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第89話 パワハラ上司とトラウマ

「よし!よし!やるぞー!」


「あっくん大丈夫なん?」


「大丈夫!」


オレは会社の自席の前で立ち上がり腕をぐるぐる回して気合を入れていた

1時間後、上層部へのプレゼンがある


会議室での機材チェックは昨日やっておいたで、よっぽど大丈夫なのだが、そろそろ移動して準備しようということになっていた

課長は偉い人と話しているようで部屋にはいない


「行こっか!」


「せやね、いこかぁ」


のんちゃんと一緒にノートパソコンと配布用資料を持って会議室に移動する

本社の中にはビルがいくつかあるのだが、その中でも1番新しいビル

オレが入社したときに竣工した社長室があるビルにやってきた


「やっぱり、うちらのビルよりだいぶ綺麗やなぁ」


「そうだね!たしかに!」


エレベーターに乗りながら、のんちゃんと話す

地面にはふわふわの絨毯が敷いてあり、壁は木目の上品なシートが貼ってある


エレベーターも最新型のように見えた

社員証をかざさないと動かないシステムになっていた

10階を目指す


ウィーン


エレベーターのドアが開いたので降りて、ホテルのような廊下を進み、会議室に入る


会議室はなかなか広くて、真ん中に細長い円形のテーブルが配置されていた

20人は座れるだろう


そのテーブルの隣り、窓際のガラスは、床から天井までがガラスになっていて、10階からの展望はなかなか壮観であった

会社の敷地内どころか、最寄りの駅まで見渡せる


今日は観光じゃないので、細いテーブルの正面から右手にある発表社用のプレゼン机に移動してノートパソコンを設置する

プロジェクターをリモコンで起動して、ケーブルを差し込み、ちゃんと表示されるか確認した


「うん!大丈夫そうだ!」


のんちゃんの方を見ると、今日のプレゼン資料のコピーをテーブルに配っているところだった

まだ誰も来ていないが、ひとまず、全ての椅子の前に資料を配布する

残った資料は壁際に設置されているテーブル無しの椅子だけの上に置いていく


「今日何人くるんかなぁ?」


「課長曰く、20から30人って聞いてるけど」


「緊張してへん?」


「してるけど練習しまくったから大丈夫!」


「そう?ならええけど、がんばってな?

トイレいっとくんやで?」


「うん!そうするね!」


のんちゃんのアドバイス通り、トイレを済ませ、またプレゼン机に戻る

プロジェクターを指すレーザーポインターをカチカチやりながら、ポインターを出して、スライドを動かして、とシミュレーションしていた


そうしていると、会議の15分前くらいから続々と知らない人たちが入室してくる

偉そうなおじさんは真ん中のテーブルに、若手っぽい人は壁際の椅子だけのところに座っていった


そして、3分前、社長がやってくる、脇にはうちの課長がいた

社長はオレを一瞥するとコクリとだけ首を動かし細いテーブルの正面、1番遠いところに座る


やっぱりそこが社長の席だよね

ドンと構えていて、威圧感があった


ふぅ、、

心の中で深呼吸する


よし、全員揃ったのかな?

そう思い周りを見渡すと、ガチャリと扉があき、最後の主要人物らしき人が入ってきた


「っ!?」


その顔には見覚えがあった


「、、、」


その人は笑いながら、遅くなってすみません

と左右に座る人たちにヘラヘラしていた

まだ後2分ありますし、なんて返されてる


「、、、」


「あっくん?大丈夫?緊張しとる?」


近くに座るのんちゃんに話しかけられている


「、、、」


「あっくん?」


「、、、」


「それでは!皆様お揃いのようですのではじめさせていただきたいと思います!

今回、プレゼンを主宰させていただく、営業部広報4部の課長を務めさせていただいている結木です!

本日のプレゼンは、当社で活動中のVTuber、Kanonを更に世の中に認知してもらうべき企画のご提案、

そして、当社のお菓子の売上を一時的ではありますが、大幅に向上させるアイディアについて説明させていただければと思います!

それでは、うちの部署の新井から!

