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四小節目:謎の女達

  四小節目


 新宿ライブ当日。

 今日は四月中旬の日曜日、陽気な春を感じる気候だった。


 俺、秋霖、咲愛、小雨の四人で立川駅北口デッキで待ち合わせていた。

 

 俺は楽しみすぎて、四人の中で一番早くきてしまった。まあ予定の三十分も前に来ているので、誰も来ていないのは当たり前である。俺ってば優秀。


 少し待って、来たのが、咲愛だった。


「おはよ、梅霖」


 なんかよくわからんがもじもじしている。


「おしっこ行きたいのか?行ってきていいぞ?」


「死ねばか」


 いや、おしっこ出すのは大事なんだぞ?人間の営みだぞ?


「じゃあどうしたっていうんだ」


「別になんでもないわよブス。川に転がってる汚い石に付着してるカビみたいな汚い顔しやがって」


 ひどいいわれようである。俺って石付着してるカビよりも汚いのか?


「まあそれはさておき、お前、前髪切った?パッツンにしたのか。似合ってるなぁ。可愛い!」


 俺は機嫌が治ると良いなと思い、本当に可愛かった髪型を褒めてやった。

 すると一瞬で咲愛は一気に顔が紅に染まっていった。


 X JA○ANの紅を歌いたくなってくる。


「え、、気づいてくれるとは思わなかった、、あ、ありがt、、、」


 正直全く何を言ってるか聞こえない。


「どーした?」


 俺はこう聞くと、


「死ね!うるさい!!聞くな!!!」


 と、強く言われてしまう。そこまで言われると聞くことができなくなってしまう。


「そっか、嫌だったのか、すまなかった」


 俺は咲愛が嫌がったのかと思い、しっかりと謝る。


「は!?別に嫌なんかじゃないし!」


 いや、どっちなんだよ。

 

 すると突然咲愛が目を俺に合わせて、頬を赤らめながら真面目な顔をする。


「ねえ、あのね?」


「うん?」


「あのさ、うち、梅霖のこと、す、す、すk」


「こんな人前で何やってるの?恥ずかしいわよ」


 咲愛が重要であろう言葉(推測)を放とうとした刹那、小雨がやってきた。


 すると咲愛が舌打ちをする。


「ちっ。なんでこんな時に、、」


 咲愛は残念そうな顔をする。俺も最後まで聞けなくて少し残念だなと思った。


 まあ、小雨がやってきたのでとりあえず3人は集まった。あとは秋霖だけなのだが…


<プルルルル>

 

 いきなり俺の携帯がなった。誰からの電話だ。


「はいもしもし」


『俺だけど』


 俺だけど?誰?

 ま、まさか、オレオレ詐欺!?俺は高齢者じゃないし、こんなものには引っかからんぞ!


「おい、お前オレオレ詐欺だろ。警察呼ぶぞ!」


『あぁ、大人しく金を出せ、、って違うだろ!秋霖だよ!』


 ほんとだ、よくみたら画面に「秋霖」という文字が書いてある。


「ごめん。んで、電話なんてかけてきて、どうした?」


『えーっとだな、俺、遅れるから先に行っておいてほしい。あと咲愛に話したいことがあるから、お前と小雨さんで先に新宿に行っておいて欲しい。って、おーい、聞こえるかー?』


 みんな、聞いたか?小雨と先に行っておいてだと!?あんな何するかわからない女と一緒に行ったらどこかで殺されそうだよ?え、秋霖保証できるの?ねえ。


「ごめんごめん。頭がパニック状態に…」


『ん?大丈夫か?頭でも打ったか?』


「君の発言が俺を殴りました。そう、これが言葉の暴力ってやつです」


『なんかよくわからんが、よろしくな。とりあえず咲愛に話したいことあるって言っておいたから、先に小雨と行っておいてくれ!ごめんな!』


「しょうがねぇなぁ。かしこまりました」


『すまない。よろしくな、ではまた』


<プーッ、プーッ、プーッ>


 電話の切れた音が鳴り続ける。


 今から今までで史上最悪なことが起きる予感しかしないのだが。どうしてくれよう。


 そういえば、なんとなく秋霖のやつ、急いでいる気がしたが、やっぱり本番だからか?まっ、いっか。


「梅霖君?」


 小雨が不安げな顔で見つめてくる。

 

 その不安げな顔、地味に可愛いんだよ!


