第96話 自分を肯定してくれる人
「ずびっ、、ぐちゃぐちゃにして、、ごめんなさい、、」
「なんかえっちですね、それ」
「、、、」
「あれ?」
ふざけられてもツッコむ元気はなかった
そんな軽口を言うあめちゃんのブラウスは、オレの涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた
「パイセンに汚されちゃった♪」
「、、、風呂はいってください」
「なんすか、さっきからえっちですね」
「、、、」
「あれ?」
だからツッコめないってば
「まぁいいっす、ボイスレコーダー、渡してくださいっす」
「、、、」
無言で渡す
「はい、確かに
リビング行きましょ」
「うん、、」
あめちゃんは持ってきたノートパソコンにボイスレコーダーを繋いで、データをコピーしているようだ
「パイセン、Tシャツ貸してください」
「なんで?」
「いや、これ」
あめちゃんが自分の胸元をさす
ぐちゃぐちゃだ
「ごめんなさい、、」
「いいから、Tシャツ」
「はい、、」
適当なTシャツを渡す
「ワイシャツの方がいいっすかね?彼シャツ?的な?」
「、、、」
「もー、ノリ悪いっすねー、シャワー行ってきまーす」
「いってらっしゃい」
お風呂からシャワーの音が聞こえてきた
なんだか安心する
近くに人がいる
それだけで、安心した
「いいお湯いただきましたー」
「あ、おかえり」
「ただいまっす」
「このデータ、弁護士にも送りますね?」
「、、うん」
「もう一回泣きますか?」
「、、だいじょうぶ、、」
「もう一回抱きしめてあげましょうか?」
「、、、うん、、」
「はい、どーぞ」
オレのTシャツを着たあめちゃんが女の子座りで手を広げていた
そこに抱きつく
「あれ?顔をおっぱいに埋めないんすね?」
そう、オレは普通にハグしていた
「、、だって、今は理性あるから、、」
「ほう?理性がないとオッパイに突っ込んでくるんすね?」
「、、ごめんなさい、、」
「ふふ♪怒ってませんよ♪
そ、れ、と、今、ノーブラっすよ♪」
「、、、」
すっ
オレはあめちゃんから離れた
「あれ?むっつりのくせに、、」
「、、ありがとうございました
突然来ていただいて、大変助かりました」
正座して頭を下げる
「はいっす♪パイセンのピンチにはいつでも来ます♪」
「なんか、オレダサいな、、」
ホントは逆の立場にならないといけないのに、、
「そんなことないっす、それにわたしがツラいときは、パイセンも同じこと、してくれますよね?」
「もちろんだよ!あたりまえだよ!」
「ふふ♪ならお互い様っすよ♪」
「ありがと」
「あ、なんかご飯食べます?
出前でも頼みましょーよ」
「そうだね、そうしよっか」
オレたちはUber eatsのサイトを眺めて、適当な中華を頼むことにした
あめちゃんと食べるご飯は、すごく美味しく感じた
・
・
・
翌朝
「パイセン!あんなクソやろーに負けるなっす!」
「うん!」
「パイセンは強い子っす!わたしがついてます!」
「うん!うん!」
「勝てる勝てる!」
「うん!うん!」
「よーし!行ってこいっす!」
「がんばる!」
あめちゃんの激励の電話だった
あめちゃんは昨日、ご飯を食べたあと、オレのTシャツを着たまま、ブラだけつけてタクシーで帰った
ブラウスはオレの洗濯機の中だ
そして、帰ったらボイスレコーダーの音声を聞いたらしく
すぐにオレに電話をかけてくれて
めちゃくちゃ、それはもうめちゃくちゃ怒ってくれた
パイセンは悪くない
こいつはクソやろーだ
絶対許さない
訴えたら絶対勝てる
そう言って励ましてくれた
それがすごく嬉しくて
オレはおかしくないんだ
オレは悪くないんだって
実感することができた
1人で悩んでいたときは、
もしかしたら、自分が悪いのかもしれない
自分が仕事ができないから
自分が失礼な態度だから
自分が自分が
そう思っていた
でも違った
あめちゃんはオレを肯定してくれる
今はそれを、それだけを信じよう
都合のいい解釈かもしれない
でも、前向きに生きよう
そう思えた
そして、オレは玄関を開ける
CRカップで号泣してる ししろん(獅白ぼたん さん)見て泣いた




