第133話 コラボ商品のお披露目会で忍び寄るマゾからの視線
ディメコネと夢味製菓の公式YouTubeチャンネルでコラボが発表されて1ヶ月後、
明日はついにコラボ商品が店頭に並ぶ日だ
ガラガラガラ
「新井くん、大丈夫そう?」
「はい!」
「手伝おうか?あっくん?」
「ううん!軽いし台車だし大丈夫だよ!」
「じゃあ行こっか!」
「はい!」
オレたちは、コインパーキングに停めた社用車からダンボールを2つ取り出して台車にのせ、
それを運びながら歩いていた
オレが台車を引いて、2人が前方を注意しながら歩いてくれている
場所は、上野駅の近く、つまり、ディメコネ本社の近くであった
「喜んでもらえるとええね」
「だね!」
のんちゃんと会話しながら目的地に向かう
すぐにディメコネ本社が入っているDCビルに到着した
ビル内に入ってエレベーターに乗る
5階について廊下にでると、ひまちゃんたちが描かれた壁が出迎えてくれた
「へー、こんな感じなんや、すごいね」
「のんちゃんは初めてだもんね!
中もすごいよ!」
「そうなんや?楽しみやわぁ」
「じゃ、開けてもらうね」
「お願いします」
課長が扉横の受話器を取って、受付の人に連絡する
すぐに受付の方が扉を開けてくれて、中に招き入れてくれた
ガラガラガラ
オレは台車を押して中に入る
「あ!新井さん!お疲れ様でしゅ!」
「お、、おつかれさまです、、」
そこへ真っ直ぐ、リル姫が駆け寄ってきて出迎えてくれる
課長とのんちゃんはスルーだ
「む?あの、Kanonをやってる鈴村ですぅ」
「あ!あう、、魔界プリンセス リルリルです、、」
「はじめましてぇ
よろしくおねがいしまぁす」
のんちゃんが謎の猫撫で声でニッコリと微笑みかける
「よ、よろしくお願いします、、」
リル姫はオドオドしていた
のんちゃんのなにか圧がある笑顔に怯えているようだ
「あにょ、、こちらです、、」
しかし、それに臆せずオレたちを案内してくれる
オレたちはリル姫の後ろについていくことになった
「あっくん?」
「は!はい!なんでしょう!」
「、、あんた、ええ加減にせえよ?」
「ななな!なにがでしょうか!?」
「誤魔化す気なん?」
さっきから、のんちゃんは笑顔を崩さない
こわい、、
「そ、そんな気は滅相も、、」
「あとでゆっくり聞かせてなぁ?」
ニコ
「は、はい、、」
また説明責任が発生してしまった
数ヶ月前のこと様に続き、のんちゃんにも詰められるのか、、
憂鬱だな、、
そんなことを考えながら、リル姫についていく
デスクの間をぬっていき、広い会議用の机があるスペースに案内された
そこは、会議室のように仕切られた場所ではなく、
皆さんの仕事机が隣にあるような場所だ
社員の人たちが打合せに使う場所なのだろう
そこには、二宮さんや飯塚さんなどのスタッフさんやマネージャー陣、
それに、ひまちゃんたちディメコネVTuberの皆さんが集まっていた
知らない人も何人もいる
「皆さん、本日はわざわざありがとうございます」
二宮さんが話しかけてくる
「いえ!せっかくですし!いち早く皆さまには見ていただきたくて!
それではさっそく!」
オレたちは、事前に伝えていた、あるものをディメコネ本社に運んできたのだ
ダンボールを机の上に移動し、ガムテープを剥がしていく
そして、中身を少しずつ机に広げる
「わぁぁぁ」
リル姫は、両手を口の前で合わせて、目をキラキラさせている
、、なぜか、オレの隣に立っている
「おぉ、なんか感動するっすね」
逆サイドの隣、右手側には、いつの間にかあめちゃんがいた
「あめちゃんは私が守らないと、、ぶつぶつ、、」
その後ろから佐々木マネージャーの声が聞こえてくる
なにを言っているのだろう、、
「ひまの!ひまのお菓子!
