第37話 子どもの頃からの恋
--鈴村歌音視点--
あの日、
あっくんが泥酔した うちを家まで運んでくれた日
うちは大泣きした
あっくんが玄関から離れていくのを確認してから、すみれに抱きついて大泣きしたのだ
すみれは最初あわてた様子だったが
少しして
あの男!
と怒りだしてしまった
ちがうちがう
と、うちは首を振りながら泣くことしかできなかった
そんな うちをすみれはずっと抱きしめてくれた
うちはあっくんが好きだ
子供のときのことだろ、と言われそうだが、今でも大好きなのだ
だから、あの ひまちゃんとかいう人に、あっくんが色々言ってたのを聞いて
すごくつらかった
実は、あっくんに背負われて走っていたあたりから、意識があったのだ
数年ぶりに再会した大好きな人
でも、
その人は自分のことなんか意識してなくて、、
他の人のことが好きで、、
そう考えるとすごく悲しくなる
でも、うちの歌を聞いてすぐに思い出してくれて、
うちの歌を大好きだって言ってくれた
あっくんはホントに素敵だなって
今でも思う
一晩泣いてから
のそのそと起きてきて、すみれにありがとう、と伝えて
ひまちゃんという人のことを調べた
花咲ひまわり
カチカチ
その人は、コラボしたときと同じで、天真爛漫で、明るくて、動画を見る人を元気にする力があると思った
「そっか、、
あっくんこういう人が好きなんだ、、
うちも頑張れば好きになってもらえるかな、、」
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休み明け、うちは出社のために玄関に立ち
「よしっ!」
と気合を入れる
VTuberについては、まだよく分からないけど、これから頑張る強い動機ができた
「がんばるぞっ!」
両手でグーを作る
「いってらっしゃい!」
すみれが右手でイイねの形を作って見送ってくれる
「うん!いってきます!」
こうして、うちの戦いがはじまった
--新井新人視点--
ひまちゃんと夜道でわかれたあと、
オレは歩いて家まで帰った
2時間くらいかかっただろうか
今日起きたことを頭を冷やして考えたかったからだ
のんちゃんと一緒に飲んでいたところをひまちゃんに見られる
その様子をみて、ひまちゃんがすごく怒ってくれる
これはもう勘違いとかじゃなく、嫉妬してくれたんだと思う
、、、きっとそうだと思う
このまま怒らせておくと、もう会えなくなると焦って、
必死になって、
ひまちゃんに思いを伝える
なんか色々恥ずかしいことを言ってしまった気がする
冷静になると、街頭の人達がどんな反応をしていたのか気になってくる
そのときは必死で何も見えてなかったけど
でも、叫んだ甲斐あって、ひまちゃんの誤解が解けて仲直り
ひまちゃんと一緒にのんちゃんを送り届ける
ひまちゃんに「もう少し待っててほしい」と言われて了承する
まぁオレから告白したみたいなものだし
答えは待っててね
ってことだと思う
でも、ひまちゃんのセリフを思い出すと、まったく脈がない、という様子ではなかったように思う
、、、たぶん
いや、まさか、こんな展開になるなんて、、
そりゃひまちゃんのことは大好きだよ
でも、付き合いたいとか、、
いや、付き合いたいよ?
でも、アイドルと付き合うってなんか違うじゃん
触れてはいけないものだよ、偶像って
ぐしゃぐしゃと頭をかく
だから、付き合ってとか、告白するつもりはなかったんだよ、ぜんぜん
そもそも恐れ多いし、
上手くいくなんて思ってないし、
嫌われたら怖いし
でも、今日話したこと、起きたことに、なにも後悔はなかった
オレが告白することになったけど
ひまちゃんから距離を置かれることはなく
「またね」
って言ってもらえた
ひまちゃんとまた会うことができる
それだけで十分だ
ここまで結論づけて、それ以上深く考えるのはやめることにした
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週明け、会社にて
「あっくん!おはよう!」
出社すると、のんちゃんが前のめりに挨拶をしてくれた
「あ、おはよう
金曜日、飲み会のあと大丈夫だった?」
「うん!大丈夫!
ごめんね、送ってくれたみたいで
すみれから聞いたよ
あっくんが運んでくれたって!」
「あールームメイトの人だよね?
そっかそっか、なにごとも無くてよかった」
「うん!迷惑かけてごめんね!
それにありがとう!
あっくんは頼りになるなぁー!」
「う、うん?
どういたしまして?」
なんだか、のんちゃんのテンションが高いような気がする
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週末
「あっくん!
今日とか予定あるかな!
もし良かったらまた飲みにいかない!?」
「はははっ
また潰れるんじゃない?」
「こ!今度は大丈夫やから!」
「ホントかなー
んーまぁでも、今日はやめておこうかな
最近、残業続きで疲れたし
仕事のキリがいいところで、結木課長も誘って皆で行こうよ」
「う、うん、、、
わかった!また誘うね!」
「うん、ありがとう」
残業で疲れてるのは本当だが、飲みにいけないほどか?
と聞かれるとそうでもない
ただ、ひまちゃんとの一件があって、またすぐに飲みに行こうという気になれなかったのだ
のんちゃんには悪いけど、またの機会にしようと思う
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