第126話 コラボで担当するお菓子
「お世話になります
本日はよろしくお願いします」
「こちらこそ!よろしくお願いします!
わざわざお越しいただきありがとうございました!」
「いえいえ、いつも弊社の方に来ていただいていますので」
今日は、ディメコネ広報の二宮さんがうちの会社に来てくれていた
コラボ企画の詳細についてと、契約面について打合せをするためだ
オレと課長、のんちゃんは、二宮さんを正門でお出迎えして、
来客用の入門カードを手配していた
二宮さんの後ろには、ひまちゃんのマネージャー、飯塚さんと、
こと様のマネージャー、島野さんがいる
「、、、」
「、、、」
2人は黙っているが、睨まれているような気がする、、
被害妄想だろうか、、
そうであって欲しい、、
ディメコネの3人に、首から下げる入門カードを手渡し、正門ゲートをくぐる
「で!では!会議室にご案内しますね!」
「はい、よろしくお願いします」
怖いので、マネージャー2人の方はあまり見ないようにして、二宮さんとお話ししながら会議室に向かうことにした
のんちゃんと課長がマネージャーさんたちと話しているので不自然ではないだろう
今日は、いつもの職場とは違うビルに入り、来客用の会議室エリアに向かう
会議室エリアは、正門から1番近いビルの1階にあり、大小様々な会議室が用意されている
6人で移動してきて、会議室エリアの前まできたので、社員証をかざしてゲートをくぐる
皆さんにも来客用カードで同じように通過してもらった
そして、予約してあった会議室の扉を開けて、皆さんに座ってもらう
オレはドアの隣に設置された電話をとって、受付の方にコーヒーを持ってきてもらうよう依頼した
そして、自分に割り当てられた席につく
「改めまして!この度はコラボのご提案を受けていただきありがとうございます!」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます
弊社としても、夢味製菓さんとはコラボさせていただきたいと思っておりましたので大変嬉しく思っております」
「いえいえそんな!
恐縮です!」
「新井をはじめ、弊社としても全力で取り組んで参りますので!よろしくお願い致します!」
「はい、こちらこそよろしくお願い致します」
課長も会話に入り、打合せが始まった
どのお菓子に、どのVTuberを印刷するのか、とか
イラストレーターは誰にするか、
パッケージの構図は?
それに、契約面のことだ
契約については、コラボの売上をどう分配するのか、というのがメインの話題だった
「やはり、こうするのが1番両社にメリットがありますかね?」
「はい、私はそう思います」
「ですよね、では、この方向で契約書をまとめていきましょう」
「はい、よろしくお願いします」
結局のところ、うちがパッケージなどのデザイン費用を全て持つ代わりに、ディメコネのタレントの皆さんに、うちのお菓子を宣伝してもらう
そして、そのデザインを使って、ディメコネの方でグッズを作り、そのグッズの売上は全てディメコネのものとなる、という方向で話はまとまりそうだ
イラストレーターは、ひまちゃんとKanonの生みの親である なまこママに依頼することになり、
イラストの構図はありがたいことにオレがラフを描いたものをベースにしてもらえることになった
「あとは、どなたが、どのお菓子を担当するかですね」
「そうですね、飴菓子については甘梨で決まりだとは思うのですが、他のお菓子はどうしましょうか
御社の方でご希望はございますか?」
「いえいえ!弊社としてはどなたがどのお菓子でも大変光栄です!」
「ふふ、そうですか、ありがとうございます」
「うちの花咲はチョコ系を希望しています」
「洲宮は〜、グミがいいそうです〜」
マネージャーの2人が本人たちの希望を教えてくれる
「なるほどなるほど
では、板チョコを花咲さん、キャンディを甘梨さん、グミを洲宮さんでいきましょうか
あとは、リルリルさんですね」
リルリルさんというのは、ディメコネ5期生の魔界プリンセス リルリルのことだ
今回、うちからは、ひまちゃんとこと様、あめちゃんの3名を指名して、
もう1人は自由に選んでいいと伝えてあった
その最後の1人はリルリルにします、と事前に二宮さんから聞いていたので、
リルリルさんの担当お菓子を決めていく
「そうですね、リルについては、島野の方から、なにかありますか?」
「リルは〜、なんでも嬉しいですって言ってましたが〜、本人はよくチョコを食べてるので〜、チョコが嬉しいと思います〜」
と島野さん
「ふむふむ、では、アーモンド入りの丸いチョコ菓子なんてどうでしょうか?」
「はい〜、喜ぶと思います〜」
「ではそれでいきましょう!
