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第93話 嘘つきの罪悪感と救いの女神

ガチャリ


「はぁ、、ウソついちゃったな、、」


楽しかったお茶会の後、家に着いたら嘘をついた罪悪感が襲ってきた


順調なのはウソじゃない

でも、オレが頑張ってるわけじゃない

頑張りたい気持ちはあるけど、頑張れてない


「はぁ、、」


ため息をついてパソコンを起動する


「動画でも見よ、、」


カチカチとディメコネの切り抜き動画を漁る

面白そうな動画はたくさんあった

この前の夏祭りのやつでも見ようかな


ピンポーン


んー?はいはい

なんだっけ、この前注文した水だっけ


ガチャリと玄関を開ける


「ちわっす」


「?なんで?」


あめちゃんがいた


「入ってもいいすか?入りま〜す」


「え?おお?おぉぉう、、」


質問したわりにオレを押し退けて入ってくる


「な、なに?どうかしたの?」


「、、パイセンこそどうしたんすか?」


「なにが?」


「カッコつけないでいいっす

つらいことがあるなら、ツラいって言ってください」


「な、、ん、で、、」


「やっぱり

なんか変な間があったんすよね、今日のパイセン

仕事っすか?

プレゼンが上手くいかなかったとか?

それでわたしたちに嘘ついて罪悪感で凹んでるんすか?」


「、、、」


「ほぼ、図星だけど、なんか違うっすね」


「べつに、、」


「大丈夫っす、わたしはカッコ悪いパイセンも大好きです」


「そんなわけ、、」


「ホントです」


近づいてきて、抱きしめられる

とても、小さな少女に

でも、とてもあたたかい


「仕事で失敗したって

上司に叱られて泣いちゃっても

パイセンが頑張ってるのには変わりないっす」


「お、オレ、、がんばれて、、ない、、」


「そんなことないっす

大丈夫です、パイセンはがんばってます」


背中をさすられる


「ぐっ、、でも、、プレゼンも、、できなくて、、」


「はい、、大丈夫です」


「課長に、、かわって、もらっで、、う、、」


「はい、はい、大丈夫ですよ」


「オレ、、情けなくて、、みんなに、、言えなくて、、」


「つらかったですね、大丈夫、大丈夫」


あめちゃんの温かい手が、言葉が、

染み渡ってくる


「う、、ご、ごめ、、こんな、、」


「大丈夫です、がんばってます、あらとさんはがんばってるんです」


「うう、、ウソついて、、ごめん、、う、う、、」


「怒ってません、大丈夫です」


「う、う、、う、、、」


オレは小さな少女に抱かれて、しばらく泣き続けた



「それで、結局なにがあったんすか?」


「えっと、、」


「もうわたしの前で泣いたんすからぜんぶ話してください」


「、、いやだ、、」


「しゃ!べ!れ!」


ぽかぽかと胸を叩かれる

ぜんぜん痛くない

むしろ優しささえ感じる


オレとあめちゃんはソファの前の絨毯の上に向き合って座っていた


オレはあぐらをかいて

あめちゃんは女の子座りしている


「、、、」


「しゃべるまで帰りません」


「、、、」


「あついなー?下着になろうかな?」


「、、、」


「、、むっ」


プチプチとブラウスのボタンを外し出す


「話します、、」


「よろしい、はい、どうぞ」


ボタンを外す手が止まった


「ボタン、、はめてもろて、、」


「はいはい」


ブラウスのボタンを上まで止めてくれた


「そんで?」


「、、苦手な、、上司がいて、、」


「ふむふむ」


「今は一緒に仕事、、してないけど、前の部署で、、めちゃくちゃ怒られて、、

こわくって、、」


「なるほどなるほど、それはイヤですね」


「それで、、プレゼンのときに、、そいつがいて、、

、、、」


「大丈夫です」


オレの手をあめちゃんが握ってくれる


「ふぅ、、そ、そいつがいるのを、見たら、、しゃべれなくなって、、

それで、課長にかわってもらって、、」


「OKです!わかりました!」


「う、うん、、」


「そいつにはまたイヤなこと言われたんすね?」


「うん、、のんちゃんが、かばってくれたけど、、プレゼンが終わった後に、、怒鳴られて、、けなされて、、

オレが、、

オレが、のんちゃんを、守らないといけないのに、、」


「がんばりましたね、がんばったんです、パイセンは」


よしよしと頭を撫でてくれる

また涙が出た


「でも、悪いのはぜんぶそいつです

パイセンは悪くないし、かのちんは強い女です

大丈夫っす」


「で、でも、、」


「退治しましょう」


「た、たいじ??」


「はい、パワハラで訴えるんです!」


「そんな、、こと、、証拠もないし、、」


「今から集めます」


「訴えるとか、、よくわかんない、、」


「わたしが弁護士を雇います」


「え?、、いや、、そんな、、」


「大丈夫です、パイセンのアイデアの写真集の売り上げを使えばお釣りがきますよ♪」


「そんなの、、だめだ、、」


「わたしがなににお金を使うのかはわたしが決めます

私の目を見てください」


「、、、」


下を向いてた顔を上げると

あめちゃんが強い眼差しでオレを見ていた


本気で言ってる

そう、感じた


「いいですね?」


「、、、」


「いいですね?」


「うん、、あ、ありがとう、、」


「ぜんぜん大丈夫です」


ニコッと笑ってくれる


「それでですね、パワハラのことはこれから調べるとして、とりあえずボイスレコーダーを渡します」


「ボイス?」


「はい、待ってくださいね

これっす」


あめちゃんがスマホを操作して画面を見せてきた

そこには手のひら大の機械が映っていて、ボイスレコーダーの文字がある


「これ、今から注文して明後日には届くので毎日持っていってください

それで、会社に着いたら録音ボタン押してください」


「えっと、、」


「それで、毎日帰ってきたらわたしが電話するので必ず出てください」


「あの、、なにを、、」


「そのときに、ひどいことを言われたなら、すぐにわたしが来ます

よしよししてあげますし、その録音データはわたしが保存します

パイセンは聞き直さないで大丈夫です」


「そ、そこまで、してもらうのは、、」


「わたしがしたいんです

させてください

ダメっすか?」


「え、いや、、ありがたい、、けど、、」


「ありがとうございます

嬉しいです」


優しい笑顔だった


「それと、かのちんと結木っちは、もちろん味方なんすよね?」


「うん、、」


「なら、2人からなるべく離れないでください

1人になると攻撃されるかもしれないので」


「う、うん、、」


「大丈夫ですか?できそうですか?」


「た、たぶん、、」


「さすがパイセンです、えらいです

じゃあ、今日はもう大丈夫ですよ」


あめちゃんは膝立ちになって、オレの頭を正面から抱きしめてくれる


「よしよし、がんばったがんばった、よしよし」


「う、、ぐすっ、、」


そんなことをされて、オレはまた涙が出る


「あ、ありがと、、う、、」


「いえいえ、わたしも、パイセンの力になれて嬉しいです」


しばらく、そのまま、あめちゃんに甘えていた

長かったような、短かったような

時計を見なかったからわからない


でも、この数日で、1番安らげる時間だった

やっと週末ですね。休みを楽しみましょう。

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