第130話 コラボのお祝いかと思いきや?
「おにいさん、、」
「はい、、」
「なんで、リルが必要におにいさんのことを聞いてくるんですか?」
「わ、わかりません、、」
「うわきっすか」
「あらとさん、、」
「ち!ちがうよ!?」
オレはいつもの渋谷のカフェで、3人に詰められていた
リル姫と屋上で色々あった後、
ディメコネとは正式に契約を結ぶことができ、コラボ企画は始動した
事前に準備していたこともあり、3ヶ月ほどで商品の発売まで実現できそう、という具合であった
今日は、月に一度のVTuber相談会
てっきり、コラボ実現の祝勝会だ、と意気込んでウキウキできたのだが、
全く予想してない展開に追いやられている
正直凹む
「じゃあ!なんなんですか!」
バンッ!
正面に座ること様が机を掌で叩く
「ひっ!」
「お〜、こわいっすね〜
よちよち〜
わたしは、最終的にわたしを選んでくれればそれでいいっすよ♪」
隣のあめちゃんがオレの頭を撫でる
「そ!そういうの!ひま!よくないと思う!」
右正面のひまちゃんは、こと様サイドのようだ
「だ、だって、、わからない、、
コラボ、、お祝い、、」
「あれ?また泣いちゃうんじゃないすか?
こととひま先輩のせいっすね
よちよち」
「あめちゃん、、」
オレは、あめちゃんだけが味方だよ、という気持ちであめちゃんの方を見る
「な!?甘やかしてればそっちいくとか!
サイテーです!おにいさん!」
「ひ、ひまも、、やっぱり、気にしないかも!
ひまも撫でてあげるね!」
「ひま先輩は自分の意見を曲げないで!」
「ことちゃん、、こわいよ、、」
「ふぅー、、わかりました
落ち着きましょう
おにいさん」
こと様にギロリと睨まれる
「へ、へい!」
「Siri?」
隣のあめちゃんがちゃちゃを入れてくるが気にしない
ちょっと噛んだだけじゃん、、
「で、リルとは、打合せのとき会社であったんですよね?」
「会いました!」
「挨拶だけしたんですよね?」
「そのつもりでした!」
「では、、挨拶以外にもなにか?」
「屋上でキーホルダーを拾ってあげました!」
「キーホルダー?詳しく教えてください」
「はい!」
オレは、リル姫が屋上でキーホルダーを拾うためにかなり危ないことをしていたこと
それを自殺だと勘違いして助けて、その後、箒を使ってキーホルダーを拾ってあげたことを話した
ひっぱたいたことは黙っておく
「なるほど、それで、リルは、おにいさんにお礼をしたいと言ってるんですね
おばあちゃんから貰った大切なキーホルダーを拾ってくれたおにいさんに」
「そ、そうみたいだね、、」
もじもじ、ウソはついてないが全部話してないことに罪悪感を覚える
「んー?ちゅっぱ、、」
「リルちゃんは、おばあちゃんが大好きだからね!
きっとそれだけだよ!」
「そうなんすかね〜?
パイセ〜ン??」
「え?た、たぶん、そうなんじゃない?」
あめちゃんに顔を近づけられ、目を逸らす
「この人なんかウソ、、いや、なんか隠してます」
こ、こころ読めんのかい、、
「おにいさん?」
「あらとさん?」
ダラダラ、冷や汗が出始める
「、、あーアレっすか、フェンスから引きずり込むときに、転んでキスしちゃったー!
とか?」
ぶんぶん
頭を左右に振る
「おっぱ」
ぶんぶん!!
「ちがうっすか、んー、なんでしょう?」
「もしかして、、おにいさん、、叩きました?リルのこと、、」
「、、、」
「あらとさん?」
「パイセン?あ、これっすね」
「だ!だって!自殺しようとしてると思って!許せなかったから!