あの、そういえば、リルリルさんは今日は来れなかったんですね?」
事前のメールではスケジュールが合えば連れて行きますと聞いていたのだが
「はい、すみません、ちょっとスケジュール的な問題と、、
タレントをあまり外に出して身バレするリスクを負うのはどうなんだ、という意見がありまして、、」
二宮さんは申し訳なさそうだ
「いえいえ!タレント様第一ですから!
素晴らしい方針かと思います!」
「そう言っていただけると助かります
弊社にいらしたときには、挨拶させますので」
「はい!楽しみにしております!」
「楽しみ〜?」
島野さんに睨まれる
おっと??
「あの〜、私が、リルのマネージャーだということをお忘れなく〜」
「え?洲宮さんのマネージャーは?」
「そちらも引き続きやってます〜」
「島野は、2人のマネージャーを兼任しているんです」
「へ、へー、そうなんですね、、」
ところで、なんでこの人はさっきからオレのことを睨んでいるんだろう、、
「うふふ、お忘れなく〜」
リルにも手を出したらコロス
島野さんの目がそう言っていた
「、、、」
そんな気ないのに、、こわい、、
「で、では、、お菓子と各タレント様の担当をまとめますと
板チョコ、花咲ひまわりさん
キャンディ、甘梨あめだまさん
グミ、洲宮琴さん
アーモンドチョコ、魔界プリンセス リルリルさん
チョコクッキー、弊社のKanon
こちらでよろしいでしょうか?」
皆さんにお伺いすると、特に反対意見もなく、同意を得られる
「それでは!こちらで進めていきましょう!
イラストはすぐに発注しますので!
上がってきましたら、すぐに共有致します!
契約書についても雛形ができ次第、メールでお送り致します!」
「はい、よろしくお願い致します」
こうして、今日の打合せは終了した
島野さんに睨まれたりもしたが、概ね順調に進めることができたと思う
パッケージイラストをなまこママに依頼するのが今から楽しみであった
オレはウキウキ気分で皆さんを正門まで送り届ける
「ありがとうございました!」
正門前で、改めて二宮さんにお礼を言う
「こちらこそありがとうございました
それでは失礼します」
ペコリと、二宮さんは頭を下げて正門のゲートを出て、残りの2人を待っていた
飯塚さんと島野さんは、課長たちと話してるのかな?
振り向こうとしたところ
ポン
「ひまのこと、泣かせたら、コロス」
飯塚さんであった
オレの肩を叩いて、耳元で囁かれる
課長たちと話しているのかと思ったら、いつの間にか背後にいたらしい
「、、、あ、、」
オレが喋ろうとすると、それを聞かずに飯塚さんはゲートをくぐった
「わたしも見てますよ〜新井~」
それに島野さんが続き、オレの横を通り過ぎる
見ている、とはどういう意味だろうか
、、、こわい、、
オレが恐怖に震えていると課長が隣に来て話しかけてきた
「まさかとは思うけど、マネージャーさんとは何もないよね?新井くん」
「へ?あ!あるわけないじゃないですか!」
訳のわからないことを聞かれ、声が大きくなってしまった
「おおう、、そんなに動揺されると逆に疑っちゃうんだが、、
でもね、キミには前科があるんだからね?
あまり威勢よくしちゃダメだと思わないかい?」
熱狂的ちゅぱかぶらの課長に嗜められる
笑顔だ
テメーはあめちゃんに手を出したよなぁ?あーん?
の顔である
「お、おっしゃる通りです、、」
「ふむ、よろしい
では、私たちも戻ろうか
あ、一応、私としては推しの幸せを願ってるから
一応、賛成はしてるから、一応」
何度も一応、とつけていて、それが渋々だということは分かる
そっか、あめちゃんは結木課長を味方につけたんだな
ははは、さすが、あめちゃん
オレが現実逃避をかましてボーっとしていると、いつの間にかディメコネの皆さんの姿は見えなくなっていた
「戻るで〜、あっくん」
「え?あ、うん」
のんちゃんに話しかけられ、現実に戻ってくる
「カッコ悪いなぁ、あっくんは」
「うっさいやい、、」
「うちに決めたら全部解決するで〜?」
「え?いや、あの、、」
「優柔不断やなぁ」
「すんません、、」
のんちゃんにも軽く詰められながら、自席に戻り、椅子に座るとドッと疲れが押し寄せてきた
この疲れは、主に最後の10分に凝縮されていたように思う
「ふぅ、、」
オレは一息つくためにジュースを買いに立ち上がった




