第127話 魔界プリンセス リルリル
こ、こんちには、、
あっ、、ちがっ、、
よ、よくきたなー!
今日も姫たるわたくしの命に従い集まったこと!
えっと、、
褒めてしんぜよう!!
あ、、
それではこれより!宴をはじめようではないか!
わたくし魔界プリンセス リルリルのお茶会に招待されたこと!
光栄に思うが良い!
、、、は、はい、、
こんにちは、、魔界プリンセス リル、リルリルでしゅ、、
あっ、、ごめんなさい、、
(コメ欄)
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うぉぉー!今日もかわいいー!
義務口上サイコー!
姫ー!光栄ですー!
噛んでてもかわいいよー!
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はわわ!今日もたくさんのコメントありがとうございます!
わたくしなんかの配信に来ていただき!誠にありがとうございます!
ペコペコ
画面の中の女の子は、そんな擬音が聞こえそうなほど、頭を激しく下げていた
魔界プリンセス リルリル
今年デビューしたディメコネ5期生の新人VTuberで、ひまちゃんたちの後輩だ
今度、うちの会社とディメコネはコラボするのだが、ディメコネ側は、4人のVTuberがオファーを受けてくれた
そのメンバーとは、ひまちゃん、こと様、あめちゃんに加え、
今動画の中であわあわと配信しているリル姫であった
リル姫というのは、リルリルさんのリスナーからの呼び名で、リスナーネームは魔界騎士団というらしい
姫を守るナイトたちの集まり、ということで騎士団なのだろう
リル姫のチャンネル登録者数は12万人ほど、デビューして半年も経っていないのにこの数は驚異的である
ふむふむ、口上は偉そうだけど、実際にはかなり真面目で、おっとりした子なのかな?
オレは、コラボ相手のことをよく知らないのはまずいな、と思い、予習のために配信を視聴していた
ピロン
そんなときにLINEの通知音がなる
こんばんは、コラボ企画の件、希望通り、私の担当をグミにしてもらい、ありがとうございます
こと様からであった
すぐに返事を書く
いやいや!そんなの当然だよ!
みんなの希望が被っちゃったら悩んでたけど、今回はみんなバラバラだったから!
そうですか
まぁ、メーは飴でしょうし
ひま先輩はチョコですもんね
うん、そうそう
あ、そういえば、リルはどのお菓子になったんですか?
リル姫は、アーモンド入りのチョコ菓子になったよ!
なるほど、そうなんですね
そういえば、この前控室で嬉しそうにそんなお菓子を食べていたような気がします
そうなんだ!本人も喜んでくれてるならよかった!
企画してるコッチもやる気でるよ!
、、おにいさん、リルとは節度を持った距離感を意識してくださいね?
おや?もしや、こと様までオレをどんな女の子にでも手を出すゲスヤローだと思っているのかな?
かな?
自分の胸に手を当ててみる
、、、そう思われても仕方がない所業であった
はい、もちろんです、心がけております
そう返す
それならいいですが
なんだか心配です
大丈夫大丈夫、たぶん挨拶だけして、それっきりだし
そうでしょうか?
まぁ、くれぐれもお願いしますよ?
来週、うちの本社に来るんでしたっけ?
うん!その予定だよ!
そうですよね、すみません
事前にお伝えしていた通り、私たちは県外に収録に出ているので、お会いすることはできないんです
だよね
ひまちゃんとあめちゃんからも聞いてるよ
会えないのは残念だけど、収録がんばってね!
はい、ありがとうございます
それではまた
おやすみなさい
おやすみ〜
ここで、こと様とのやりとりは終了し、また配信画面を見る
リル姫はあわあわと自信なさげな挙動をしながらも、がんばってマリオに挑んでいた
不慣れな感じが可愛いな
そう思ったところ、こと様からの注意を思い出す
いかんいかん、リル姫については深追いしないようにしよう
オレは自重の念を抱いて配信を閉じる
予習は十分だ
これ以上好きにならないようにしなければ
そう思いながら、来週ディメコネ本社に行ったときの打合せについて予習することにした
・
・
・
「はい、そうですね、契約書はこちらでいいと思います」
「ありがとうございます!」
翌週、オレは1人でディメコネの本社に来ていた
コラボ企画の契約書について、二宮さんと最終確認をするためだ
「あとは弊社の法務部に確認させますので、それで問題がなければ契約を進めさせていただきますね」
「わかりました!よろしくお願いいたします!」
「はい、こちらこそ
いよいよ、という感じですね」
二宮さんは笑顔で、ワクワクした雰囲気を出していた
「ですね!ついに実現すると思うと夢のようです!」
「うふふ、新井さんは今の部署に来る前から弊社とのコラボを考えてくださっていたんですよね?」
「はい!なのですごく楽しみで楽しみで!」
「私の方も全力で取り組みますので、よろしくお願いします」
「はい!こちらこそ!」
「今日の打合せは、これで良かったかと、、
あ、新井さんは、まだリルリルと会ってませんでしたよね?
