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第128話 I can fly?

ガチャ


屋上に出る透明なドアを開けると、そこに飯塚さんはいなかった

というか誰もいない


まっすぐ歩いていくと、喫煙スペースがあって、灰皿とベンチが設置されている

以前、ここで飯塚さんにタバコの煙を吹きかけられた


ブルッ


これからなにをされるのか想像して身体が震えた


でも、いないしな〜

オレは呼び出した張本人がいないことに気を大きくして、あたりを探索することにする


ぷらぷらと歩いていくと、でっかい室外機の向こうに人影のようなものを見つけることができた

げ、、飯塚さんかな、、


え??は??


しかし、その違和感にすぐ気づく

その人影は、フェンスの向こう側

つまり、空と地面に境がない方に立っていた


このビルは10階だ


「ちょ!!」


オレはすぐに駆け出した

自殺なんて許せない


ダダダっと駆け寄る


「おい!あんた!!」


「ふえ?」


フェンス越しにバッと抱きつく


「ふえええ!?」


「なにしてるんだ!バカやろう!!」


「ふえ!?はわわ!!」


「この!暴れるな!バカ!」


オレは暴れるそいつを無理矢理持ち上げて、フェンスのこちら側に引きずり込む


「ふわ、、あにょ、、」


それは、魔界プリンセス リルリルと名乗った女の子だった

飯塚さんではない、でも、そんなことはどうでもいい


パーン!!


「、、ふえ?、、」


オレはその子の頬を叩く


「自殺なんてバカだ!ツラいなら周りのみんなに相談しろ!!

なんならオレが聞いてやるから!!」


「??にゃにを??」


「だから自殺なんて!!」


「じ、、じさつ?」


「そうだ!バカヤロー!」


「し、しません、、」


「そうだ!するな!

、、、ん?しません?」


「する気、、ないです、、じさつ、、」


「、、え?」


「あにょ、、キーホルダー、、落としちゃって、、」


「え?」


そこで一気に頭が冷えていく

目の前の女の子は叩かれた頬を痛そうに片手で抑えていた


「あの?自殺しようとしてたんじゃ?」


「ち、ちがいます、、」


「え?まじ?」


コクコク


頭を振る目の前の女の子を見て、サーっと血の気が引く

オレはなんてことを


「ごごご!!ごめんなさい!!」


オレはリル姫から離れて土下座する

ガンガンと頭を地面に打ち付けた


「早とちりで!このバカヤロウはオレです!

煮るなり殴るなり蹴るなり好きにしてください!!

ご無礼をお許しください!

ホントに!!」


「はわわ!?だ!大丈夫!でしゅ!

わ、わたしも!勘違いさせるようなことして!

ご!ごめんなさいでした!」


「いや!そんな!」


「いえ!それに!あんなとこにいたらそう思われても仕方ないです!」


突然抱き着いて、ビンタをかました男をその子は養護してくれる

なんて優しい子なんだろう

オレみたいなバカヤローは消えてしまいたい

そんな気分だった

いや、しかし、でも


「、、えっと、なんで、あんなところに立ってたの?」


改めて、気になったことを聞く


「あの、、おばあちゃんに貰ったキーホルダー、、スマホから外れて、、落ちちゃって、、

でも、、取れそうだったので、、」


「な、なるほど、、」


そこでやっと状況が掴めた

この子は大切なものを拾うためにあんなとこにいたのだ


「でも、さすがにあぶないよ?」


「はい、、ごめんなさい、、」


「えーっと、どれのことかな?

あー、あれかな?」


オレはそのキーホルダーというのを探して指を指す

その先には、お姫様のような形のキーホルダーがビルの端ギリギリにあることを確認できた

もう少しで落ちそうだ


「はい、、あれです、、」


「んーっと、ちょっと待ってね」


オレはフェンスの間から腕を通そうとする


「うーん、、このフェンス、間が細すぎて腕が入らないね、、」


「はい、、なので、、」


「大切なもの、なんだよね?」


「はい、、」


「ちょっと待ってて、絶対フェンスの外に出たらダメだよ?

取ってあげるから」


「え?あ、はい、、わかりました、、」


ここに残して行くのは少し心配だが、取ってあげると伝えておけば大丈夫だと判断して、急足(いそぎあし)でビルの中に入る


「あ、あったあった」


周りを見渡すとすぐに目当てのものを見つけて扉をあける


「お借りします」


オレはそれを持ってリル姫の元に戻った


「箒?」


「うん、これならフェンスの間でも入るでしょ?」


「あ、、たしかに、、」


オレは箒をフェンスの間に入れて、持ち手の方でキーホルダーを少しずつこちらによせる

慎重に慎重に


「よっし」


近くまできたところで、フェンスの下から指を入れて、キーホルダーをキャッチした

オレはそれをハンカチで拭いてからリル姫に渡す


「はい」


「あ!ありがとうございます!!」


「ううん、全然、これくらい」


「わぁぁ、、おばあちゃんのキーホルダー、、よかったぁぁぁ」


「あの、、叩いてごめんね?痛かったよね、、」


「え?い、いいえ!ぜんぜん大丈夫でしゅ!」


「ホントに?」


「あい!」


ぱっと見、リル姫の頬は腫れてはいないように思う

そもそもなんで叩いてしまったのだろう


自殺、というイメージが浮かんだとき、オレ自身も考えたことをフラッシュバックして、

でも、今は楽しくて、だから許せなかったのかもしれない


「ホントにごめん、、」


オレのエゴで叩いたことを後悔する

もう一度頭を下げた


「いいえ!むしろ!ありがとうございます!」


「ありがとうございます??」


不思議なことを言う彼女の顔を頭を挙げて確認する


「はわ!?えと!キーホルダー!ありがとうございます!」


「あ、それはもちろん、ぜんぜん、当たり前だし」


ぶんぶん

リル姫は大きく頭を左右に振る


「なにかお礼させてくだしゃい!」


「え?」


--リルとは適切な距離を保ってください--


こと様の言葉を思い出す

マズい


「だ!大丈夫です!あ!ほら!

叩いたことと相殺ということで!

はい!

では!私はこれで失礼します!」


「え?あにょ!」


「失礼しまーす!!」


リル姫はなにか言いたそうだったが、オレは脱兎のごとく逃げ帰った


飯塚さんからの呼び出しのことをすっかりと忘れて

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