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第0話 プロローグ

「だから、、だからね!

ホントにありがと!

ひまね!キミにすっごく感謝してる!」


夜の公園


誰もいない公園のベンチの前で

オレは、街灯に照らされた推しVTuberに感謝の言葉を述べられていた


「いや、、オレなんか、なんにも、、」


「ううん!そんなことないよ!

ひまはね!キミのおかげで!これからもVTuber続けようって!

そう思えたから!」


ひまちゃんがVTuberを続ける

さっきの記念配信で聞いた言葉ではあったが、実際に目の前で聞くとジーンときてしまう

そっか、、ホントに引退しないんだ、、


「あれ?キミ泣いてる?

あれあれ〜?そんなにひまのこと大好きなのかなぁ?」


ニヒヒ


オレの推しがイタズラっぽい笑みを浮かべていた


この子は、花咲ひまわり、大手VTuber事務所の初代VTuber、伝説の1人だ


黒髪ロングに白いメッシュを絡めた三つ編みを前髪にぶら下げた、とても目立つ見た目をした美少女だった


3Dモデルと見た目は違うが、中身は配信そのままのオレが大好きなひまちゃんが

オレのことをからかってきている


控えめに言って、死んでもいいくらい幸せだった


「うん、、うん、、

オレはひまちゃんが大好きだから、、

引退しないでくれて、、すごく嬉しくって、、」


オレは半べそでそんなセリフを吐く


「え?

えへへ、、そんなハッキリ大好きなんて言われたら、、

さすがのひまも照れちゃうなぁ〜」


ひまちゃんは赤くなって、バツが悪そうにほっぺをぽりぽりとかいていた


「あ!今日のお礼にさ!

キミのために歌うよ!なに歌ってほしい?

どの曲がいいかな!」


「ええ!?そんな!?

そんな贅沢許されないよ!!」


オレは両手を前に出してあわあわと断る

さすがに恐れ多いからだ


「しゅーん、、ひまの歌、、聞きたくないんだ、、」


がっくりと暗い顔をするひまちゃん


「聞きたい!!すごい聞きたいです!!」


チラ


顔を上げるひまちゃん


「だよね!もーう!

最初から素直にそう言いなよー!!」


満面の笑みを向けられてしまった

あ、、演技だったか、やられた

でも、可愛いから、まっ、いいか


「じゃあねじゃあね!

今日の記念ライブでも歌ったひまのオリ曲を歌うね!」


「う、うん!お願い致します!!」


「うふふ♪

えーっと、音源はないからアカペラで!いきまーす!」


タタッと少し離れた位置に移動し、

右手でマイクを持つようなポーズをとるひまちゃん

そして


「〜♪」


とても綺麗な歌声が聞こえてきた


オレはペンライトの代わりにスマホを持って、合いの手を入れ続ける


すごい、すごい体験だ


あの、あの推しのひまちゃんが

オレの、オレだけのために歌ってくれている


こんな幸せなことがあって、良いのだろうか


そう思って、感動しまくってるうちに、あっという間に曲は終わってしまった


パチパチパチパチ!!


オレは全力で拍手を送る


「ありがとー!!」


両手を振って拍手に応えてくれるひまちゃん

そして、タタタッと近づいてきてくれた


「どうだった!?」


「最高!最高だった!!感動した!!

泣きそう!!ううん!泣いてる!!」


「あはは!ホントだ!

うるうるしてるね!キミ!」


「う、うん、、ぐすっ、、」


ひまちゃんがオレのために歌ってくれた

それに引退しない


その安心感からオレはフラフラとしてしまう


あ、徹夜明けで、、無理しすぎたか、、


そのまま、ベンチの方にもたれかかる


「え?どうしたの?大丈夫?」


「う、うん、、ちょっと眠いだけ、、最近寝てなくて、、」


「そうなの?無理しないで?」


「うん、、じゃあ、、」


「きゃ!?」


そこでオレの意識は一旦途切れる



ポタッ


なんだろう?


頭の後ろが柔らかい


うっすらと目を開ける


目の前には口を片手で抑えたひまちゃんがいた


目を閉じる


あれ?これって膝枕では?

いやいや、夢だな

夢オチおつ


ん?てか、

ポタッ

ってなんだ??


それにさっきのひまちゃんの顔は?


ポタって、、

涙?


泣いてる?ひまちゃんが?


そこまで思い当たり、オレはすぐに起き上がった


「ひまちゃん!!大丈夫!?」


「んむっ!?」


オレの目の前にひまちゃんがいた


ドアップだ


可愛い


めちゃくちゃ可愛いオレの推しがオレの目の前にいた


むにゅ


なんだか口が、唇が柔らかい気がした


「ぷはっ!」


ひまちゃんが少し離れて、オレを見つめる

どんどんと真っ赤になっていく


オレは、これから、どうすればいいのだろうか?


バキバキの童貞のオレには、このあとの展開が想像もつかなかった

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