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第7話 『再びダンジョンへ』

 

 俺たちは今ダンジョンへ続く道を歩いている。

 行きはなんとも思わなかったのだがとても遠い…。

 そして冒険者である彼らは鍛えているため俺の気も知らずにずんずん進んでいく。

 一日中ずっと歩いているので流石に足が限界だ。

 だがムーの提案により小休憩が度々あるのでありがたい。

 けど一度休んでしまうと足が完全におやすみモード

 となるので休憩中俺はストレッチをしている。

 何も変わらないかもしれないが気休めだ。


 今回は夜からの出発となった。

 なぜ夜からなのかダンプに理由を聞くと街の近く、と言っても数時間歩いたところなのだがそこに昼間に行動する手強いモンスターがいるらしい。

 だから夜のうちに出発して抜けるのだとか。

 確か行きも街に着いたのは夜だったな。


 というかやっぱりダンジョンの外にもモンスターはいるのか。

 ダンジョンが養殖なら外は完全に野良か、それは凶暴そうだ。

 そう色々思っていると、足が止まる


 「よぉし、皆!

 ここから先がタイタントゴブリンの生息地だ。

 やつは普通のゴブリンとは違い単体で行動する。

 夜目が効かないから皆夜のうちに抜けるがほんとかどうか分からなん。

 所詮噂だしな。

 なので皆気を引き締めて行くぞ!!」


 掛け声と共に緊張が走る。

 それにしてもタイタント…確かダンジョンにもいたなタイタントスネークとか言うやつが。

 見たことは無いがボスになっているくらいだし「タイタント」という言葉は一つの上位種を表す言葉なのかもしれない。

 それか群れで行動しないと言っていたから何らかの原因があって群れを外れたはぐれ個体の事を指すのだろうか。

 警戒しながら歩みを進める。

 先程周囲を索敵した時に何も見えなかったから恐らく大丈夫だろう。


 ちなみに索敵というのは俺が昨日一日かけて色々試しまくった後発見した、警備員さんが言ってた力である。

 地面に手をつけ(屋内なら壁でもいい)目を瞑り自分から離れていくようなイメージをすると、周囲の状況が分かるのだ。

 距離は大体半径百メートルくらい。

 そこまで広くは無いが遮蔽物などが多い場所ではそこそこ便利だ。

 そして今は夜。

 目が慣れたとはいえ二十メートル先はなにも見えない。

 なので百メートル先を見れるのはとても素晴らしい事だ。

 まぁ索敵中は完全無防備で、遠くを見てる時は自分の周囲が分からない。

 だから索敵してる間に襲われたら何も出来ない、細心の注意が必要である。

 思えばダンジョンで転んだ時に見たあれもそうだったな、あの時不意に手をついていたのか。

 それとこのことは彼らにも言ってある。

 出来ることがないと言った手前、それの誤魔化しに手間取ったが、こんな索敵能力あなた達のパーティには約立たないと思ったから。という理由でなんとか通せた。


 どれくらい経っただろうか、大分歩いたが一度もタイタントゴブリンとやらには会わなかった。

 そして日の出だ。

 ただ日の出と言ってもまだとても暗い。休憩を挟む。


 「やはりタイタントゴブリンが夜行性ではないというのは本当だったのでしょうか。」


 「出会わなかったしそうじゃねぇか?

 運が良かっただけかもしれねぇけどな」

 トリルが冗談交じりに笑う。


 「ですが、油断は出来ません。

 索敵します。警護をお願いします。」


 「おうよ!」


 そう言って索敵を始める。まずは前方。

 上空から隅々と見渡すような感じだ。よし特に以上はないな…」

 と索敵していると声が聞こえてきた。

 ダンプ達が話してるな。


 「いや、それにしてもシャトがこんな索敵持ちだったなんてな!何も出来ないっていうから過小評価してたぜ。」


 「ダンプ、シャトさんの集中が乱れます。

 ですが、索敵はチームの要とも言えますよシャトさん…。もしかして我々のことを警戒してました?」


 おいおい、そんな索敵は価値高いのか。

 いや考えてみれば前世界でも索敵は重要だったな。

 くそーそこまで頭が回らなかった…。


 「すみません、警戒してたわけじゃないんですが、

 前パーティにいた時、お前は索敵しか出来ないグズだから足引っ張らないように索敵しとけって毎日のように言われたもので…」


 我ながら酷いパーティだ。

 そう思っていると誰かが抱きついてきた。


 「シャトぉ…大変だったんだな、、。

 同じサポート系の役割だからお前の凄さは僕が保証してあげるよぉ」


 ムーだ。女の子に抱きつかれたことなんてないから嬉しい!…じゃなくて、そうか俺の役割は特化型シーフみたいなものだから、シーフである彼女はそんな境遇の俺に思うことがあったのだろう。


