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しょまのおまけ  作者: おおらり
幼少期
16/46

飲みくらべ (ウィローとロアン)

ウィロー15歳 ロアン13歳 旅路にて


 ウィローと旅をはじめて、少したったある日のこと。立ち寄ったギルドで、ロアンは酔っ払いにからまれる。酒場はその酔っ払いが所属するパーティーの十数名が占領している。

「ここはガキがくる場所じゃねえんだよ」

「ガキじゃない!」

 わあわあ言い合いになっていると、魔石を納品していたウィローが奥の部屋から出てくる。


 紺色のローブを着たウィローは、意外そうな顔をする。ロアンの服の首元を掴んでいるガラの悪い酔っ払いに声をかける。

「ぼくの連れが何かしたかい?」


 ウィローの声と姿の酒場にそぐわない雰囲気に、お酒を飲んでガヤガヤとしていた集団はひととき、静まり返る。

「悪かったね」

「……おまえも子どもじゃないか」

「ああ、ごめんね。勘違いさせて。

 ぼくは若づくりなだけなんだ、実は、25歳なんだよ」


(ウィロー、何言ってるんですか!?)

 ロアンは床に下ろされたあと、ケホケホとしながら、大柄な男に呑気に喧嘩を売り始める主人に慌てる。


「嘘をつけ嘘を」

 大柄な男は、馬鹿にしたように笑う。

「子どもじゃないなら酒、飲めるだろうな」

「もちろん」

「はーん じゃあ、俺と飲みくらべろ。

 お前が負けたら、奢ってもらおうか」

 男は、ウィローが魔石の納品と引き換えに得た金銭の入った皮袋を指さす。

「じゃあぼくが負けたら、おじさんが奢ってね」

 ウィローは美しく微笑む。


「ウィロー、まだ15さ むぐぐ」

「何言ってるのロアン、ぼく、25歳だよ」

 ウィローはロアンの口を塞ぐ。

 15歳はこの国でも、まだお酒の飲めない年齢だ。ロアンは小声でウィローに反発する。

「何、寝ぼけたことを言ってるんですか!

 飲みくらべなんて危ないこと!」

「まあ、見てるといいよ」


 ウィローと男は飲み比べをして、あっという間に勝ってしまう。パーティーのメンバーが、冗談だろう? という顔をして、面白がって次々に挑戦するが、ウィローは水かジュースを飲んでいるかのように勝ってしまう。まるで酔わずに、パーティーの一団をあっという間に酔いつぶしてしまった。


「ウィロー、すごい……本当にお酒強いんですね」

「小さいころ兄さんのを間違って飲んじゃったんだけど、ちーっとも酔わなかったんだ。

 でも実は、美味しくもないんだ」

「美味しくないのにこんなに飲んだんですか?」

「そう。美味しくないものでおなかが膨れて嫌な感じだから、これから魔術でどうにかするつもり。

 さて。ここは彼らの驕りなわけだから、ロアン、何食べる?」


 ロアンは戸惑う。

 ふたりは少し離れたテーブルに移ったとはいえ……酔い潰れた男たちが視界に入りながらご飯を食べるのは、食欲が進まないなあと思ったのだ。


「この死屍累々の環境で食べるのは、たいそう図太くはないですか?」

「図太く生きていこうよ、ロアン。

 ほら、甘いものもあるみたいだよ」


 ロアンは興味をそそられた様子で、メニューの紙を手にとる。ウィローはふふ、と笑った。


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