花の植え方(アステル12歳、リア14歳)
アステルとリアは、陰鬱屋敷の庭で植木鉢に一緒に花を植えている。
しゃがみこんで、ふたり並んで植えている。
「この花を植えるのって久しぶりだわ。昔、あなたと植えたのよ」
「そうなんだ。ごめんね、ぼく、覚えていなくって」
「いいのよ、アステル。ゆっくり思い出していきましょう」
アステルは基本、見ているだけだ。
リアの手際の良さをじーっと見つめている。
「あれっ……私としたことが、間違えたかも……」
リアは、植木鉢に向かい、少し微笑んだ。
「あのとき私は、花の植え方は見ていなかったのね」
アステルは不思議そうにする。
「じゃあ、何を見てたの? シンシア。
虫でも見てた?」
「虫! あはは、は……」
笑うリアの目から、急に涙がこぼれだす。ぽた、ぽたと落ちて地面に円を描く。
アステルはぎょっとして大慌てだ。
「シンシア、ごめんね! ごめんね!
ぼくが何か変なことを言ったんだよね、ぼく、がんばるから」
泣いている女の子をなぐさめた経験のないアステルは、あわてにあわてて、リアの背中を撫でる。
「だから、泣かないで、シンシア」
その日の夜、アステルは目が覚めてしまって、水を飲もうと下に降りてくる。そして、ロアンの前で涙をこぼしているリアを見かける。
暗い廊下から覗き見た灯りのついた居間に、ふたりは居る。ロアンはただただ、話を聞いてあげているようだ。リアに向ける、眼差しは優しい。
(ルアンは本当に大人になっちゃった。あんなに小さかったのに)
アステルは、ふたりに見つからないように、廊下にしゃがみこむ。
(今のぼくじゃ、シンシアの支えにはなれない。でもいずれ、しっかりシンシアを支えられるようにならないといけない。
だって、婚約者なのだもの)
アステルはしばしのち、立ち上がり、まだ自分の部屋という感覚のない部屋に向かい、歩き出す。
〈参考〉
しょまのに「ウィローとリアで花を植えている回」
https://ncode.syosetu.com/n7970jb/16




