第60話 遊園地で復讐デート(前編)
「よ、よし、いくか、、」
水曜日、オレは有休をとって、ボッチで遊園地に来ていた
恥ずかしい、、そして寂しい、、
しかし、オレには目的がある、あめちゃんに復讐するためだ
そのために、今度この遊園地に誘う計画を立てているのだ
この遊園地はめちゃくちゃ怖いと有名なお化け屋敷があって、それに絶叫系もたくさんある
それらを先に1人で何度かトライして慣れておく、
そして、あめちゃんと来た日はオレだけ余裕、あめちゃんはガクガク、というプランだ
そんな様子をみてマウントを取ってからかってやるのだ
楽しみでしかない
完璧だ
、、完璧なのか?
自分の穴だらけのプランに不安を覚えつつも自分を洗脳して完璧だと言い聞かせる
、、ちなみに、水曜という週のど真ん中に来たのは、なるべく人が少ない日が良かったからだ
だって、ボッチで来てるのを後ろ指さされる確率は少しでも下げたいじゃんね、、
「よし!」
オレは再度気合を入れて、孤独なボッチ遊園地に踏み出した
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「あっくん、なんか今日疲れてる?」
翌日、のんちゃんからさっそくツッコまれる
昨日の遊園地の後遺症だ
「いや、、ちょっと夜更かししちゃって、、大丈夫だよ」
適当に誤魔化しておく
「そうなん?ちゃんと寝んとダメやで〜」
「は〜い」
仕事に若干、影響は出たが、遊園地の下見は完璧だ
さぁ、あめちゃんを誘うとするか、なんて送るか、毎回からかわれてるんだ、ちょっと意外な感じでもいいかもしれないな
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自宅に帰ってあめちゃんにLINEする
あめちゃん、今月の週末で空いてる日ってある?
月末の土曜なら空いてるっすよ
なんすか?
デートしようぜ
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月末の土曜日、遊園地復讐デート当日
オレは、この前のこと様とのデートと同じようにレンタカーを借りて、あめちゃんを迎えに来ていた
こと様とは違うところだったが、こちらも家賃が高そうな都内の一等地のタワマンだ
レンタカーでロータリーに停めるのを少し戸惑ってしまう
「今日は冷静に、今日は冷静に、」
可能な限りあめちゃんを褒めて照れさせて、からかい返す
車の中で自分に言い聞かせて、車を降りる
助手席側に立ってから、あめちゃんに到着したことを連絡する
しばらくすると、エントランスの出入り口から、可愛い女の子があらわれた
白いブラウスにおっきな黒のリボンを胸元につけていて、
黒いふりふりのスカートを履いている
セーラー服っぽいデザインの服で、ゴスロリ調でもある
控えめに言ってめっちゃ可愛い
「ちゅぱっ、、
こんちわっす、あらあらパイセン」
「やぁ、こんにちは
今日もとっても可愛いね」
なるべく自然に、しかし余裕をもって対応する
「、、、なんすか?
なんかいつもと違うっすね?」
「そうかな?」
「そうっすよ、出会い頭に可愛いとか、、
しかもなんか余裕顔なのが、イラッときます」
「そうかな?いつもそう思ってるんだけどね
今日の服装もあめちゃんに似合ってると思うよ
セーラー服っぽくて可愛い
あっ!もしかして、オレが写真集で好きなページを教えたから、それに合わせてくれたのかな?」
適当なことを余裕ぶって言ってみる
「、、、まぁ、、そうですけど、、
あらあらパイセンが、、好きかと思って、、」
、、は?
やめろよ、今日からかってくのはコッチだってのに、、
「そ!そっか!ありがとな!オレの好みに合わせてくれる あめちゃんが好きだよ!」
「っ!?な、なんなんすか、、
からかってるんすか?むかつくっす、、」
言いながら、オレの脇を通り過ぎようとする
「あっ!オレが開けるからね
どうぞ、お嬢さん」
助手席のドアを開けて招き入れる
「、、、それは、やりすぎっす」
あ、お嬢さん呼びは違うか
しかし、ごめんとは言わない、いつものオレとは違うのだ
「どうぞどうぞ」
ニッコリ微笑む
「、、、」
あめちゃんは黙って車の中に入って行った
「じゃあ、閉めるね?」
「はい」
断ってからドアをしめ、運転席に向かう
「今日は時間作ってくれて、ありがとうね」
「いえ、今日はなんもなかったので、大丈夫っすよ
それで、、今日は、なんなんすか?」
「ん?だから、デートだよ?LINEで伝えたじゃん」
「、、どういうことっすか?からかってるんですか?」
「いや?オレがあめちゃんとデートしたかっただけだよ?」
「そ、、そうすか、、」
あめちゃんが少し赤くなる
おぉ、いつもと違って大人しいし、照れてる
よしよし、順調だ
「じゃあ、出発するね?」
「はい」
あめちゃんの同意を得たので、遊園地に向けて車を走らせた
車内では最近の配信についてお話しした
この前のGTAのこと様との絡み、めっちゃ笑ったよ、とかそういう話だ
車を1時間半ほど走らせると遊園地に到着した
「おぉ〜、ここがかの有名な鬼畜遊園地っすか」
「そうそう、怖いアトラクションがたくさんあるんだよね」
「そうみたいっすね、あらあらパイセンは来たことあるんすか?」
「ないよ?」
ウソである
「あめちゃんは?」
「ないっすね〜
気になってはいたんす
だから、連れてきてもらえて嬉しいっすよ♪」
ニコッと微笑んでくる
はぁ?かわいいじゃねーか、、今日はどうしたんだよ、、
「そっか、オレもあめちゃんと来れて嬉しいよ」
微笑み返してやった
「、、やるっすね、、」
や、やはりトラップだったか、、
「なにがかな?」
「いえ、、あ〜、じゃあ早速いきましょうか!」
「そうだね!」
オレはウキウキであめちゃんを引き連れて遊園地に入場した
「まずはなにから乗りましょうかねー!
