛んだ。アステルは嘆きながらリアに助けを求める。


「シンシアぁ〜 ルアンがぼくを噛むよお」

「乳歯の生え替わりの時期でかゆいのよ」

 リアおばあちゃんは、アステルからルアンを受け取り、ルアンの口を開けてギザギザの歯をのぞきこむ。

 リアのことはルアンは噛まない。大人しくしている。


「それにしたって、見てよ、ぼくの腕!」

 アステルの両腕は噛み跡だらけだ。

「回復魔術で簡単になおせるでしょ? なんで治さないの?」

「なんでって……なんでだろ……『ルアンがぼくにこんなふうにしました!』って誰かに言いたいからかも……」

 アステルは両腕をリアに見せている。

「だれかってだれ」

「シンシアかな?」

「じゃあ、もうわかったから、なおしたら?」


 そこに、ミーロが家に帰ってくる。

 ミーロは今、14歳くらいの見た目だ。

「ただいま」

「おかえり、ミーロ」

 リアおばあちゃんはルアンを床におくと、ぎゅううっとミーロをハグする。昨日、リアとアステルの子や孫が遊びにきていた。それを知るとミーロは自分から陰鬱屋敷に行ってしまった。

 リアは、それが寂しかったのだ。だれも追いだしたりしないのに、ミーロが自分から出ていったことが。

「おかえり」

 アステルもミーロに声をかける。

 ルアンもミーロのまわりをうろうろしている。ミーロは屈んで、子犬のルアンを撫でる。


 ルアンとミーロを見ながら、リアはアステルに話の続きをする。

「昨日、寂しかったんじゃないの、ルアンは。アステルにあんまりかまってもらえなくて」

「うーん そうなのかなあ……」


ーーーーーーー


 ミーロは神聖医術院の前で、犬のルアンと遊んでいる。ちいさなボールを放っては、ルアンがとってくる遊びだ。ルアンは尻尾を振り、(もっかい! もっかい!)という顔で喜んでいる。

 ミーロは突然、ルアンに話をする。


「ルアンおじさまだけに打ち明けるんだけど、ボク、昨日、ルーキスお父様のお屋敷に行っていない」


「ボク、お友達の家にいたよ。楽しかった」


 ルアンは(それは良かったですね)という顔をして舌をだしている。


「ボクは、ボクって何もできなくて、何も持っていないって思ってた。だから、偉大な父様に愛されていないって。でも、違ったの」


「ルアンおじさま、最近ボク、何が得意か気づいたんだ」


(はい、なんでしょう)と、犬のルアンは目と耳を傾ける。


「あのね……」

 ミーロは内緒話をするように手で口をかこうと、ルアンのピンとたつ紺色の耳に話をする。


ーーーーーーー


 打ち明け話……やや自慢話をして満足したミーロが去ったあと、子犬のルアンは四つ足で走る。急いで神聖医術院のなかに入る。

 とんでもない話を聞いたからだ。


(アステルさま! アステルさま! ミーロが!)


 タタタッ と小さな足音をたて、ドアの隙間から部屋に入ると、アステルはソファーでうたたねをしていた。


(可愛いミーロが、大変なことに!

 アステルさま!)


 ルアンは大変な話を聞いて、それをアステルに伝えたいと思うが、伝える術がない。


 アステルの膝に前足をかけたり、ソファーに飛び乗ったりするが、アステルは起きる様子がなく、気持ちよさそうに眠っている。


(ねえ、アステルさま! ミーロが!)


 ルアンは呑気すぎるアステルの様子にムカッときて、噛む。がぶー。

 アステルは悲鳴をあげる。


「痛! ほら、また噛んだ! なんでえ!?」


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