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第6話 『おつかい』

 

 あのあと何故か俺のダンジョンからの帰還が祝われ、酒場でパーティをしていた。


 翌日、目を覚ます。

 はて、昨日は騒ぎすぎたな。酒は飲んでいないとはいえ場の空気に酔ってしまった。

 ふと、部屋を見渡す。どうやら俺以外はもう起きているらしい。

 起こさないでくれたのか…やさしい人達だ。

 そう思ってベットからゆっくり身体を起こし、伸びをする。


「ふぁ〜。」


 気持ちいの良い朝だ、いや昼かも。


「おイ…。」


 なんだ、気持ちの良い空気すぎて朝が語りかけてきてるのか


「聞いているノカ…。」


 目の前に黒い靄が現れる。


「うわっ!」


 思わず声が出る。

 この靄は腕輪から出ていることが分かった。

 ああ、これは前にも…


「なんだ…警備員さんですか、、ってあれ?

 ダンジョン以外でも出てこれるんですか?」


「いや、こノ腕輪ヲ通しテ俺の魔力トお前が繋がっタ。

 本来ならバ、互いノ魔力同士は反発し合ウのだガ

 お前ハ魔力を持たなイ。

 俺ノ魔力と繋がっタお前ハ、俺の力を使えルはずダ。」


 魔力が繋がった?どういうことだ。俺は魔力を持たないはず…。いやさっき魔力は反発し合うと言っていたから魔力を持たない俺は反発せず流れてきたということか、うーん。わからん


