第137話 湯煙ハプニングの予感
カポーン
「、、、」
「、、、」
カポポーン
「、、、」
「、、やっぱり、、」
「へ?」
「待ち伏せ、、してたんでしょ?」
「へ?」
オレの目の前には、配信でよく知っているあの子がいた
カポーン
温泉の湯煙の中
一糸纏わぬ姿でそこに立っていた
オレは湯船に浸かりながら、呆然とその姿を見る
その子は、驚いた顔をしたあと
自分の身体を両手で隠し
今は顔を真っ赤にしている
まずい、なにか言い訳しないと、
でも、なんて?
オレはこれからはじまる修羅場を想像しながら、
でも、目の前の美しい光景から目を逸らせずにいた
・
・
・
ブブブブ
ポチ
「はい、もしもし」
「ちわっす、むっつりパイセン」
「いきなりご挨拶だね、あめちゃん」
週末、オレは自宅であめちゃんからの着信をとっていた
課長がディメコネの皆さんを社員旅行にお誘いしてから数日後、
二宮さんからスケジュール調整できるメンバーで参加させていただきます
と連絡があった
つまり、現時点であめちゃんは社員旅行のことを知っているはずだ
「だって、わたしの浴衣姿がどうしても見たいから誘ってきたんすよね?」
「ちがうよ?」
「またまた〜、強がらなくっていいっすよ〜
むっつりパイセン」
「そのあだ名だと、オレの要素皆無なんだけど」
「素直になったらいつものあだ名に戻してあげるっす」
「、、うーむ」
「なんすかー?」
「あめちゃんだって、オレと旅行行きたいんでしょ?」
「はい、行きたいっす」
「、、ずるいっす」
素直に肯定されて恥ずかしくなる
「ふふ、それくらいの挑発じゃあ、もう動じませんよ〜」
あめちゃんを照れさせようとしたが失敗したようだ
「うん、まー、、みんなと旅行楽しそうだなって思って
課長をそそのかしました」
「ま、そうでしょーね〜
で、わたしの浴衣は?」
「見たいっす」
「よくできました♪
でも、遅かったので、ご褒美はあげません」
「な、なるほど、、飴と鞭女っす?
飴だけくれるって言ったのになぁ〜」
「およ?ことに言ってたの聞いてたんすね
も〜、しょうがないなぁ〜
パイセンは甘えん坊ですからね〜
なら、浴衣姿のあめだま様とツーショット券をあげちゃうっす」
「あ、ありがと」
「あれ?もっと喜んでほしいっす〜」
「あれだよ、人間嬉しすぎるとリアクションが死ぬんだよ」
「ふーん?ま、いいっすけど
なんか物足りないので、旅行のときにたくさん弄ってあげますね♪」
「、、弄り返してやるし」
「かかってこいっす♪」
「てか、つまり、あめちゃんは来れるってことなの?」
「もち行くっすよ
あれ?まだ聞いてませんでした?」
「うん、来れるメンバーで参加します、とだけ聞いてた」
「そうすかそうすか
なら、よかったっすね?
わたしが来れて」
「うん、お仕事忙しいのにありがとね
あめちゃんが参加してくれて嬉しいよ」
「、、むぅ、素直に言われると恥ずかしいっす、、」
「かわいいやん」
「や〜め〜ろ〜」
「ははは、とにかく、参加してくれてありがと
楽しみにしてるよ」
「こちらこそっす〜」
あめちゃんとしばらく会話を楽しんだあと、電話を切り、
またYouTubeの配信視聴に戻った
画面の中ではひまちゃんが初挑戦のApexに苦戦している
初心者のひまちゃんとFPS神プレイヤーのあめちゃんを比べるのは申し訳ないけど、
こうして見ると、あめちゃんのプレイとは天と地の差だった
やっぱり、あめちゃんって、めちゃくちゃ上手いんだな、と改めて感心する
でも、ひまちゃんが楽しそうにゲームをしてる、それだけでオレは幸せだった
初動死しまくって、えんえん言いながらも、次はがんばるぞー!と張り切ってるひまちゃんをオレはニコニコしながら、眺め続けた




