第94話 パワハラ対策とボイスレコーダー
「本当に帰って大丈夫ですか?」
「大丈夫、元気になった」
「ほんとすか?添い寝しますよ?」
「それは、ダメ」
「なんでですか?」
「我慢できなくなる」
「我慢しないでほしいっす」
「だめっす」
「ふーん?えっちなくせに」
「だから、ダメなんす」
「ま、いいですけど、もう時間の問題じゃないっすか?」
「なにがかな?」
「もうすぐ、あめだま様に落ちそうってことっす♪」
「、、、」
「沈黙は肯定ととります」
「ノーコメントで」
「もはや肯定なんすよ、それは
ま、いいや、ボイスレコーダー、ちゃんとやるんすよ
届いたら電話ください」
「う、うん、、」
「大丈夫っす、迷惑なんて1ミリも思ってないっす
配信中じゃなければ必ずすぐ出ますから
配信中だとしても、メッセは返します」
「うん、ありがと、何からなにまで」
「いいえ、大好きなパイセンのためです
これくらいあたりまえです」
「お、オレも、、うん、ありがと」
「、、ふふ、それじゃまた♪」
「うん、またね、ありがと、助かった
すごく、楽になった」
「嬉しいです♪それではまた」
最後に両手でぎゅっと手を握ってくれた
その手をオレも両手で握り返す
離すのが名残惜しかった
「ふふ♪かわいいです♪」
「あっ、ごめ」
パッと手を離す
「またニギニギしてあげますね♪」
「うん」
「あはは♪それじゃ、ほんとにバイバイっす
つらくなったらいつでも電話するっすよ」
「うん、ありがと、またね、バイバイ」
ガチャリ
小さな少女が手を振って出ていくのを、オレも手を振って見送る
扉が閉まると、追いかけたくなった
寂しくて
でも、十分元気はもらった
だから、思いとどまる
しっかりしよう
あんなに小さい女の子に頼りっぱなしじゃダメだ
それに、オレにはあめちゃんがついてる
怖いものなんてない
その日、オレは、やっと前向きになることができた
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月曜日
あめちゃんの前で大泣きしたオレは、前向きな気持ちで会社に行く準備をしていた
でも、玄関から出ようとすると身体が重くなる
情けなくなったが、助けを求めてスマホをみた
いってらっしゃい♪あめだま様がついてますよ♪
あめちゃんからだった
あの子はホントに、、
オレが朝うじうじしてるところまで見抜いていたのかな
オレは笑顔になって、玄関の扉を開けた
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今日はあめちゃんのアドバイス通り、のんちゃんや課長から離れないようにしようと思う
どこかであいつに会ってしまって、攻撃されては心が持たない
ドキドキと不安な気持ちで1日過ごしたが、特になにも起きなかった
なにも起きなかったことをあめちゃんに報告する
次の日、ボイスレコーダーはまだ届かない
今日の夜、受け取る予定だった
オレは最後の発表のための資料をまとめて、発表練習もしながら、定時には無事帰ることができた
ついに、ボイスレコーダーが届く
すぐにあめちゃんに電話した
「はい、もしもし、お疲れ様っす♪」
「あ、お疲れ様、ボイスレコーダー届いたよ」
「そうっすか、良かったです
今日もなにもありませんでしたか?」
「うん、何もなかった、平和だったよ」
「そうすかそうすか、でも、油断したらダメですよ?明日からちゃんとボイスレコーダー使ってくださいね?」
「うん、うん、ありがとう」
「充電を忘れないように」
「あ、そうだよね、そうする」
ガサガサと箱からボイスレコーダーを出して、パソコンのUSBハブと繋げる
充電ランプが点灯した
「おっけー、今充電してます」
「よくできまちた、明日からもがんばるんでちゅよ」
「うん、がんばる、ありがと」
「あれ?子ども扱いするなって言わないんすか?」
「え?あ、たしかに」
「あはは、借りてきた猫ちゃんみたいですね♪」
「猫ちゃんっていう言い方かわいいね」
「な、なんすか、急に、、」
「え?そう思ったから、、」
「そ、そうすか?なんか調子狂いますねー
とにかく!明日はちゃんとボイスレコーダー録音して、帰ってきたら電話に出てくださいね!」
「うん、うん、わかった」
「それでは、おやすみなさいっす」
「おやすみ、うん、ありがと」
「はい、それではまた♪」
「またね」
プツ
もう少し話したかったな、そんな贅沢なことを思いながらボイスレコーダーを見る
ふと、思い出したことがあって、机の引き出しをゴソゴソと漁る
「あった!」
あめちゃんの記念グッズフルセットについてきたステッカーだ
それをボイスレコーダーの裏面に貼る
「よし!」
あめちゃんがくれたこれがあれば怖いもの無しだ、どんとこい
オレは負けないぞ
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水曜日
会社の正門をくぐり、すぐにトイレに入ってボイスレコーダーを起動した
ジャケットの胸ポケットに入れる
よし、おっけー、よし、大丈夫だ
そして、職場に向かう
「おはよー」
「おはよ!」
「あれ?あっくん元気になった?」
「うん!少しは!」
「そうなん?それならええけど、ツラかったらすぐ言ってな?」
「うん!いつもありがと!」
のんちゃんに挨拶してから自席につき、明後日のプレゼンの準備に取り掛かる
いよいよ最後のプレゼンだ
これを乗り越えれば、あめちゃんたちとのコラボが実現する
がんばろう
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「今日はどうしでしたか?ツラくありませんか?」
「うん、大丈夫!明後日のプレゼンはオレ!がんばるよ!」
「がんばるって自分で発表するつもりっすか?」
「うん!今日、課長にそう言ってきた!」
「そうなんすか?あらあらパイセンの気持ちは優先したいっすけど、、
トラウマはそんな簡単に乗り越えれないっすよ?
結木っちに任せた方がよくないっすか?」
「う、うん、、
でもがんばる!オレにはあめちゃんがいるから!」
「う〜ん、、そう言ってくれるのは嬉しいっすけど、、
もし失敗しても、わたしは嫌いになりませんからね?
そのときは、結木っちに代わってもらいましょうね?」
「うん!うん!そうならないようがんばる!」
「やる気があるのはいいことっすけど、心配っす
今日はちゃんと休んで、明日また電話しましょう」
「わかった!毎日ありがとう!がんばる!」
「はい、頑張ってるパイセンは素敵です♪それではまた明日♪」
「うん!また明日!」
プチ
「よし!がんばろう!」
オレならやれる!オレならやれる!そう念じてベッドに入った
週末あっという間に終わるー!
とりあえず、土曜日はサウナで整うことはできたのでよしとしましょう
明日からまたお仕事がんばりましょ~




