第5話 『地上へ』
しまった…見つかってしまった。
ダンジョンで働く者のたった一つの掟
((絶対に冒険者に見つかってはいけない。))
理由は分からないが裏側がいるって知ったらやはり冒険者達が悲しんでしまうのだろうか…って絶対そんなのじゃないな
さて、どうしたものか…。
せっかく異世界で働く事ができたのにこんなとこで終わってしまうのか…。
せめて殺されるならあの大柄の男の剣で、一撃で…。
「なんだ、人じゃねぇか。
お前迷子か?。
おーい!人がいるぞー!」
と思っていたら予想外の会話が聞こえてきた。
「こんなとこで迷子…。まぁありえますがおそらく仲間のパーティが全滅してしまったのでしょう…。
かわいそうに。
まだお若いでしょうに…」
あれ、あれ?どういうことだ
「怪我はないか?、服もこんなにボロボロで…
おーい、カメルこの子に回復魔法かけてあげて」
そう言うとシーフの女が大きな外傷がないか確認してくる。
と言っても服がボロボロなのはさっき転んだ拍子に汚れただけだけどな、
「はぁ、こりゃ一旦撤退だな。
見捨てていったら寝覚めがわりぃ」
この場に限っては見捨ててくれた方が助かります。
「そうだな、撤退だ!そいつは俺が担ぐ!
皆は周囲からモンスターが来ないか見ていてくれ」
あ、ちょちょちょ!
おれは瞬く間に担がれ運ばれていく。
どうやらこの冒険者達は俺がダンジョンで1人になってしまったんだと思っているらしい。
二階層から一階層へ、途中何度もチムデビル達が攻撃を仕掛けてきた。
俺のチームだ…。
チム達、違うんだ…いや連れ去られてるのは事実だが…違うんだ…。
「チム!チムゥ!チムゥゥゥゥ!」
必死に攻撃を避けながら冒険者達へ一撃を入れる。
俺をここまで連れてきたチムデビルだ
「な、なんだ!このチムデビル凶暴すぎるぞ!」
「チムヴゥゥゥ!!…チムゥ…。」
しかし上手く避けていたが一撃を食らってしまい地面に叩きつけられる。
ああ…そんな。
死んでないよな?気絶してるだけだよな?
そう思いながら遠くなっていくチムデビル達を眺める。
そして一階層だ。
「ふぅ、ここまでくればいいだろう。
よっこらせっと…、歩けるか?」
ここで大柄の男が下ろしてくれた。
まぁなんともありがたいことだ。
「はい、ありがとうございます。
それとここまで運んでくれたことも」
「良いってことよ!お前も色々あったんだろ?」
そう言われ少し目が泳ぐ
「ま、まぁ…色々と」
「どうせなら、街まで送ってやるよ、
俺たちもちょうど一旦引き返そうか迷ってたところだしな!」
「そうですね、自己紹介もまだですし歩きながら話しましょう。」
剣士の男と魔術師の男が話している。
街…か。そういやあるんだな。
こっちに来てずっとダンジョンだったから存在を忘れていた。
そして街に着く途中、彼らの話を聞いた。
まず大柄で背中に剣を背負っている男がダンプ
このパーティのリーダーで、腕っぷしだけは一丁前なのだという。いわゆる脳筋だ。
しかし明るく楽観的な彼の性格はパーティの士気に大きく関わっている。花が好きらしい。
俺がこのパーティのメンバーだったとしてもこいつをリーダーに選ぶだろう。
そして魔法使いの男がカメル
彼は慎重で常に最悪の事態を考えている。
しかし後衛である彼にとってそれは重要なことであり、戦闘の判断や的確な援護など慎重でないとこなせない役割を担っている。普段は読書をして過ごしているとか
そしてシーフの女がムー
彼女も慎重だ。しかし問題は無い、斥候や探索を専門とする彼女もその慎重さが肝になってくる。
戦闘中ずっと駆け回っていたことを見るとシーフは意外と大変なのかもしれない。
少なくとも俺はシーフというのは情報収集が専門で戦闘には参加しないものだと思っていた。
朝が苦手で、仕事以外は引きこもっているらしい。