 「あ、ありがとうございます。

 ですがムーさん少し離れて頂けると…」

 そう言って苦笑する


 「あぁ、ごめんごめんつい」

 彼女は照れながら笑う。

 そういうつもりじゃなかったんだけどな、まぁそういうつもりでもいいか。


 そして俺は後方の索敵に移る。


 んー、こっちも以上無…


 「…!。」


 「どうした?シャト」

 ダンプが尋ねてくる。


 「みなさん、大変です…。

 僕はタイタントゴブリンを見たことないのでどんな姿か分からないのですが、大型のゴブリンらしき影が五匹、後方よりこちらに近づてきます…。」


 「な…、お前ら!

 急いで荷物を片付けろ!走るぞ!」

 ダンプが叫ぶと皆大慌てで準備を始める。

 三十秒くらいだろうか、俺達は走り出していた。


 ゴブリン達は追いかけて来ているのだろうか…。

 話しかけたいが息が続かない。

 元ニートがこれだけの距離を歩き、かつ走れているだけでも奇跡だ。

 あのマラソンのような苦しい感覚がする。

 いつまで走るんだこれ、


 「うわっ」

 転んでしまった。

 それを見兼ねたダンプが俺を軽々持ち上げ担ぎながら走ってくれた。


 「ありがとうございます…ダンプ」


 ダンプはおう!と言わんばかりに笑って走り続けている。

 数十分は経っただろうか、冒険者達は強いな。

 俺も鍛えておけば良かった。


 「ふぅ、ここまで来れば大丈夫だろう。」

 俺を下ろしてくれた。


 「あれがタイタントゴブリンなんですか?」

 俺が走ってる時に聞けなかった質問を投げかける


 「いや、あれはデカゴブリンだ。」


 「で、デカゴブリン?」

 名前が安直すぎるだろ、もっとなかったのかハイとかグレートとか。

 まぁ何かしら意味はあるのだろうがデカいゴブリンの名前がそのままデカゴブリンなのは少し笑ってしまうな。


 「ああ、やつらはゴブリンの亜種で三匹から五匹の群れで行動している。

 夜目も効くし下手すりゃタイタントよりも厄介かもしれん。」


 「ええ、それにデカはしつこいですしね。

 すぐこちらに追いつくでしょう。

 シャトさんまた索敵頼めますか?」

 そう言ってカメルが俺の方を見る


 「ええ、」


 俺は索敵の準備をする。

 準備って言っても地面に手をつけて目を瞑るだけだけどな。


 「ですが、先程のこともあるのでいつでも出発できるようにしておいてください」

 そう言って索敵を開始する。

 さっきのこともあるしな。


 それにしても眠い。

 先に後方、そして前方、最後に全体を確認したが索敵圏内にデカゴブリン達は見つからなかった。


 「ざっと見ましたがそれらしき影とかは見つかりませんでした。」


 「おう!ありがとな

 なら少し一安心ってところか?」


 「油断は出来ません。警戒しつつ短めに休憩を取り、出発しましょう。

 そして道中にしっかり休めそうなところがあればそこで野営します。

 みなさん疲労が溜まってるでしょうしね」


 俺たちは少し休憩をした後、出発した。

 幸い休憩中にデカゴブリンは現れなかった。

 もう完全に日は登っている。


 先程みた影は俺の勘違いだったのか?そうだったらこんなに走らせて申し訳ないな。

 けどたしかに大柄な人型の影を五つ見たんだ。

 もっと練習して索敵の精度を上げよう…。


 そして一日中、ダンジョンへ続く道、と言っても広い獣道みたいなものだがそこを歩き続けた。

 日が落ちてきたところでいい感じの岩陰があったのでそこで野営することになった。

 ダンジョンまで後半分くらいとなったところだ。


 ふぅ、今日は眠ろう。

 見張りは他の人がやってくれるそうだし、最後に索敵をして周囲を確認し、相当疲れが溜まっていたのかものの数分で眠りに入った。


 どれくらい経っただろうか、ふと目を覚ます。

 焚き火は完全に消えており辺りは真っ暗だ。

 流石に何も見えないので持っていた照明瓶を軽く叩く、すると瓶の中がぼんやりと明るくなり、少しだけ周りが見えるようになった。

