第8話 『帰還』
「よぉうし!ようやく見えてきたな」
ダンプがダンジョンの方を見ながらそう呟く
「ですね、今度こそ踏破したいものです。」
カメルが意気込んでいる。
他の面々もダンジョンに対して活気的だ。
けどすまない。
多分あのダンジョンにはボスがおらず君たちの成長が目的だからどこかしらで撤退させられると思う。
でも一週間ちょっと経ったんだよな。
もしかするとボスの補充が完了してるかも、その場合は倒させるのかな?
と思っていると声を掛けられた。
「シャトさんもうすぐダンジョンです。
短い間お世話になりました…」
ああ、確かにそうだな。手筈では俺と彼らはダンジョンについたら別行動だ。
だがまだ言葉は続いた
「と、言いたい所なのですが。
昨日話し合ったんです、シャトさん索敵持ちですし足でまといにはならないと思います。
どうです?一緒に行動しませんか?」
それは予想外の言葉だった。
なんと俺をパーティに入れてくれるというのだ。
俺がダンジョンの関係者で無ければ涙を流してカメルに縋り着いただろう。
でもごめん、俺は君たちとは一緒に行けないんだ。
ダンジョンに入った瞬間、彼らに見つからないように裏側へと入り込まなければならない。
もし一緒に行動したとして突然消えたら彼らは俺を探すことに時間を割いてしまうだろう。
だから彼らとは一緒に行けないのだ…。
「ありがとうございます…。ですが…。」
おれは寂しそうな演技をして俯きながら首を小さく横に振る。
するとみんな何かを察したような顔をして納得している様子だった。
「そうか!なら仕方ないな!俺たちとしては歓迎だったんだが…」
明るいダンプも少しだけ寂しそうだ。
「まぁ色々ありますしね、無理を言ってすみませんでした。ではダンジョンへ急ぎましょう。」
カメルの言葉を合図に再び歩き出す。
「けど困ったらいつでも頼れよー?ダンジョン内でお前の死体を見るのは嫌だかんね」
ムーが笑いながらちょこっと小突いてくる。
そんな他愛のない会話をしながら少しづつダンジョンへ近づいていく。
入口まであと五百メートルといったところだろうか。
悲劇が起きた。
「敵襲!!!」
ダンプの勇ましい声で咄嗟に周りを見る。
どこだ、なにがいる?…。ん?
前方に土煙を上げながら土の中と地上を螺旋のように迫りくる何かが見えた。
やばい、もう間に合わない…
「皆さん!逃げ!」
カメルの叫ぶ声が聞こえた気がする。
気がつけば真っ暗だ。
死んだのか?…俺は
恐らく回避が間に合わずに衝突したのだろう。
いや…死んでない。
真っ暗ではあるがとてつもない振動を感じる。
どうなってるんだ?そうだ!
俺は目を瞑り、壁か地面か分からないが接地している面を触る。
索敵!
おかしい何も見えない。
まだ上手く制御出来ていないのか?
そう思いながらとてつもない振動に耐える。
まるで暗闇の中でジェットコースターに乗っているみたいだ。
耐えること数分、ようやく収まった。
ふぅ、何だったんだ全く。視界も明るい
「ト!…シャト!大丈夫?良かったー
心配したんだよー」
そう言って抱きついてくる少女が一人。
ミーミルだ。
どうやらダンジョンの中に戻ってきたらしい。
でもどうやって?。
後ろを振り返るとバカでかい鱗が鎧みたくなっている蛇がこちらを見ていた。
なるほどな、さっき見たのはこいつか。
はっ!てっことは彼らは?
そう思い周りを見渡す。
ミーミル、ボレロ、アビゲイル…。ん?知らない人がいる。
「シャトさん困りますねぇ、今回はたまたま助かったものの、本来は殺されていたかもしれません。
次は気をつけてくださいよ」
ボレロが不敵な笑みを浮かべている。
すると見知らぬ女が声をかけてきた
「こんな冒険者に見つかるバカが先輩ってマジ?
