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Chapter 1-4-余談

吊り橋効果とデストルドー


 やたらストロークが深いボタンを押し込んでやたら遅いエレベーターを降りて病室にたどり着く。  

 撃たれた直後とは比にならないほど顔色の良くなったルナが寝るのを手伝う。


 ……本当に薄い身体だ。 この先運び屋としてやっていけるか微妙に感じる程には。


「今日は、本当に大変でした……近道してあんな目に遭うとか……」

「企業の警戒圏を把握してないからこうなるの、あまり舐めてると本当に死ぬよ?」


 また頭の中が疼きだす。 ルナの過ちが私の体験と一致したからだ。 気づくと指先がこめかみを掻いている。


「ええ……もう山っ気は出しません、疲れました……」


 誰のおかげで助かったのやら、と掻く指先が加速する。


「そうして、顔見知りが死ぬのはもう御免だから」


 ああ脳が、いや、インプラントが疼く。 体験に基づいた違和感は薬を足しても収まらないのは自分自身がよく知ってる。

 ……そのせいか、あるいはクドーのせいか妙なアイデアが口を突く。


「……アンタさ、アタシと組む? アンタがダイバーで、火力はラスティ担当でさ。 どうせ死ぬならみんな顔見知りのが寂しくないしさ」


 自身の発言をフィードバック。 なんでこんな事を言っているのか。 ODでラリっているのかもしれない。 明日の朝、自分の言った事を覚えていればいいが。 取り返しのつかない事を言ったな……。


「……いいっスよ。 死ぬ時はせめて嫌いじゃない人と一緒のがいいです」


 感じた事が無い。いや、失われたのか。

 わからない、根元にある感情を考えたくない。


 それでもこの妙な安堵感を拒んだら自身の何かが一緒にどこかに消えてしまいそうで……ODだ、ODのせいに決まってる。


 それでも……。


 ……これは愛おしさだろうか、いやそんなわけ無いだろう。 破滅願望持ちのまともに回ってない頭が弾き出した誤解だの吊り橋効果なんてロクな結末を産まない。 それでも口は動き出す。


 最悪の結末の道連れを作るな、私ーー


「そうしよっか、どうせ死ぬんだからさ。そうしよっか。 死ぬならみんな一緒がいい」


 急に酷い疲れに襲われて体がソファに吸い込まれる。 ODと過労か……久々すぎてわけがわからなくなる。 なんて事を言ったんだ私は。


「……ウチら、いつか死ぬのが運命なんスよね?……この仕事で死ぬのが」


 途切れかかる意識を何とか繋ぎ止めて、返す。


「アンタは、死なない……さね。 アタシも、ラスもいるんだから……大丈夫、アンタは……」


 意識が切れる。


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