第2話
昨日は良い夢を見た。自分を馬鹿にしてくる、女上司を犯し、刃物でズタズタに刺し殺した夢だ。しかし、夢は夢だ。現実は違う、残念に思いながらも憂鬱な朝が始まる。いつもと変わらず電車に揺られ会社へ向かう。
会社へ着くと社員達はざわついていた。話を聞くと、驚くことに女上司が亡くなっていた。朝ニュースでやってた例の害獣被害の犠牲者は彼女だったらしい。思わず笑みがこぼれてしまう。これで俺を馬鹿にするやつは居なくなる。もしかして、昨日のピエロから飲んだカクテルは願いを叶える物なのか、などと下らないことを考えていた。
無事に仕事も終わりいつものコンビニで焼き鳥とビール缶を買った。今日も居たが、大学生だと思われる可愛いバイトが前から気になっていた。バイトは何時まで何だろう。家に帰ってあんな可愛い娘がいたら幸せだろうな。なんて考えていると、ふと思いだした。またあのカクテルを飲めば願いが叶うのではないかと。
気づいたら再びBAR luna caldoへ足を運んでいた。
「お待ちしておりました。御掛けください」
迎えてくれるのはあの不気味なピエロだ。自分が来るのを待っていたかのようにすでにカクテルを作っていた。
「昨日は良い夢を見れましたか?」
口角が異常につり上がった、不気味な笑顔で聞いてくる。まるで見透かした様に。
「え、え~まぁ」
驚くあまり眼を反らし、ぼやかす様な反応をしてしまう。
「分かってますよ、貴方がここにきた理由は。また願いを叶えたくて来たのでしょう?」
やはり見透かされている。けど、願いが叶うならカクテルを飲まない理由は無い。
「下らないことなんですけどね」
「いえいえ構いませんよ」
「そういえば、お代は? 最後に多額の請求をされても払えませんよ」
「前にも言ったじゃ無いですか、それには興味ないと」
表情を変えずに淡々と話すピエロ。そして、例のカクテルが出来上がった。
「では、ごゆっくりと」
今回は紫色のカクテルだ。フルーティーな香りが鼻腔を彩る。薄暗いBARの明かりに照らされるクリアパープルの液体はまるで宝石の様で衝動を刺激した。抑え切れず一口飲むと、口の中から全身を幸福感で満たされる様な感じがした。高揚しており、ピエロに思いきって質問をした。
「あの、なぜピエロの格好をしているのですか?」
「ただの趣味ですよ。私ピエロが好きなんです」
「そうなんですね、すみませんつい」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
他愛もない話を続けていると、夜も更けてきた。
「では、そろそろ帰ります。ありがとうございました」
「こちらこそ、また新作を作って待ってます」
家に帰り疲れと酔いからか、すぐに床に着いた。その日見た夢は妙にリアルで例のコンビニ店員を犯した夢だった。
そして次の日。ニュース番組を見ていると例のコンビニ店員は遺体として発見された。人のものではない体液が付着していることで前回の害獣被害と関係性があると考え捜査されているらしい。