 便利なランタンみたいなものだ。まぁ自分の目の前しか見えない明るさだが…。

 行きしにムーがくれた。感謝しよう。


 そう思い周囲を確認する。

 やけに静かだ、見張りをすると言っていたがどこで見張っているのだろうか、明かりも見えなかったし。

 まぁいいか、と思い照明瓶を消し、自分が寝ていたところに座ろうとした時冷たい感触があった。


 うわ漏らしたのか?俺、それとも汗?

 再び照明瓶を付ける。これ確か回数制限あったから無駄にはしたくないんだが…


 それは血だった。一気に顔が青ざめる。

 なんだ、何が起こった?。俺が起きた時には何も…、いや明かりが消えていたし気づかなかったのか?

 そう焦りながら今度は注意深く周囲を確認する。

 すると俺の足先が何かに当たる。


 ん?照明瓶を近づける


 「うわっっっ!」


 ムーの死体だった。

 間違いない、暗くて間違いたい気持ちはあるが、頭から血を流し冷たくなっている死体があった。


 俺はショックのあまり吐きそうになったが他のメンバーを慌てて探しに行く。


 まさか、いやそんなまさかだよな。

 全滅なんて…誰だ。誰がやったんだ?

 デカゴブリンがここまで追ってきた?

 いやそれだとしたら見張りの二人が気付くはず…

 でも気付かないうちにやられたら…。


 みるみる頭が真っ白になって行く。

 周りの景色もぐわんぐわん揺れている。

 あ、あれ…?お、おか、おかしくなったのか?


 「!…シャト!起きろ!」


 はっ!体を揺さぶられながら名を呼ぶ声で目を覚ます。

 汗でびっしょりだ。


 「だ、ダンプ…!」

 俺を起こしてくれたのはダンプだった。


 「どけっダンプ!大丈夫か?ほら口、あーして」

 ムーがダンプをどかし強引に飛び乗ってきた。

 「あー」

 色々思うことがあったが言われるがままに口を開く


 「よし、目。…よし。」

 そう言って顔を含めた数箇所を触った後は安堵した顔をしていた。


 ムーが生きている…ということはさっきのは夢?

 とんでもない悪夢だ。

 とてもリアルだった、最後まで…。

 ん?けどただの悪夢にしては起きた時みんな様子が変だったな。


 「なんか凄い悪夢を見たんですが…どうかしたんですか?」

 先程の夢の状況を伝える。


 するとカメルが説明してくれた。


 「先程見張っている時に悪夢人が出ましてね、

 なんとか撃退したんですが、その時シャトさんだけが起きなくて…もしかすると悪夢病にかかっているのではないかと思いまして、まぁ自力で目覚めてくれた事ですし大丈夫だとは思うのですが…。」


 なんだ悪夢人って、人なのか?いやモンスターなのだろう。

 いやいや待て待てそれより…。


 「悪夢病ってなんですか?」


 「悪夢病というのは、悪夢人が発生させる病気なんだけどそれに罹ると悪夢を見た後、それが悪夢だと気づかず眠り続け、最終的には悪夢人になっちゃうんだ。

 だから冒険者は基本複数人でパーティを組んでるのもそのうちの一つ、まぁソロの人は対策とか持ってるみたいだけどね。

 けど滅多に現れることないから油断してた。」


 怖すぎだろ…。悪夢から抜け出せなくなるみたいなのは前世界にもあったな、詳細は忘れたけど。

 けど最終的に自分も悪夢人になるということは寄生型のモンスターかな?それともゾンビみたいな…。

 まぁ助かったんだ。良かったぜ。

 後で対策を教えてもらおう。

 そしてそれに気づいて起こしてくれた彼らに感謝せねば。


 そう思いそれぞれに感謝を告げ、朝を迎えた。

 この日はデカゴブリンも悪夢人も何事も無く進むことが出来た。

 そしてまだ少し距離はあるがようやくダンジョンが見えてきた。

 俺がいない間は…申し訳ないな。帰ったら謝ろう。

 クビになるかな…トホホ。


 そして小休憩を挟み、やっとダンジョンが見えてきたな。などの雑談と意気込みを交えて、ダンジョンに向けて足を進めた。

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