「えーっと、咲愛、秋霖が話したいことあるんだって。って、あれ?」


 俺は今気がついた。

 いつの間にか咲愛がいなくなっていたのだ。


「咲愛さんなら、秋霖君に呼ばれたって言って、どこかへ行ってしまったわ」


 え。突然の小雨と二人きりイベント発生!?心の準備が…


「そ、そっか。そ、その、えーっと、じゃあ行くか…」


「そうね、行きましょう」

 

 ってかさ、よくみたら小雨のやろう、服装かわよ!犯罪級に可愛い。頭おかしいよこれ。

 大人っぽいコーディネートだ。もう少し普通の女の子だったら俺の好みどストライクなのに。


 それはさておき、秋霖と咲愛はなにを話しているのだろう。少し気になるが、ま、いっか。


「梅霖君、秋霖君のライブが終わった後、時間あるかしら」


 小雨が話しかけてくる。


「まあ空いてるけど。どうした?」


「デート、しましょ?」


「ん、え、はい?」


 うん。

 この女の子、何言ってるのかな〜?僕、わからないな〜。


「言葉の通りよ。新宿で、デートしましょ?」


 デートのお誘いだ。

 

 みんなだったら、どうする?


> いいですよ



  いやです


 ちなみに俺は誰とも付き合ったことないから、デートしたことないのは当然だ。

 ということは、俺の初デートは小雨ということか!?


 そんなの、断固拒否!


「いやです」


「強制よ?」


「絶対いやです」


「では、警察を読んであなたのことを痴漢ですとあなたのことを訴えるわよ?」


「デートしましょう。小雨から誘ってくれるとか、ありがたき幸せ!」


「よろしい」


 こいつ!痴漢とかしてないのに訴えるとか、可愛いからって卑怯だわー。絶対に関わりたくなかった脅しだわー。


「私とデートしてくれたらサービスで私のファーストキス、あげないこともないわよ?」


 そんなことでは惑わされないぞ!う、うう、、


「絶対デートしましょう。ってかデートしたいです」


 まんまと罠にはまってしまった気もするが、この際しょうがない。


「うふっ。あなたって単純なのね」

 

 なんでさ、俺の呼び方変わってるの?さっきまで梅霖君とか言ってたよね?なんでいきなりあなたって呼び方になってるの?恐怖を感じざるをえない。


「デートしてやるから、さっさと新宿にいくぞ」


「急がなくてもいいじゃない。新宿は逃げないから大丈夫よ」


「新宿じゃなくて秋霖のライブが逃げるわアホ」


「口悪い男はモテないわよ?」


「余計なお世話だ」


 そんなくだらないことを話している間に電車が来た。その電車に俺らは乗った。


「くだらないことではないわよ?」


 いきなり小雨が言葉を発した。ん?この人もしかして俺の心で呟いていることが聞こえちゃう人?本当だったら、僕、いろんな意味で泣いちゃうよ〜?


「おい、まさかとは思うが、俺が心の中で考えていること、分かっちゃう人?」


 すると、小雨はきょとんとした。


「ごめんなさい。ちょっと何言っているかよくわからないわ。あなた、さっきからブツブツ言ってるじゃない。それが聞こえてきただけだわ」


「それ、まじで?」


「まじだわ」


「まじですか?」


「まじだわ」


 おい、それが本当だったら今まで鍵括弧がついてなかった俺の言葉も全てきこえてたってことになるじゃないかおい。

 ってことは、さっき犯罪級に可愛すぎるとか言ってたけど、それも聞こえてたってことか!?


 まさか、これも聞かれているのか!?俺は小雨の方を向く。


「……どうしたの?そんなマジマジと私のことを見て。あ、わかったわ。私が可愛すぎて見惚れてしまっているのかしら?」


「ま、まあ、合ってないことはないな」


 それをいうと、小雨は少しえへっと喜んだ顔をした。


「大好き、よ、、」


 小雨もボソッと言う。しかし声が小さすぎてまるで咲愛のようだ。


「ねえ梅霖君、新宿デート、楽しみにしてるわね」


 どうしよう。なんか期待されちゃってるんですけど。どこに行くかとかも何も考えてないのに…どうしましょ。



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