三小節目:音楽の神、秋霖
三小節目
立川駅北口に着くと、先に路上ライブをしているストリートミュージシャンがいた。
仕方がないので、その人が終わるのを待つとする。
一応勉強の一環としてこの人の路上ライブを見た。
えーっとなになに?アーティスト名は、、
『エドガワ・シーラン』
いやめっちゃパクリじゃねえか!あの有名なエド・シー○ンのパクリやん。しかもしっかりとシェイプオブユーを歌っている。
地味にうまい。許してやるとする。
しかし、割とさっさとエドガワ・シーランさんが場所を退いてくれたので、あまり長い時間待たずに済んだ。
秋霖は慣れた手つきでライブの準備を始める。そして準備が完了すると、
「さてと。始めるとするか」
と言って、 秋霖はすぐにピアノを弾き始める
最初は和風な曲であった。
秋霖が弾き始めた途端に、周りがざわつき始めた。
「「あ、あれ、秋霖様じゃない?まじぱねぇ」」
「「まじ?うちらめっちゃ付いてるじゃん。秋霖様に会えるとかまじ感謝なんですけどー」」
本当に感謝しているのかはわからないが、秋霖が様付けされていたので、秋霖が悟りを開いていたことがわかる。
「「お、秋霖様じゃん!すげー!」」
「「きゃーー、秋霖様ーー♡」」
と、あちこちから若人が集まってくる。
とてつもない人の量だ。まあ今は金曜の夜七時だから学校帰りの学生が多いということなのだろう。
一曲目が終わる頃には北口のデッキを埋め尽くしてしまった。
秋霖は一曲目が終わって拍手が鳴り止むとすくっと立ち上がった。
「皆さん!盛大な拍手、どうもありがとうございます!今日はぜひ楽しんでいってください!そして、なんと今週末の日曜日に新宿南口で路上ライブが決定しました!暇であればぜひ来てください!
と、秋霖が喋った、アホみたいにうるさ…ではなく、素晴らしく大きな声で歓声が聞こえてきた。
「「キャーーーーーーーーーー♡秋霖様ぁぁぁぁぁぁぁ♡」」
秋霖様。親友だよな?ちょっと君の信者分けてくれよ。
「では二曲目に移ります」
二曲目が始まった。最初は優しいメロディーから始まる。
「「メロメロメルシーじゃん!」」
「「メロメルだ!まじ秋霖様最高!」」
どうやらメロメロメルシーという曲らしい。
秋霖は全て自作自演なので、当然メロメルも秋霖が作曲した曲である。
うん、この曲の名前、ダサw←あ、草生えちゃったよ。
メという文字がいっぱいありすぎて、なんか〆さば食べたくなってきた。
ん?なんだって?何言ってるかわからない?
安心してくれ。俺も自分で何言ってるかわからない。
メロメルはとても素晴らしかった。最初の優しいメロディーとは違い、サビ前で三十二分音符で畳み掛け、しかし、サビでは、ゆったりとした優しいメロディに戻る、曲調の変わりようがまるで人生を表現しているかのようだった。鳥肌が出てもおかしくない、そんな曲であった。
メロメルを弾き終わると、さっきよりも大きな歓声が聞こえてきた。先ほどよりも人が多くなってきているのであろうか。
「大きな拍手、ありがとうございます!三曲目に弾く曲は……新宿ライブまでのお楽しみです!新曲なので楽しみにしておいてください!
えーーーーーーーーーー。俺楽しみにしてたのに、そんなのありーーー?と俺が思っていると
「「秋霖様の焦らしプレイ、好き♡」」
ギャルっぽい信者が言っていた。
恐怖を感じるとはこのことかと思った。周りの人たちも引いてるやん。
まあそんなこんなで無事(?)立川ライブが終わった。
「めっちゃ立川ライブよかったぞ!」
と、俺は秋霖に言った。
しかし秋霖は納得いかない顔でこう言った。
「ありがとよ、でも今日は自分をしっかりと出しきれなかった。日曜までには完璧に仕上げる」
「おう!頑張れよ!」
すると、秋霖が元気よく
「ああ!日曜日絶対成功させてみせる!楽しみにしておけ!」
と強気な表情で言った。
応援してるぞ秋霖。心から応援してるからな。
しかし、この時、次の新宿ライブで秋霖のライブを見るのが最後になることを、梅霖は知らなかった。