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第15話 歌姫は幼馴染

カタカタカタ


ガチャ!

「やー!おつかれおつかれ!」


「?あ、おつかれさまです?」


PCの設定をあらかた終えたころ、知らない女性が入ってきた


「キミが新井くんだね!」


そういってオレに向き合う


「あ、はいそうです」


「あー!ごめん!ごめん!

私がこの部署の課長の結木だよ!

よろしくね!」


「あ!こちらこそよろしくお願いします!」

女性の正体がわかって慌てて席を立って頭を下げる


「いやいや!そんな畏まらなくていいよ!

ラフにいこう!ラフに!

ところで、2人はもうスタジオは見たのかい?」


「スタジオですか?いえ、まだ見てないです」

おそらく、ウチの会社で配信するための部屋のことだろう

スタジオというとなんだか大規模なイメージが思い浮かぶ


「そっか!

じゃあまずはそこを見に行こう!」


「あ、はい!わかりました!」


自分が課長のいる入口に近づくと、鈴村さんも席を立って後ろをついてきた


「じゃあいこっか!」


エレベーターとは反対側に向かって廊下を歩く、突き当たりを右に曲がると観音開きの鉄製の扉があった

とくに施錠されているわけでも無いようで課長はその扉を開ける


「わぁ、、」

鈴村さんが声をあげる


扉をくぐるとそこにはだだっぴろい空間が広がっていた

倉庫のような空間にはグリーンバックの撮影スペースと防音室?のような箱型の部屋が設置されていた


「これは、、すごいですね」

想像していたよりも、ずっとスタジオだった

イメージでは、普通の一室でパソコンとウェブカメラだけ置いて配信するのかな、と思っていたので驚きである

さすが大企業というところか


「だよね!

ここまでしっかりしたものを用意してくれるなんて社長も本気ってことかな!

テンションあがるわー!」


「あの、課長もVTuberお好きなんですか?」


部屋に入ってきたときから楽しそうにしていたので気になって聞いてみる


「もちろん!

私は、あめちゃんが大好き!

キミは!?」


あめちゃんというのは、甘梨あめだま、というVTuberでひまちゃんと同じディメコネ所属だ

こと様の1つ上の3期生で、3期生の中では1番登録者数が多かったはずである


「あめちゃん推しなんですね!

自分はひまちゃん推しです!」


「おぉ!ひまちゃんか!同じディメコネだね!

箱としても推してるからよく見てるよー!

いいよねぇディメコネ!みんな可愛い!」


「ですよね!

あっ!鈴村さんは誰推しなの?」


「、、いえ、わたしは特には、、」


「あー、そうなんだ、ごめん、、」


「いえ、、」


同志を見つけたことでテンションが上がってしまい、変な空気になってしまった


「あ、でもYouTubeはよく見てます、、

音楽関係が多いですが、、」


「そ、そうなんだ、、」


「、、、」


「、、、」


パンッ!

「よし!それじゃ防音室のテストも兼ねてKanonちゃんに歌ってもらおうか!」

両手を合わせて鳴らしながら課長がそう言った


Kanonちゃん?

だれのことだろう?


「え、、今からですか?」


「そうそう!せっかくスタジオに来たんだしね♪」


鈴村さんが戸惑っているように見える

そして何故かオレの方をチラッと見る


「ではいこー!」

そういって防音室に向かう課長にオレたちはついていく


防音室の扉を開けると

歌唱スペースに加えて見学スペースもしっかりわかれている構造だった


広いスペースではないものの、それぞれ2、3人が入ってもまだ余裕があった

見学スペースには機材がたくさん置いてあるが、なにがなにやらよくわからない


「じゃ、Kanonちゃんはアッチのブースね!」

課長は歌唱スペース?の方を指差してそう言う

どうやら、ブースというらしい


「私と新井くんは、コッチのコントロールルームね!」


どうやら見学スペースのことをそういうらしい

勉強になります


あの、Kanonちゃんて?

と聞こうと思っていたら


「、、わかりました」


と言って鈴村さんがブースに入っていく


「あのKanonちゃんって鈴村さんのことなんですか?」


「え?そうだよ?知らなかったのかい?