笑うんですけどwww」
こんのっクソガキャ…って思いたいけど。
確かにおれはミスをした怒りを抑えろ…俺の責任だ…ふぅ。
「ちょっとリア!今回はチムデビルに非があったからそんなこと言わないの!」
ミーミルが彼女を叱っている。
「まぁ俺のミスなので仕方ないです。
ところでそちらの方は…」
俺が不思議そうに見るとふふん!と言った感じで答え始めた。
「私は新しくここで働くことになったリアでーす
ま、先輩と違ってヘマしませーん。
よろしくお願いしますね?先輩?」
そう言って俺に座り込んでいる俺に手を差し伸べてくる。
まぁ言葉遣いと態度はあれだが一応礼儀はなっているのかもな。
そう言って新入社員のリアと握手をする。
けど俺が入ってまだ一ヶ月も経ってないからほぼ同期みたいなものだな。
先輩としてしっかりしたいが教えることも何も出来ないと思うので同期みたいなかんじでいこう…。
まぁ彼女の態度からしてそんなことも知らないんですか?先輩とか言われるかもな…まぁ頑張ろう。
待て待て待て、リアに気を取られて忘れていたが彼らはどうなったんだ!?
「あの、すみません。
あの冒険者達はどうなりましたか?」
「多分ダンジョンの手前で何かしてるんじゃないかな?ダンジョンに入って来てる気配もないし」
ミーミルがそう答えてくれる。
「あ、いや…あの人達が無事なのかどうかと」
「え!?先輩あの冒険者達の心配してるんですか?マジやば…」
何故かリアが若干引いているが理由は分からない
「あー、シャトを飲み込んだ後直ぐにタイタントスネークを引かせたから多分大丈夫だと思うよ…。
彼らがどうかしたの?」
ミーミルが不思議そうにこちらを見ている
「彼らは…」
言いかけた時ボレロに耳打ちでこう言われた
「シャトくん、彼らに良くして貰ったのでしょう?」
「ええ、最終的にはパーティにはいらないかと」
俺も小声で返答する
「気づいているかもしれませんがリアやミーミルはシャトくんと違って人間ではありません、もちろん私達も」
「ええ、しっていますよ。ボレロさんなんか全身機械ですしね。それがどうかしたんですか?」
俺たちが小声で話し合っていることにリアやミーミルはキョトンとした顔でこちらを見ている
「えーっとですね、その私たちは人間にとって抹消対象なのですよ。彼らがモンスターを倒すように、私たちもモンスターと同じ扱いなのです。だから冒険者たちに見つかっては行けないというルールがあるのですよ。
なので私たちは慣れているので大丈夫ですがリア、彼女に関してはこれらの話題は慎重にお願いします。」
俺は真剣な眼差しで頷く。
なるほど、このダンジョンの謎だったルールが解明された。
ボレロの話からさっするに俺が異世界人であること、ましてや人間であることは隠しているのだろう。はたまたリアに人間に対するそういう辛い過去があるからの配慮かもしれないが…。
でもなるほどな、そういうことか。
ボレロやアビゲイル、ミーミルみたいな人に近い種族みたいなのは街にいなかったもんな。
全員人間だった。
この世界では人間以外はモンスターとして見られるのか…辛いな。
よしそうと分かれば彼らには悪いが話を合わせなければ
「あぁ、いや彼らが直ぐにここに来たら大変だなと思って」
「あ、あーまぁ入口付近で停滞してるみたいだし
明日くらいには来るんじゃないかな、気を引き締めておいてね」
ミーミルも俺がリアの方を見ていることに気づいて察したようだ。
「先輩、冒険者達のこと心配してるかと思えば今度は冒険者達が来ることに心配してるし訳わかんないっすねあたしもう寝まーす」
そう言ってリアはこの場を後にした。
自由なやつだ。
リアが出ていった事を合図にそれぞれ解散した。
俺はボレロさんと事情聴取と報告書的なものを書かされていた。
ふぅ、疲れた。
けど戻ってきたんだな俺の部屋に。
懐かしいぜ。
彼らは俺が居なくなってどうしているだろうか、何も言えなかったのが心残りだな。まぁ、ダンジョンに潜ってきた時に一方的に見れるし、いっか。