すごーい!」
正面のひまちゃんはオレが出した袋の1つをを取ってピョンピョンと飛び跳ねていた
そう、今日は明日発売する商品を一足先にディメコネの皆さんにお配りに来ていたのだ
ひまちゃんは自分が担当した板チョコを手に取って、パッケージに自分の姿が描かれているのを見てはしゃいでいる
「沢山ありますので!皆様もご自由にお取りください!」
課長が声をかけると何人かがお菓子を手に取っていく
「どうぞ〜、はい、どうぞ〜」
のんちゃんはもう一箱のダンボールを開けて、近くにいる人たちに配ってくれていた
「私、このグミ好きなんです
嬉しい」
こと様が自分の担当お菓子を手に取って、パッケージを見ながらそう呟く
「そうなんだ!よかった!でっす!」
こと様の呟きに反応するが、島野マネージャーの目が光っているので、敬語に言い直す
あくまで仕事しにきてるんだしね!
今ははしゃぎすぎないようにしないと!
自分を戒めようと頭の中で喝を入れるが、
それでもオレのテンションは自然に上がっていってしまう
オレが企画した商品をみんなが手に取って嬉しそうにしてくれている
何人かはお菓子を食べながら、これ好きなんだよー、と、こと様と同じようなことを言ってくれていた
すごく嬉しい
オレが夢味製菓に入ったのも、ここのお菓子が大好きだったからだ
そんなお菓子をみんなが嬉しそうに食べてくれている
それに、なによりも、オレのことを救ってくれたひまちゃんとのコラボ
ずっと推してきて、ずっと見てきて、
いつかコラボできたらいいな、そう夢見てきたことが叶ったんだ
そう思うと、ウルウルとニコニコと、してしまう
「泣くんすか?それとも笑うんすか?」
「どっちも!!」
「パイセンは面白い人っすね♪」
「そうだね!ありがとう!」
「ふふ、かわいいじゃないすか♪」
あめちゃんが言いながらオレの肩に自分の肩をトンッとぶつけてきた
「あめちゃん!?あめちゃんは私が守るから!!」
「おおう?佐々木っち?なんすか?ちょ、邪魔しないでくださいー」
あめちゃんは、抵抗もむなしく、佐々木マネージャーに連れていかれてしまう
「あらと、、新井さん!
お菓子ありがとうございます!
とっても嬉しいです!」
そこへ、ひまちゃんから話しかけられる
「いえ!こちらこそ!私も夢が叶って感動しています!」
人の目があるためお互い敬語で話す
それがなんだかおかしくて、オレたちはクスリと笑ってしまった
「あにょ!わ、わわ!わたしも嬉しいです!
ありがとうございました!」
「あ、いえいえ、こちらこそ、ありがとうございます」
すん
隣のリル姫に話しかけられたので、頭を冷やし冷静に対応する
「はぅぅぅ、、」
なんか、、鳴いているんだが?
「ちょ、ちょっと、おに、、新井さん、、」
ちょんちょん
「はい?あ、こと様!お疲れ様です!」
こと様がオレのことをつついたので、向き直って挨拶をする
「、、はい、お疲れ様です
ちょっとお耳を」
なんだろう
かがんで右耳をこと様の方に向ける
「やりすぎです
むしろ喜んでます
普通に接してくたさい」
「え?」
そっと元の体制に戻り、リル姫の方を見る
リル姫は、自分の担当お菓子を食べながら、オレのことをジッと見ていた
ペロリ
お菓子を食べていた舌が唇を舐める
ゾクッ
え?オレ、なんか対応間違えた??
「あっくんはあとでしばいときます」
「はい、お願いしますね、Kanonさん」
、、そんなこと、お願いしないでほしい、、
しかし、しばかれるようなことをオレはしてきたのかもしれない、、
、、、考えたくない、、あとでいっか!
オレはリル姫の方を見ないようにしながら、みんなが楽しそうにお菓子を食べている姿に集中することにした
幸せだな~