彼女が弊社の大型新人VTuber!

Kanonちゃんさ!」


Kanon、、

鈴村さんがうちのVTuberというのももちろん驚いたのだが、どこか聞き覚えのある名前にオレは首を捻っていた


「Kanonちゃん!曲はあれでいいよね?」

課長がボタンを押しながらマイクに話しかけていた


ブースにいる鈴村さんがコクっと首を縦に振る


オレが記憶をさかのぼっていると、音楽が流れはじめたので、一旦意識をブースにうつす

曲はオレも知ってるボカロ曲だった

数年前にニコニコ動画で流行ってから、何人ものVTuber、YouTuberがカバーしている人気曲だ


ただ、この曲って結構難易度高いって言われてなかったっけ?

そう思い出していると、鈴村さんが最初のフレーズを口にした


〜♪


ゾクっ


「、、、」


思わぬ歌声に鳥肌がたつ


「、、、」


何も言えないまま、しばらく聴き込んでいた


「、、彼女すごいでしょ?」


「え?」

課長にそう言われ、自分に話しかけられていることに気づく


「え、ああ、、はい、、

すごいです、、

いや、なんて言えばいいか、、」


「だよね、私も最初聞いたときは何も言えなかった

ずっと聞き惚れちゃうのさ、Kanonちゃんの歌声は」


歌声、、

自分はそのあたりには全然うといが、鈴村さんの歌唱力がプロレベルだということは分かった

学生のころは何度か好きなアーティストのライブに行ったこともあり、プロの生歌のすごさを知っていたからだ


「彼女、プロ志望だったんでしょうか?」

課長に聞いてみる


「ん〜そのあたりは本人から聞いてないけど、動画投稿はしていたみたいだよ?」


動画投稿、、なるほど、、、

これだけの歌唱力があれば有名なのでは?と思ったが、歌ってみた動画は星の数ほどあるし、どうなんだろう


「この曲って、たしかニコニコで歌い手がカバーして有名になりましたよね?」


「おぉそうなのかい?新井くんはなんでも詳しいね〜」


課長が知らないことを確認したところで、曲が終わった


鈴村さんがお辞儀をして、ブースから出てこちらの部屋に入ってくる


「、、あの、、どうでしたか?」


「さいっこう!だったよ!Kanonちゃん!

ずっと聞いてたいくらいさ!」

課長は見るからにテンションが上がっていた


「、、あの、、、」


「え?あぁ!もちろんすごかったよ!」

考えごとをしていたので感想を求められていることに気付かなかった


「、、、そうですか、、」

鈴村さんが暗い顔をする


「えっと、、もし間違ってたらごめんなんだけど、、」


オレは昔の記憶を辿りながら話し出す

そう、彼女の歌声はもちろんすごい、でもそれよりも気になっていることがあった

なぜか聞き覚えがあったのだ


「昔、あー、えっと幼稚園くらいのことなんだけど、仲良くしてた友達がいて、、

なんかそのときの友達の歌声をなぜか思い出してて、、」


鈴村さんが手を胸の前にあててキュっと握る


「えと、鈴村さんの歌はホントすごくて、昔のオレの中の記憶とはぜんぜん違うはずなんだけど、、

なぜかあのときの歌声と似てるなー?って思ってて、、

あの、鈴村さんの下の名前って?」


「、、、歌音(かのん)です」

下を向いていた鈴村さんが今はオレの目をジッと見ていた


「かのん、、かのん、、

のんちゃん、、」


「あの、昔のんちゃんってアダ名で呼ばれてなかった?

あ!ごめん!変なこと聞いてるよね!

違ったら大丈夫だから!」


なんだか自分がかなり気持ち悪いことを言ってることに気づいて慌てて謝る

これじゃまるでナンパみたいだ


「、、、」

鈴村さんはしばらく真剣な顔をしていたが、

「ふぅ」

っとため息をついたあと、ニコっと控えめな笑顔に変わる


「やっと気づいたんだ

あっくん

久しぶり」

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