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第95話 勘違いの空元気、そして追い打ち

木曜日


「新井くん、明日、ホントに発表するつもりなのかい?」


「はい!大丈夫です!」


「ほ、ほんとに?私は代わりに発表しても構わないよ?」


「いえ!オレの企画ですので!最後くらいはやらせてください!」


「、、、磯部さん、会議にくるよ?」


「見ないようにします!」


「そ、そう?うーん、そこまで言うなら、任せるけど

念のため、発表スライドにカンペ書いておこうか」


「わかりました!」


オレは自席に戻り、パワーポイントのカンペ機能を表示して、そこに発表で話すセリフを書いていく

これで、もし内容を忘れてしまっても、セリフを読むだけで発表は成立する

念のため、念のための対策だ


定時


「うち、もう帰るけど、あっくんは?」


「もうちょっと練習してく!」


「そうなん?」


「私も今日は帰るけど、1人で大丈夫かい?」


「はい!明日はお任せください!」


「わかった、よろしく頼むよ」


「はい!」


「それじゃあ、また明日なぁ」


「うん!また明日!」


オレは残業することにして、発表練習を繰り返した


最後は、最後こそ、自分で発表するんだ!

がんばるぞー!




何度目かの発表練習をしていると


ガチャリ


部屋の扉が開く音がした


?のんちゃんか課長が帰ってきたのだろうか?なぜ?忘れ物?


「ほー、ここがおまえらの部署かー、シンジン」


「っ!?」


あの人だ、あの人がいる、磯部部長だった


「な、、」


「おー、明日の発表の練習かぁ?

まさか、おまえが発表するなんて言わないよなぁ?」


「い、いえ、、」


「はぁ〜、はっきりせんヤツだなぁ?

お、ま、え、が、や、る、の、か??」


言いながら、そいつは近づいてきた


「は、はい、、お、オレが、発表、、します、、」


「オレ、だぁ?」


「あ、、私が、、」


「おいおい!!そんなおどおどしてて大丈夫なのかぁ!?」


びくっ!


突然の大声に身体が固まる

これだ、いつもこれで怯えていた


「おまえ!なんかが!発表して!大丈夫なのかぁ!?」


「、、だ、、だいじょうぶ、、です、、」


「はぁ、ボソボソしゃべりおって

シンジーン、おまえはオレが育ててやってたころから、全く成長してないなー、おい」


育ててやった?そんな覚えはない

でも、言い返せない


「おまえみたいな、ハッキリしゃべれん、いつまでも新人きどりのヤツが会社の金を動かすような企画を提案していいと思ってんのか?

なぁ?シンジン?」


「、、いや、、そ、れは、、」


「おまえ!なんかな!どうせ!企画なんかやっても上手くいかないんだよ!」


肩を指で押される

なんども、なんども、


「あの、、押さないで、ください」


「はぁ?押してないだろ?指導だろ、これは

それで、発表資料はどうなんだ?見せてみろ」


「け、結構です、、」


「はぁ?どういう意味だ?」


「も、もう帰るので、、」


オレはノートパソコンを閉じる


「おいおい、朝まで練習しろよ、朝まで

おまえなんかがこんな時間に帰っていいと思ってんのか?

明日は社長も来る会議なんだぞ?」


「し、失礼します、、」


ノートパソコンを持って、そいつの脇をすり抜ける

すぐにカバンを持って出て行こうとする


「待て」


扉の前にやつがいた


「おまえ、前の部署で俺のこと人事になにか言っただろ?」


「え?、、、」


「おまえがうちに来てから、俺は異動になったよなぁ?

つまり、おまえがなんか言ったってことになるよなぁ?

おい?パワハラされてるとでも言ったのかぁ?」


「い、いえ、、」


そんなこと、ホントに言ってなかった

こいつはなにを言ってるんだ


「おまえ、俺をおとしめようとしてるだろ?

なぁ!?」


「ひっ、、し、してません、、」


「クソやろーが、今度同じことしたら会社にいれなくしてやるからな」


「、、、」


「おう、帰れよ、やる気ねーやつは帰れ

どうせ明日の発表も失敗だ

帰れ帰れ」


「、、、」


扉の横にやつが避けたのでドアノブに手をかけ、出て行こうとする


「お先に失礼します、だろぉ?なぁ、シンジン」


「お、、おさきに、、っ!?」


ガチャ!


オレはあわてて扉を開けて走る

逃げないと!なにかされる!


「おい!明日俺も見てるぞ!わかったな!?おい!!」


後ろから怒鳴られた

なんなんだあいつ、おかしいんじゃないか


オレは非常階段から地上まで上がり、正門まで走って、駅まで走って、

急いで電車に乗り込んだ


「はぁはぁはぁ、、」


席には座らない、人でいっぱいだ


気持ち悪かった


カバンを抱いて、壁にもたれかかる


おまえなんかが

どうせ失敗する

成長してない


さっき言われことがフラッシュバックする


「、、気持ち悪い

、、、あめちゃん、、」


スマホを取り出そうとすると、自分の手が震えているのに気づく

気づいたら、もっと怖くなった


「あめちゃん、、」


電話をかける

呼び出し中の画面になる


出ない、配信中だろうか?


しばらくかけ続け、迷惑だと気づいてすぐに切る

すると、


ごめんなさい、配信中っす

終わったらすぐ電話します

トラブルっすか?


「あ、、」


なんて返そう


ごめん


なにも考えれなくて、それだけ打ち込んで、送信ボタンを押した

スマホをポケットにしまう


ボーっと、なにも、考えないようにして、

電車のぶら下がってるチラシを眺めて過ごした


気づいたら、いつもの駅で

気づいたら、玄関にいた


靴を脱がず、玄関に座り込む


「あ、、、あめちゃんに、電話、、しないと、、」


スマホを見ると、あめちゃんから何度も着信がきていた


12件


なにかあったのだろうか?


またかかってきた


ポチッ


「パイセン!?なんで出ないんすか!?」


「え、、あ、、ご、ごめ、、、ごめん、、ごめ、、ん、、」


「っ!?すぐ行きますから!!すぐ行きますからね!」


「ごめん、、、ごめん、、、」


スマホを握りしめたまま、謝り続ける

なにに謝ってるのか、わからなかった




ガチャ!!


「パイセン!!」


「あ、、ぐっ、、うう!!」


オレはたまらず、その子に抱きついた

足には力が入らず、腰あたりに倒れかかるような形になってしまう


「ご、、ごめん!、、オレ、、」


「大丈夫っす!大丈夫ですから!」


暖かい手が頭を包んでくれる


「がんばりました!がんばりましたね!」


「うん、、うん、、がんばる、、おれ、、もっと、がんばるから、、」


「大丈夫、大丈夫っす

大好きです、泣いていいですよ」


「う、う、、うう、、あめちゃん、、、」


膝立ちになって、オレのことを抱きしめてくれた

オレはその子の背中に手を回し、強く抱きしめる

さっきまでのことを忘れるために、ぐちゃぐちゃになるまで泣いた

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