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しょまのおまけ  作者: おおらり
幼少期
15/46

様をつけないで欲しい (ウィローとロアン 旅のはじめ)


「旅に出るのに、髪の色と目の色と名前を変えないといけない?」

「そう」

「……嫌です」


 15歳のアステルは、旅の準備をひそかに進めている。アステルの部屋でそれを眺めながら、12歳のルアンはぽつり、とこぼした。


「じゃあ、ぼくはきみを置いていく。ぼくのお姫様を助けに行かないといけないからね」

「……」


 そもそも。幼いアステルが城に忍び込んだ浮浪児を気に入ったのは、アステルが大好きな冒険物語の主人公に容姿が似ていたからだ。紺色の髪に、紺色の瞳だったからだ。ルアンはそう考えていた。


 ルアンは恐れた。

(ルアンに似ていない容姿になって、名前も変わったら、いつかアステル様に、もっと相応しい従者ができたとき、捨てられてしまうのではないか)

 しかし、アステルに置いていかれるのは、おそばにいられなくなるのは、もっともっと怖かった。



 翌朝の騎士団の訓練後。

 ルアンは、こんこん、とアステルの部屋の扉をノックする。許可をもらい、部屋に入る。扉を閉め、中に他の人間がいないことを確認すると、声をひそめて話しかける。


「……アステル様、おれ、決めました。おれ、髪の色と目の色を変えるし、名前も変えます」

「わかった、どんな色にするの?」

「クロコス様と同じ色にしてください」


 アステルはびっくりしてルアンを見た。

「おじいさまと?」

「はい。クロコス様みたいになりたいんです」

「わかった。おじいさまは、素敵な方だったものね」


(クロコス様はお優しくて、常にアステル様を支えていらっしゃった。きっと、クロコス様のようであれば、おれは、アステル様のそばに居続けることができるはずだ)


「アステル様は、なんてお名前になるのですか?」

 アステルはペンにインクをつけると、紙の上に文字を書いた。

「なんでそんな名前に……」

 変な名前だと、ルアンは思った。


「ルアンは?」


 ルアンはアステルが紙に書いたアステルの新しい名前を見ながら、続けて書く。アステルの新しい名前のおわりの文字をとって、書き始めた。


「あんまり変わって無いね」

「ダメでしょうか?」

「ダメでは無いよ」

 アステルはルアンに微笑む。


ーーーーーーー


 ふたりで、城を抜け出したあと。

 茶色のローブを着たアステルの背中を追いかけて、茶色のローブを着たルアンは歩く。


 ルアンは、水たまりに映った髪と目の色を見る。前を歩くアステルの小麦色の髪を見る……ものすごい違和感だ。

「ウィロー様」

 そう呼んでみると、アステルは振り向いた。

 藍色の瞳で、ルアンを見つめる。


「様をつけたら、ダメだよ」

「え!? だ、だって」

 13歳のロアンは、狼狽する。


「ウィローって呼んで」

「ウィロー……様」


 ウィローは眉根を寄せて、すこし不機嫌そうな表情をした。


「ぼくが王族だったってバレたらいけないんだよ。ちゃんと、普通の友達にするようにして」

「……ウィロー」

「よくできました、ロアン」

 ウィローは微笑んだ。


(アステル様に褒められて、嬉しい。嬉しいけれども!)

 ロアンは立ち止まり、困惑する。

(普通の友達だなんて、恐れ多くて絶対に無理だ! おれはそんな身分じゃないのに)


 ウィローは機嫌良さそうに、どんどん先に歩いて行ってしまう。


「ウィローさ……ウィロー、まってください!」

 ロアンは慌てて、ウィローのあとを追う。


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