ごめんなさい!」
「はぁ、、そういうことですか、、
厄介なことになりましたね、、」
「え?え?ことちゃん、なにかわかったの?」
「ちなみに、わたしは分かんないっす」
「いや、、なんというか、、あの子は倒錯した趣味の持ち主と言いますか、、
有体に言えば、マゾなんです、、」
「ま、ぞ?」
「はい」
マゾってなんだっけ?声に出さず考える
「つまり、リルはパイセンに性壁を刺激されて、メス堕ちしたってことすか?」
「言い方、、ま、まぁ、それに近いかもです、、」
「め、メス??」
「パイセンは無自覚たらしっすね〜」
「た、たらし?」
オレは混乱して、繰り返すことしかできない
「お、おれ、、許せなくって、、ごめんなさい、、たらし??、、メス??、、まぞ??」
「あ、壊れたっす」
「あらとさん、、
えっと、今回はあらとさん悪くないと思うの」
「ま、まぁ、、たしかに、、」
「そうっすね、もうリルのことはほっとけばいいんじゃないすか?めんどくさい」
「考えるの放棄しないでよ、、ホントあんたは、、」
「だって〜、さすがにパイセンもこれ以上女の人相手にできないっすよね?」
「へ?あ、、うん、、」
「ほら〜
ほっときましょ」
「でも、気になってる相手に放置されると、、マゾにはご褒美なんじゃ、、」
「ことちゃんはマゾに詳しいんだね」
「ひま先輩、、やめてください、、一般論です」
「こいつもマゾなんすよ」
「えー!?そうなのー!?」
「ちがいます!メー!うるさい!」
「へーい」
あめちゃんは頭で両手を組んで天井を見上げた
本格的に考えることを放棄したようだ
「とにかく、リルからはちゃんとお礼を受け取って、オレはマゾに興味ないって言ってください」
「は?こと様?なに言ってるの??」
「私もなに言ってるかわかりません」
「だよね?だっていきなりそんなこと言ったらオレが変態だよ?」
「わかってますよ!じゃあ自分でどうにかしてください!」
「ひっ!、、ご、ごめんなさい、、」
「あらあら、よちよち、可哀想なパイセン、なにも悪くないのに怒鳴られて、
あの女は怖いからやめておきましょ〜ね?」
「、、、うん、、」
「っ!?うんってどういう意味ですか!!」
「え?あの、、」
「ふぅー、、これだから天然たらしは、、」
「どうすればいいのかな、ひまはよくわかんないけど、なにか手伝えることがあったら手伝うよ!
えっと!マゾのことはことちゃんに聞けばいいのかな!?」
「、、、ちょっと、、
何か、、思いつくまで、一旦何もしないでおきましょう、、
これ以上ややこしくされたくないので、、」
こと様は、片手で頭を押さえて、もう片方の手で待ったをかける
「わかりました!なんでも言ってね!ことちゃん!」
「なんか、、ごめんね?」
「いえ、おにいさんは立派なことをしたと思います
それは本心です
何度も怒ってすみませんでした
おにいさんがとった行動はなかなかできることじゃありませんし、カッコいいと思います」
「こと様、、」
突然褒めてくれて、なんだか感動する
「おぉ〜、飴とムチってやつすか?
こわいっすね〜」
「、、、」
そう言われ、急速に感動が冷めていく
「別にそんなんじゃないわよ、ふんっ」
「わたしは、あめだけあげますね♡」
「ひまも!ひまも飴ちゃんだけにする!」
「真似しないでくださいー」
「真似じゃないもん!」
やいのやいの
今度は、ひまちゃんとあめちゃんの小競り合いが始まった
リル姫のことはなにも結論が出なかったが、こっちから接触するようなことは避けようということになった
まぁ、ディメコネとうちの契約も済んだことだし、うちの会社で打合せするときは、
リル姫に遭遇することは滅多にないだろう
大丈夫大丈夫
なんだが、厄介なことになった気もするが、オレは楽観的に考えて、今日の相談会に集中することにした
この後、落ち着いた3人は、ちゃんとコラボ実現についてお祝いしてくれて、
なんとサプライズのケーキまで用意してくれていた
オレはその甘いケーキを食べながら、やっと夢が実現したんだと涙腺を緩ませる
もちろん、あめちゃんにはからかわれ、
こと様はハンカチを渡してくれて、
ひまちゃんはちょっとうるうるしていた
とても幸せな時間だ
そんな時間を満喫していたからか、
すべての悩みはしばらく思い出すことはなかった