説明させていただきます!」


「、、、」


「新井くん!いいかな!」


「あ、、はい、、

そ、、それでは、、お手元の、資料を、、ご覧になりながら、お聞きいただければと、存じます

まずは、1ページ目を、、ご覧ください」


「あっくん??」


「、、、

本日、、ご説明するのは、当社、、VTuberの Kanonが、いかに当社のアピールに繋がるか、

ま、まずはそこから、、」


「新井くん?大丈夫かい?」


「え?、、あ、すみません、、」


「あはは、ちょっと緊張しているようですね

昨日までは完璧だったんですが、皆様の顔ぶれに本領を発揮できてないようです」


「ははは」


偉い人たちが笑っている

でも、なんでそうなってるいるのか分からなかった


「じゃあ、続けてくれるかな?」


課長に促される


「はい、、

当社のVTuber、Kanonが、いかに当社のアピールに繋がるかと、、言いますと、、

えっと、、

現在、世の中には、、VTuberが何万人もおりまして、、多大な社会的、、経済的な効果を、、はっき、、」


「なんだね?彼は体調でも悪いのかね?」


「うっ、、」


知っている声が聞こえてくる


「そ、それは、そうですね、いつもはこんな調子ではないのですが、、

新井くん?」


「だ、大丈夫、、です、、」


「あっくん?ホンマに大丈夫なん?」


気づけば、隣にのんちゃんが立っていた


オレは両手を机について、下を向いている

今にも倒れそうだった


「体調が悪そうなので説明は私が引き継ぎます!

新井くんは座ってていいからね!」


「で、でも、、」


目の前に課長がいた、ふらふらして状況がよくわからない


「いいから、こっちきて」


静かに窓際の椅子に誘導される


「失礼しました!では最初から!

弊社では昨年度からVTuber Kanonが活躍しているのは皆様のお耳にも聞き及んでいるかと存じます!

現在 KanonのYouTube登録者数は30万人を超え、当社公式YouTubeの5万人を大きく凌駕しております!

これは現在の世の中でVTuberの社会的認知度が高いこと、

さらには昨年度にコラボレーションしたディメンションコネクト様の影響が大きいからだと考えます

その根拠として--」


課長が話していた

オレの作ったパワポを使って

本当はオレがあそこにいるはずなのに

だめだ、頭が働かない

目をつぶりそうになったとき


ぎゅ


そっと、のんちゃんの右手がオレの左手を握る

その温かさで、なんとか、意識を手放さずにすんだ


「、、、」


会議はあっという間に終わった

なかなか好評だったようだ


しかし、退出するとき、みんながオレの方を見ていた

オレは立ち上がれない

課長は社長と話しながら出て行く


「あっくん、あっくん、終わったで」


「え?うん、、」


「大丈夫?」


「う、うん、、」


いや、、大丈夫じゃなかった


「久しぶりだなぁ?シンジン?」


「っ!?」


頭を上げると、知っている顔がこちらを見ていた

なにも言えない


「しっかり練習してきたのか?こんなメンツの前で無様だなぁ?シンジン」


「お、、ひさし、ぶりです、、磯部課長、、」


「課長じゃなく、部長だぁ、シンジン

上層部の役職くらい把握しておけ」


「す、、すみません、、」


「あっくん?」


「女連れとはいいご身分だなぁ?」


「はい?」


のんちゃんが噛み付く


「なんだ?」


「いえ、、」


初対面なんだろう、一旦やめたようだ


「まぁ、そのわけわからん新部署でしっかりやれよ、シンジン

これで終わりじゃないんだからなぁ

また、おまえの活躍見ててやるからなぁ」


「、、、」


「返事せんか!」


「は、はい!」


「ふっ、じゃあな、シンジン」


「、、、」


そいつは言いたいことだけ言って部屋を出ていった


「、、うっ、、」


「あっくん!?大丈夫?」


「気持ち悪い、、」


「トイレ!トイレいこな!」


「うん、、」


「う、、うえ、、」


ゆっくりでええからな


「うん、、」


オレはトイレの個室でのんちゃんに背中をさすられていた

吐いてはいないが、胃液は出てくるのでぺっぺっと唾を吐く


「どうしたん?こんなになって、、」


「、、、」


「また、今度でええから話してな?」


「う、うん、、」


結局その日、オレは定時を回る前に早退した

フレックス制度が導入されているので、特に手続きは必要ない


家に帰ってすぐに眠りにつく

なにも、考えたくなかった

「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

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