そんなことを思ってると部屋にミーミルが来た。
突然の訪問びっくりだ
「ねね、シャト地上での事を聞かせてよ!」
彼女の目は子供のようにキラキラしていた。
ああ、彼女は差別云々以前に地上に興味があるんだな。
俺は地上であったこと、冒険者達のこと。
ダンジョンに来る途中に危なかったこと。
色々話した。ミーミルはそれをに大袈裟かと思うくらい楽しそうなリアクションで聞いてくれた。
一通り話した後…
「なるほどねー、確かに、リアちゃんの前ではこういう話は慎重になったほうがいいかもね」
「彼女は何かあったんですか?」
「リアちゃんはねー、冒険者に家族を殺されちゃってね…」
なるほどな、だから俺が冒険者達の心配をした時引いていたのか…でも家族を殺した冒険者と違う冒険者とはいえ、その話をマジやばで済ませる彼女は強いな。尊敬だ。
「ところでシャト、ずっと思ってたんだけどその腕輪まだ壊れてないの?」
「え?壊れる?」
「うん、私もピンチな時があってその時効果が発動したあと壊れちゃったんだー。
けどシャトは私をスライムから守ってくれた時に発動したはずなのに…」
彼女は不思議そうに俺の腕に着いている腕輪を眺めている。
「んー、あ!なんか警備員さんが魔力が繋がったとか反発とか云々言ってた気が…」
宿での出来事を思い出す。
「あー、なるほどー。」
ミーミルが少し悩んだ後思い出したかのように話しだす。
「んー、なんて言えばいいかな簡単に言うとオブザードさんが言ってた通りだと思うんだけど、
この世界の魔力ってのは反発し合うんだ。
だから他人の魔力に触れるとダメージを受ける。
それがこの世界の理。
ちなみに反発は弱い方だったり相性が悪い方がよりダメージを受けるんだー。
極論で言うと差がめちゃくちゃあったら強い方はダメージを受けない!!」
「他人の魔力に触れる…ならハイタッチとかもダメージを受けるって事ですか?」
「あーごめん、説明不足だった!」
そう茶目っ気に笑う
「魔力ってのは普段は内包されていて意図的に出さない限りダメージを受けることは無いんだー。
けど魔力って見えないから出てるか出てないか分からないよね?
それも大丈夫。
魔力は体外に出る時大抵形を成すんだよ。
例えば魔法とかが分かりやすいかな、炎とか水とか属性はあるけどあれは要は魔力の塊。
で、人によって魔力の形というか質というのが違うからそれぞれ適性がある、前のスライムで測ったやつ!ってそれは話が別になっちゃうか。
まぁそんな感じ。
一応武器にも魔力を乗せる事ができて、この場合武器も体の一部だと認識されるから魔力は見えないんだけど…これは分かるよね、相手が武器持ってるから。
で、話を最初に戻すけど。
魔力を持ってないシャトはオブザードさんの魔力に触れたことで反発が起こらずに繋がったから腕輪が壊れてないんだと思ってる。」
「ほ、ほぉう」
「まぁ理解出来てないかもしれないけどそういうことだよー多分。
じゃあ部屋戻るね、話ありがと〜」
そう言ってミーミルは俺の部屋を後にした。
んー。なんか色々話が難しくて呑み込めないな。
まぁけど武器にも魔法にも魔力が乗ってるから攻撃を受けるって事か。
じゃあ逆に魔力が乗ってない攻撃はダメージが無いのだろうか…。いやでも剣とかだと斬られたら確実にダメージが入るだろうし…それとも身体を巡る魔力が見えない鎧のような感じになっているのだろうか。うーむ分からない。
だが警備員さんと魔力が繋がりその力を使えているということは俺にも魔力が通っているのだろうか…。
魔力は見えないって言うし確かめようがない…。
あ!スライム適性なら…って多分俺の血に暴走作用があるから無理だろうな…。
魔法…どうやって使うんだろうか。
明日あたり聞いてみるか?
うわーカメルに色々聞いておけば良かったな。
どうせ使えないと思って諦めてた。
はぁ、まぁ色々考えてやってみるか…。
そんなこんなで今日は眠りについた。
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