最後に腰に剣をぶら下げている男がトリル
この男は言葉は軽いが意外と仲間想いで親切だ、
俺をダンジョンで見捨てない判断をしたのもこの男だ。トリルの役割はダンプのサポート。
ダンプがアタッカー兼タンクで、ダンプが引き付けている敵を追撃するのがトリル。サブアタッカーだ。夜な夜な街に繰り出しているらしい。
とまぁこんな感じで数日、彼らの話を聞きながら街へ到着した。
着いてからというもの俺は無一文なので彼らの宿に居候している。申し訳ない…。
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シャトが連れていかれた直後。
ミーミル視点
「ふん〜ふんふ〜ん♪♪」
シャトの初陣?が順調なようで教育係としては誇らしい。
今回の冒険者はそこまで強くないらしいからそれも安心。
前回は「間引き」だったのに想定以上に強くて、ボスまで倒されたから大変だったなー
今回はアビゲイルさんも底階層についてるしきっと大丈夫!
「チム!チム!」
一匹のチムデビルが絶望した顔で三層管理室に飛び込んでくる
「…どうしたの?」
アビゲイルと顔を合わせる
「チム!チムゥ…」
チムデビルが泣きながらなにかを伝えようと頑張ってジェスチャーしている。
「お、落ち着いてチムデビル、何があったの?
もしかして…シャトに怒られた?」
冗談交じりに問いかけると勢いよく飛び去って行った。
「あ、ちょっ…。
アビゲイルさんここ頼んでもいい?」
「いえ、私も行きます。
あのチムデビルの慌て様…。
二階層で何かあったのかもしれません。」
「ちょ、ちょっとアビゲイル
冗談だよね〜。…。」
急いで現場に向かう。
管理室には誰もいない。
チムデビルの後を追う、監視通路のさらに奥、冒険者ルートに出た。
そこには無数の戦闘跡。
そして二階層から一階層への階段付近の道に無数のチムデビルが転がっていた。
「え…。なに…これ、、」
思わず声が漏れる。
冒険者達は一階層へ戻ったはず、シャトもいない。
ただそこには転がっている死体と泣きながら何かを伝えようとしているチムデビルだけだった。
「…。オブザード様、見ていたのでしょう?。
一体これはどういう事なのでしょうか。」
アビゲイルがダンジョンの壁を見て話す。
「異世界人ガ冒険者達に見ツかっタ。
警告ハしたんダガ…ソレに気づかズ連れ去られてしまっタ。今頃研究に使ワレ実験サレているダロウ…。」
「う、うそ…そんな…。」
ショックのあまり絶望してしまった。
もっと自分がしっかりしていればシャトの事を見ていれば…と。
「オブザード様、冗談も大概にしてください。」
「え…?」
冗談?でもシャトがいないのは事実…あ、オブザードさんが匿っているとか?
「フッ、アビゲイルにはお見通シか…。」
「はい、シャトさんは我々と違って人間。
人族であるならば恐らくダンジョンで一人になってしまった者として保護させるでしょう。まぁ…中には追い剥ぎや賞金稼ぎもいますが…。
今回の冒険者達はそう見えませんでしたし。」
「はぁ…なんだ。本気にしちゃったよ…。」
さっきまでの自分が恥ずかしい。
「すまないナ、ミーミル」
オブザードが慰める。
「ですが、戻ってくるでしょうか?
彼にとってはここより、人間社会の方が合っているのでは。」
「それハ…分からナイ。」
「きっと戻ってくるよ!」
根拠は無いけど、そんな気がするんだ。
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シャト視点
「いぇぇ〜い!!カンパーイ!!」
その頃、俺は冒険者達の世話になっていた。
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