パイセンは苦手なものとかありますか?」
「ん?ないよ?」
こいつ、まずはオレが苦手なものから乗ろうというのかね?
いい度胸じゃないか、そのケンカ買ったよ
「またまた〜、前ジョイポリス行ったとき、お化け屋敷怖がってたじゃないすか〜」
ニヤニヤと煽ってくる
「あれは演技だよ?あめちゃんに合わせてあげてたんだ」
「いやいや、さすがにそれはムリあるっすよ
あんなに怖そうにしてたのに」
「そうかな?じゃあ、それで試してみる?」
オレはこの遊園地の名物である、スーパー怖いお化け屋敷のポスターを指差して提案する
「こ、これっすか?
、、これって脱出するのに1時間くらいかかるやつっすよ」
「そうなの?まぁ大丈夫じゃない?」
「いやいや、ホントは怖いんでしょ〜?パイセ〜ン」
オレのことを覗き込んでくる、あめちゃん
「怖くないよ?あめちゃんこそビビってるの?」
「、、、べつに、ビビってませんけど?」
「なら行こっか」
ビビってるあめちゃんの同意を得ないまま、お化け屋敷目掛けて歩き出す
「あ!ちょっと!ホントは怖いんすよね!」
「いやぁ〜?」
本音ではまだ少し怖い、でも事前に2回も入ったから、どのポイントで驚かせてくるのかは覚えている、だから大丈夫なはずだ
あめちゃんを従えて、お化け屋敷の前にきた
廃病院のような見た目のそのお化け屋敷は、外観からしてめちゃくちゃ怖そうだ
「これ、、ホントに入るんすか?」
「うん、楽しそうじゃん」
「そ、そうすか?わたしは、、その、、気が進まないっすね〜」
「そうなんだ?あめちゃんって意外とビビりだったんだね?」
「むっか、舐められたもんすね、このあめだま様を」
「なめてないよ?」
「後悔しても知らないっすよ?」
「大丈夫だよ」
「ふ、ふん!じゃあ行きましょう!行ってやるっすよ!」
ふふふ、やっと観念したか
言っとくけど、めちゃくちゃ怖いからな、途中でリタイアしたいと泣きついてくるのが楽しみだぜ、、へへへ、、
こうして、うまいこと、あめちゃんをのせてお化け屋敷に誘導することができた
入り口をくぐると、限界になったらリタイアドアから外に出れます、という張り紙がそこら中に貼ってあった
「あめちゃんはリタイアなんてしないよね?」
「え?、、あ〜、もちろんしないっすよ
当たり前じゃないすか、最後まで行くっす」
「そっかそっか、ならよかった、がんばろうね」
よし、言質はおさえた
そして、少ししたらお化け屋敷のアトラクションに入場となった
「、、、ぱ、パイセン、、」
「なぁに?」
「こ、怖くないんすか?」
「怖くないよ?」
入場してから5分も経っていない位置で、あめちゃんが立ち止まって質問してきた
よし、やはり怖いようだな
「ま、またまた〜、、」
「大丈夫だって、ほら行くよ」
よし、あの角を超えたところで、血まみれの患者が襲いかかってくる
あめちゃんの肩を押していく
「や、、やめてくださいっす、、」
「なんで〜?怖くないんでしょ?」
トンッと肩を押す
「怖くないですけど、、ぎゃー!!」
あめちゃんがのけぞって、オレの方に走り寄ってきた
そして、オレの後ろに隠れる
血まみれの人がオレの前まできて、オレたちをじっくり眺めてから帰っていった
「はぁはぁはぁ、、」
「どうしたの、こわいの?あめちゃん?」
「いや、、べつに、、」
「まだ5分も経ってないよ?大丈夫かな?無理かなぁ〜、あめちゃんには」
「そんなことないっす!余裕っすよ!」
「そうだよね!じゃあ行こっか!」
「ま!待ってくださいっす!」
あめちゃんの静止を聞き入れずにズンズンと先に進んだ
こうして、何度目かの驚かせてポイントを通過して、半分くらい進んだところだろうか、そこであめちゃんに変化があった
「、、こわいっす、、」
「なにかな?」
「めちゃくちゃ、、こわいっす、、」
「そっかそっか、余裕じゃなかったの?」
「ウソです、、ホントはこわかったんす、、」
さっきの死体安置所で、死体が這い出てきたのがよっぽど怖かったらしい
涙目で震えていた
「そうか〜、強がっちゃったんだね?かわいいね」
「、、いじわるっす、、なんなんすか、今日のパイセン、、ホントはパイセンも怖いくせに、、」
「オレはまだ余裕だよ?」
だって予習済みですから
「、、り、りた、、」
リタイアとか言い出しそうだ
「まさか!最後まで行かないなんて言わないよね!?