「力…そんなの使えたらあの時苦労はしてないですよ。」


 そうだ、あの警備員の絶大な力が使えるなら冒険者に見つかった時も何とか出来たはずだ…。

 いや、その前にあの時見てたなら助けて欲しかったぜ…


「今ハまダ馴染んデいないかラ、使えナイかもしれないガ、一度経験シタはずダ。

 俺ハあのダンジョンを隅々マデ見ることガできル。」


 馴染んでいない…。そんな魔力って見ることの出来るものなのだろうか。

 それにしても経験…。そんな時あったか?待てよ、

 警備員さんはダンジョンを隅々まで見ることができる…。

 あ、あの時か!頭をぶつけて転んだ時一瞬違う景色が見えたあの。


 うっひょー!異世界っぽいの来たー!っていかんいかん、警備員さんが出てきたということは何か話したい事があっての事だろう。


「それで…話はそれだけですか?」


「イや、お前への報告ガまだあル。

 任務ハ継続中ダ。

 あの冒険者達ヲ、ダンジョンに戻しテ欲しイ。」


 確かに…冒険者達を撤退させはしたが全然疲労して無さそうだもんな。

 あれで冒険者達が成長したとはお世辞にも言えないかもしれない。


「分かりました、時間がかかってしまうかもしれませんが良いでしょうか。」


「嗚呼、戻ラせれバそれでイい。」


 そう言って黒い靄は腕輪の中へ消えていった。


 力云々含めて、戻ったら色々試してみよう。

 そうと決まれば彼らを探さなければ、日が落ちればいずれ戻って来るとは思うのだが…それまで暇だしな。


 そう思い部屋を出て一階へ下った。

 するとダンプがいた。


「おはようございます、すみません。

 色々と世話になってしまって」


「良いってことよ!自分以外全滅ってことは何も持ってないだろうってことで世話してやれってトリルが言ってたしな。俺も同意見だ!」


 そうだ、そう言う設定だったな。

 彼らに感謝しなければ。


「ありがとうございます、それと他の皆さんはどちらに?」


「ああ、あいつらは今買出し中だ。

 また近々あそこに潜るんでな。

 お前も出かけるならここの区より先に出ない方がいい。

 なんせ治安が最悪だからな、お前みたいなやつは攫われて売られちまうかもなハハハ!」


 怖い冗談はやめて欲しい…。だがそうか異世界だから元いた世界とは常識もなにもかも違うのか…。

 彼らがたまたま優しかっただけで普通は殺されてたかもな…。


「いえ、なら俺も待ちます。」


 そう言って暫しダンプとの雑談を楽しんだ。

 ダンプの数々の冒険談を聞き、知らないことを沢山質問した。俺がこの世界のことを知らなすぎたせいで辺境の地出身というステータスが新たに付いた。

 まぁ異世界という点では辺境の地ではあるな。


 そう話し込んでいると、一人また一人と買出し組が帰ってきた。

 ダンプは脳筋ですぐ詐欺られるから留守番だったらしい。


 少し雑談をして、ダンジョンの話が出た時に本題に入った。


「すみません、世話になっている身でおこがましいのは承知なのですが。

 僕もダンジョンにもう一度連れて行って貰えませんか?」


 一瞬沈黙が流れた…。やっぱりだめか…。


「なんだ、真剣な顔してたからどんなことかと思えばそんなことか!」

 ダンプが大声で笑う。


「ええ、もちろん良いですよ。

 ですがどうしてまたあそこに?」


「そうだよ、なんでまた」

 カメルとムーが不安そうな顔でこちらを見る


「まぁまぁ、落ち着け。

 人には色々事情があるってもんだろ」

 ここでトリルの仲裁が入る。


 ふぅ、一先ずは安心だ。質問攻めになるかと思いきやトリルの一言で場は落ち着いた。トリル様様だ。


 んー、けど何も言わないのも怪しいよな…。

 そうだ、


「仲間の…。仲間の遺品を少しでも拾いに行きたいんです。」


「ようし!なら明日にでも出発するか!」


「ダンプ、落ち着いてください。

 急いでも二日後でないと、厳しいです。」


「そ、そうか。遺品はモンスター達が持っていきやすいから早い方がいいとおもったんだが…」

 ダンプがしょんぼりしている。


「い、いえ。連れて行ってもらえるだけでありがたいので、全然大丈夫です。」


 そう言って今日はお開きになり、部屋に戻る。

 そういや誰も俺が何ができて何ができないのか、とかいう集団行動において大切な役割を聞いてこなかったが…昨日何か話したかな。

 一応自己紹介はしたが…俺の心境を察してまだダンジョンでの詳しいことは話さないでくれているのかな。

 まぁ、だからといって俺は何も出来ないのだが…。

 どうしよう。無能を一人連れていくのは相当しんどいぞ…。

 ま、まぁなんとか切られないようにするしかないか。


 -----

 翌日。


 俺は暇なので買い出しに着いていくことにした。

 一緒にいるのはカメルとムーだ。

 今日は昨日買えなかった物を買うらしい。


 大通りの両脇に数々の出店がならんでいる。

 食料や嗜好品、武具など様々だ。


 見ているだけで目移りしてしまう。


「お二人は何を買うんですか?」

 昨日買えなかった物とはいえ何を買うのか気になる。


「そうですね、昨日ムーが交渉中腹を立ててしまって買えなかったものがあるのでそれを…」


 カメルがムーの方をちらりと見る。


「だって!あれはおかしいよ!通常の倍の値段で売られてた」

 それに気づくとムーが言い訳を話し始める


「ですが、あれはこの土地では滅多に見られないものです。多少色を付けても買う人は買いますよ。」


 その商品の名は機械草(マシンリーフ)と呼ばれるもので機械都市によく生えているらしい。

 なんでも工業地帯から出る有毒なガスに適応した草だという。


 この草は機械に反応するため、ダンジョンの罠解除に役立つらしく、機械都市でしか取れない貴重性故、それ以外の地域では高値で取引されているらしい。


 へぇ、そんな草があるのか、メカメカしいのかな。

 そんなことを思っているとその出店についた。


「あんたら、今日もきたのかね。」

 店主が不機嫌そうに尋ねてくる。


「ええ、昨日はすみませんでした。

 正規価格、いえ少し色を付けさせて頂きますので購入させてもらえませんでしょうか。」

 そう言ってカメルは小袋のようなものを渡す。


「どれどれ…。ほぅ、分かった。

 いくつ欲しいんだい?」


「一つで構いません。」


「…。好きなのを持っていきな。」


 会話中ムーの方を見ると、終始なにか言いたげな顔をしていたがその度にカメルが片手を広げて止めていた。


「ふぅ、売ってもらえて良かったですね。

 昨日あんなことがあったので売ってもらえないかとヒヤヒヤしましたよ」

 カメルが話しながら苦笑する。


 一体どんだけキレたんだよムーさん…。


「まぁ何はともあれこれで罠に関しては何とかなるでしょう。本当はもう少し欲しかったのですが…店主を怒らせてしまっているのでね仕方ないです。」


 ムーが申し訳なさそうな顔をしている。


「ところでシャトさん、私は後衛で魔法を使うのですが、あなたは何が出来ますか?」


 歩きながら話題を振られる。

 き、来てしまったこの質問が…。

 どうしようか、何か出来ると言うか?いやいや嘘ついて重要な役割に組み込まれたら絶対にやばい。

 よし、本当のことを言おう。くぅ、勇気がいるな…

 頑張れ俺!


「すみません…。申し訳ないのですが俺は何もできません…。」


 こう言うと二人は一瞬驚いた顔をしていたが直ぐに真面目な顔になった。


 俺は二人の返事を待たずに続けて話す。


「ですから、ダンジョンに着いたら俺は一人で行動します。

 何も出来ない俺と一緒に行動するのは大きな負担でしょうし…。」


 俺が話し終えて二人の顔を見ると笑っていた。


「なんだ、そうでしたか。

 てっきり一人だけ生き残っていたので相当強いのかと思ってましたが逆に安心しました。

 そんな寂しいこと言わずに私たちと動いて大丈夫ですよ。」

 カメルが優しい声でそう話す。


「いいや、カメル。

 これに関してはシャト言う通りだ。

 シャトには悪いけど何も出来ないというのはパーティにとって負担になる。

 どういう理由でシャトが前のパーティと行動してたかは知らないけど、うちのパーティには反対だ」

 ムーがカメルに対して反論する。


 そりゃそうだ、見ず知らずの無能をパーティに入れる危険性がどれだけ高いかは異世界人の俺でもわかる。


「ちょっと、ムー!そんな言い方は無いでしょう…」


「いや、俺もムーに賛成だ。」

 突如後ろから声がした。

 トリルだ。自分の買い出しが終わって合流出来たのだろう。

「シャトは自分が俺たちのパーティに入ったところで何も出来ないことを知ってる。

 だから一人で動くって言ってんだ。

 確かにカメルの気持ちもわかる。せっかく生き残ったんだし俺も死んで欲しくはねぇ。

 けどな、ダンジョンというのはそういう場所だ。無能一人をチームでどうにかできる所じゃねぇ、それはシャトが一番わかっているはずさ。」


 トリルの言葉でカメルも納得したようだった。

 後で歩きながらすまねぇなと言われたが、全然不快に思ってはいない。トリルのさっきの話にはトゲはあったが悪意は感じられなかったからだ。


 そんな話をしながら宿に戻る。


 そしてさらに一日が経ち。いよいよ出発だ。


 俺がダンジョンを離れてから約一週間が過ぎている。

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