挨拶させますので、呼んできますね」
「あ、こちらにいらっしゃるんですね?」
てっきり、ひまちゃんたちと一緒に収録に出ているのかと思っていたが違うようだ
「はい、少々お待ちください」
そういって、二宮さんが席を外す
少しすると、二宮さんと、島野さん、その後ろに小さな女の子が部屋に入ってきた
こと様やあめちゃんと同年代だろうか
かなり若い
カーキのロングスカートを着ていて上はグレーのパーカー、
顔にはメガネ、髪型はおさげを両肩から胸の辺りにぶら下げていた
なんというか、図書委員だったらイメージにピッタリの子だ
隣の島野さんはニッコリとオレを睨んでいる
こわい、、
こわくてリル姫をあまり観察できなかった
ジロジロ見ていたら殺されそうだ
「リル、ご挨拶を」
「あ、、あの、、魔界プリンセス リルリルです、、
へ、変な名前でごめんなさい、、
よろしくお願いしましゅ!」
あ、噛んだ
とは言わず
「こちらこそよろしくお願いします!
夢味製菓の新井と申します!
リルリルさんに担当していただけて嬉しいです!」
「え?、、そうですか?、、
わ、わたしも、、うれしいです、、」
「はぁ〜い、顔合わせは以上でいいですよね〜
ありがとうございました〜」
オレとリル姫の間に島野さんが割って入る
新井〜、てめ〜はこれ以上リルと話すんじゃね〜よ
目がそう言っていた
「、、ありがとうございました!」
なので、リル姫との会話終了に同意しておくことにした
「はい〜、それでは失礼します〜」
「しつれいしましゅ!」
島野さんがリル姫を先に退室させる
「あ、そうだ〜
新井~さん、これ〜」
なんだろう?
島野さんから名刺サイズのメモ用紙を渡された
「会議が終わったら見てください〜」
「はー、はい、わかりました」
「あら?新井さんはおモテになるんですね?
この前は飯塚に呼び止められてましたけど」
二宮さんがそんなことを言う
「うふふ〜、新井〜さんはモテますもんね〜
では、失礼します〜」
島野さんは否定するどころか、めちゃくちゃ適当なことをいいながら退室した
?
二宮さんが不思議そうな顔をしたあと、ニマッとオレの方を見る
「うちのマネージャー、美人ですもんね〜」
「いやいや!
いや!否定してるわけではないんです!
えっと!あの方たちとはなにもありませんよ!?」
「ふふ、恋愛は自由ですから
それよりも、次回の打合せの日程決めてしまいましょうか」
「、、はい、、」
二宮さん絶対勘違いしてる、、
イヤ過ぎる、、
違うんです、飯塚さんと島野さんは、オレのことを豚だと思ってるんです、、
怖いんです、、なんとかしてください、、
そんなこと、もちろん言えるはずもなく、
二宮さんと事務的な話をして、今日の打合せは終了となった
「ありがとうございました!」
お礼を言って、ディメコネ本社の扉を出る
「ふぅ〜、順調順調」
さて、帰るか〜
と思ったとき、あ、そういえば、と島野さんのメモのことを思い出す
ガサガサ
ポケットに入れていたそのメモを取り出し、めくると
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会議が終わったら屋上に来い
飯塚
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、、、
いじめ?
カツアゲ?
行ったら、オレ殴られるの?
こわい、、
一瞬、無視して帰ろうと考える
しかし、無視したら無視したで後が怖い
「、、、はぁ、、」
オレはため息をつきつつ、屋上に行くことを決意した
イヤ過ぎるが行くしかない
そんな心持ちだ
ポチ
オレは憂鬱な気持ちでエレベーターの上行きのボタンを押す