あのあめちゃんが!リタイアしないって豪語してなかったっけ!?」
「くっ、、」
ほほほ〜、悔しそうな顔がいいですな
それが日頃のオレの気持ちですよ
「も、もちろん、、最後まで、、行きます、、」
よし!強がりおつ!
「じゃ!行こっか!」
「あっ!パイセン!」
「なにかな?」
「、、手、、繋いでもいいですか?、、こわくって、、」
服の袖をぎゅっと掴まれて、うるうるした目で懇願される
、、くっ、演技なのか、本音なのか、、とにかくそんな顔されたらドキドキしてしまう
「も、もちろんいいよ?はい、どうぞ、怖がりのあめちゃんさん」
オレはなんとか煽り気味に左手を差し出した
「、、ありがとうございます、、」
特に悪態もつかず、素直に手を握ってきた
ゴクリ、、弱ってるあめちゃん、、いいね!
「じゃ、行こうか」
「はいっす、、」
こうして、お化け屋敷の続きが始まった
このお化け屋敷、もちろん最後までめちゃくちゃ怖い
なんなら最後の出口付近が1番怖いまである
あめちゃんは、ゆっくりだが、なんとかオレについてきて、最終ポイントまでたどり着いた
「もうちょっと、、もうちょっと、、」
さっきからあめちゃんはそれしか言ってない
そしてオレの腕にしがみついている
ぽにょぽにょの柔らかいものが当たっていた
、、幸せだ
「きっともう少しだよ」
「はいっす、、」
そして1番怖い最終ポイントに足を踏み入れた
「ひっ!、、いやー!!!」
ガタッ、と音がしたかと思うと、どこからともなく血まみれの医者、看護婦、患者たちが大量に襲いかかってくる
あめちゃんが絶叫して、オレに抱きついて目をつむる
ガクガクと足を震わせて、動けなくなってしまった
周りをお化けたちに囲まれてしまう
「大丈夫だよ?」
よしよしと頭を撫でてみる
「ふぅふぅ、、こわい、こわい、、」
「目開けてみてよ」
周りにはまだお化けたちがいた
「イヤっす!!気配を感じるっす!!」
「よし、おにいさんがおんぶしてあげるね」
そう言ってしゃがんでみた
「、、、」
素直に背中に抱きついてくるあめちゃん
おぉぉぉ、相当弱ってるな
まぁこの辺にしておいてやろう
「目、つむってて大丈夫だよ」
そう声をかけてから、しっかりとおんぶして、歩き出した
お化けたちは道を開けてくれる
間も無くして出口にたどり着いた
「あめちゃん、あめちゃん、ゴールしたよ?」
「ぐすっ、、こわかった、、」
鼻をすする音が聞こえてきた、むふー!勝ったな!
「おろして大丈夫?」
「もうちょっと、、」
「、、わかった」
こ、ここまで弱るとは、、いいもの見れたな
10分ほどおんぶしたまま、お化け屋敷の出口付近をうろうろしていると
「もう大丈夫っす、、」
とあめちゃんが言う
それを聞いて、あめちゃんを背中からおろした
「怖かったよね?よちよち、あんまり調子のっちゃダメでちゅよ?」
また頭を撫でてみた、もちろん煽るのが目的だ
「、、、パイセン、頼りになるっすね」
「え?」
「カッコよかったっす、、」
ピタッ
涙を溜めた目で見つめられて、頭を撫でる手を止める
なんか、、思ってた反応と違う、、もっと悪態ついてくると思ったのに、、
か、かわいい、、
「そ、そうかな?あれくらい余裕だよ〜」
目を合わせれなくなって、空を見ながらそうつぶやいた
「、、ちょっと休憩してもイイっすか?」
「もちろんイイよ」
「ありがとうございます」
要望を聞き入れ、少し休憩するために、近くのカフェに向かうことにした
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