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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

満開夜桜

満開夜桜指輪二輪

作者: ぎぎ

黒森冬炎さまの企画『恋のリフレイン』に参加したさいに頂いたイメージイラストの女の子が、泣き続けていると思ったら何か救済せねばと思い、短編を書きました。

「結局……、(ほだ)されちゃったなぁ、あたし。」


 満開の桜を見上げて、ぼそり。呟いた後、ため息が出そうになるのをこらえ、この場所に来るまでに屋台で買ったイカ焼きを、がぶり頬張る。

 最初に、エンペラをひと口で全部収めるのがあたし流。エンペラの歯切れの良さと、焦げた醤油の香りが口の中を支配する。お祭りだからこそのチープな味がいい。

「むぐむぐ……。ふぅ、これを食べて『美味しい』って感じるのは……何年ぶりかなぁ?」


 あたしには、幾つもの季節を恋人として過ごしてから結婚した最愛の旦那がいた。

 旦那の出張の帰りに、桜の綺麗な公園で待ち合わせをしてお花見デートをするはずだった。

 待ち合わせ場所の満開夜桜。どれだけ待っても来ない、彼。響くサイレン。最後、病室で最愛のあの人は「幸せに、長生きして」と呪いの言葉を遺して逝った。


 なんでだよ。あたしはどこにも、どこにも、いけないじゃないかっ!




 そう、それから時が経ち、彼と出会ったのは旦那の命日。朝から冷たい雨が降る、満開夜桜に氷雨が降るときだった。

 あたしはいつからか、桜が咲くと夢遊病のごとく死んだ旦那との待ち合わせ場所で涙するようになった。そんな冷えきったあたしを半ば無理やり連れ帰り、温めてくれた……。


 バカな男だ。三十路過ぎた未亡人、しかも自分よりでかい女にプロポーズするとか……無いわぁ。でも、死んでしまった旦那を忘れなくっていいって。あの人との結婚指輪を外さなくて良いって……。


 いま、あたしの左手の薬指には、銀色に輝く指輪がふたつ。

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bo7wk1h6gotelxy3dwoitqr6rp3_15up_rd_ru_de1p.jpg 満開夜桜春氷雨 黒森冬炎様に頂きました。
― 新着の感想 ―
[良い点] なんて良い男を捕まえたのだ未亡人! そして影のある未亡人を手に入れた男よ。 まさしく、ういんういん。
[一言] よきでした (u_u*)
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