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第158話 誰もいない脱衣所、、しかし、、

ガチャ


「はぁはぁ、、ごくり、、」


課長から逃げて自室に戻ってきたオレは、改めてあのメモのことを思い出す


急足で階段で5階まで登ってきたから少し息が上がっていたが、そんなことはどうでもいい


「ふぅー、、

えーっと、翡翠の湯ってどこにあるんだろ、、」


オレはまず、部屋に備え付けられている館内マップをチェックすることにした


「ふむふむ、、最上階の10階か、、なるほど、、」


---------------------------------

17時に貸切風呂、翡翠の湯、へ来て

---------------------------------


チラリ


備え付けの時計を確認する


16:13


「、、、ゴクリ、、

い、行かないっていうのはさ、、失礼だよね?

だって、その、混浴どうこうは置いといて、レディに呼び出されたんだからさ?

行くのはあたりまえじゃんね?

うん、行く行く、誰でも行くよね!」


貸切風呂に足を運ぶために、一人で言い訳を並べ立てる


「、、、い、行って、要件だけ聞こう、、

うん、、そうしよう、、混浴はしない、混浴はしない

そもそも!混浴が前提みたいになってるけど!違うかもだし!」


はぁ?じゃあ、なんで貸切風呂に呼び出したん?w


「うるさい!やめろ!

オレの脳みそ!このポンコツが!

はぁ、はぁ、、

みんなはアイドルなんだ

そ、そんな、邪なことしないんだ、、

え、えっちな目でみちゃダメなんだ、、」


いまさらなに言ってんの?おまえwww

さんざんw


「うるせー!!」


オレは自分自身と戦っていた


こういうときは天使な自分と悪魔な自分が言い争うはずなのだが、

オレの脳内には悪魔しか住んでいないようだ


誠に遺憾である


「よ、よし、、準備しとくか、、

いや、、もう出よう、、

あれだよ、、脱衣所でばったり遭遇とかしたらさ、、恥ずかしい思いさせちゃうかもだし、、ごくり、、」


脳内の悪魔をおっぱらって、オレはタオルを持って自室を出た


なぜタオルを持っているのか


あれだけ混浴しないとか言ってたくせに


その矛盾に気付いたのは、しばらく経った後であった



「こ、ここが、、翡翠の湯、、」


オレは貸切風呂、翡翠の湯、と書かれた木製の看板の前で立ち尽くしていた


テーブルほどもある木製の看板が扉の上に立て掛けてあり、翡翠の湯、と書道で書いたような文字で彫り込んである


目の前の扉は、格子状に木が組んであって自動扉のようだった


扉の横には、

-----------------------------------------------

ご予約いただいたお客様のルームキーで解錠します

-----------------------------------------------

と書かれている


「ほ、ほほう?」


ピピ


オレは予約した覚えがないルームキーをかざしてみる


すると


ウィーン


「あ、あいた、、ひらけごま、、」


これから起きるイベントに脳みそがとろけはじめていたオレは、

無意識に意味不明なことを口走りながら、その扉の向こうへ足をすすめる


扉の先には、靴を脱ぐ玄関のようなスペースがあったので、まずは靴を脱ぎ下駄箱にしまう


そして、もう一枚の扉を開け放った


「あ!?」


この向こうって、もしかしなくても脱衣所だよな!?

誰かいたら大変エッチな展開に!?


そう思ったがもう遅い、目の前には脱衣所が、そして、、


「だ、、誰もいない、、

ざんね、、いやいや!!よかったよかった!

、、、ははは!」


なぜか1人、脱衣所で笑う成人男性

ほぼ変質者である


「えーっと、、ど、どうすれば、、」


キョロキョロと周りを見渡す


脱衣所の左手には、脱いだ服を入れるための棚があり、

右側には磨りガラスの扉、向こうが温泉なのだろう


「ふーむ、、」


棚の中を確認するが誰かの服が入ってる、ということはない

つまり、手紙の主が先に温泉に入ってらっしゃる

ということはなさそうだ


「じゃ、、じゃあ、、」


トラブルが起きそうにないと判断し、気になったので磨りガラスの扉を開けてみた


「おぉ〜」


扉の先には、正方形の木枠で囲われた純和風の浴槽と、その先には自然豊かな山々が広がっていた


開けた先は露天風呂だったのだ


「さすが10階、いい景色だな〜」


ガラガラガラ


お風呂の中を確認し、一旦扉を閉める


スマホをポケットから取り出して時間を見ると16:26だった


「、、うーん、まだ30分以上あるな、なにしてよう」


メモに書かれていた約束の時間は17時だ

脱衣所でやることなんて特にない


「んー、まぁゲームでもやっとくか」


オレはひとまずスマホのアプリを開いて時間を潰すことにした



17:00


「ごくり、、」


スマホの時計は約束の時間を告げていた


扉に向かって正座するオレ


「だ、だれがくるのかな、、どきどき、、」


17:16


「遅れてるのかな?」


ま、まぁ、いろいろ準備があるよね、、いろいろ、、


17:48


「、、いたずら?」


18:13


「、、うん、、いたずらだな、、はぁ、、」


約束の時間から1時間が経過して、やっとオレはからかわれていたことに気が付いた


「はぁ、、そりゃそうだよな、、

みんながこんなことするはずなんもん、、」


なんだか残念そうにしている気もするがそんなことはない、そんなことはないのだ


「夕食って19時だっけ、、

まだ時間あるな

せっかく来たんだし、ひとっ風呂浴びてくか〜」


しょんぼりしたオレは、ひとり言を呟き、服を脱いで温泉に向かう


ガラガラと磨りガラスの扉を開け、最高の景色を楽しむことにした

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