一小節目:プロローグ
一小節目
俺は学校に着いて、爽やかな朝を迎えていた。
あと二十分でホームルームが始まるというところだ。
俺は平凡な男子高校生二年、春日田 梅霖だ。成績は中の下、運動神経も良くない、顔もイマイチ。パッとしない男である。
嗚呼神様、なぜ俺はこんなに恵まれないのだ、と言いたい。
しかしそんな神様に見捨てられた男にも親友がいる。
「よっ!おはよ!」
ちょうどいいところでその親友が話しかけてきた。
ナイスタイミング!
紹介しよう。こいつは俺が生まれた時からずーっと一緒の幼馴染、木枯 秋霖だ。
こいつとは誕生日が三日違いで、産まれた病院が同じなのである。
俺の母と秋霖の母はその病院で仲良くなったらしく、母たちは退院した後も仲良くしていた。
だから自動的に俺と秋霖は仲良くなったのである。
ちなみに誕生日は秋霖の方が早く十月十日、数字で書くと「|◯|◯」まるでマルイのマークみたいになる日だ。
そしてその三日後に俺の誕生日を迎える。
俺は昔から引っかかっていたことがある。
幼馴染の秋霖は「秋霖(秋雨)」の時期に生まれたから秋霖っていう名前なのはわかる。
けどなぜ俺は梅霖って名前なのだろうか。時期が反対な気がするのだが…
完全に母が秋霖に対抗した名前としか考えられないのだが。
そんな話は置いといて。
話を秋霖の紹介に戻そう。
秋霖は頭の方は中の下、運動神経も悪い。しかし、顔の方は、俺と違ってイケメンなのである。
だからとてつもなくモテるのである。
わずか誕生三日ずれただけでなぜここまで差ができてしまったのだろうか。
しかも秋霖は特技を持っている。
それはピアノだ。
秋霖は自作した曲を路上ライブでピアノで自演している、つまり自作自演する、ストリートミュージシャンだ。
俺はその路上ライブに行ったことがないのだが、噂によればかなりすごいらしい。
とても人気とも聞く。
主にJR立川駅で路上ライブをしているのだが、駅前のデッキが見物者で埋まるほどなのだという。
とにかくものすごく魅力的な凄い人だということがわかるだろう。
だから俺と違ってモテるのだ。
ちなみに俺もピアノをやっていて、作曲をし、Youtubeにも投稿しているが、視聴回数10回と、全く伸びないのである。
どこで差が生まれてしまっているのだろうか。
嗚呼神様、なぜこんなに恵まれな…(以下略)
そんなことを考えていると、秋霖が話しかけてきた。
「なあ梅霖、俺今週末、初の山手線沿いの駅でライブをしようと思うんだが、来てくれるか?」
と聞いてきた。
評判がめちゃくちゃ高いし、幼馴染のライブは是非行っておきたいところだ。
「んじゃ行くわ」
と返答した。
「うっしゃ!さんきゅー」
「あ、でも山手線って言ってもどこでやるの?」
「んー、どこだと思う?」
質問を質問で返す秋霖。
俺は新宿かなと答えた。
「正解だ。南口でやる」
一発で正解したことに驚いていたが、確か新宿南口は、最近になって路上ライブが行われないよう、警察が良く通るようになっているはずである。
「警察大丈夫?」
と俺は聞いたが
「俺を誰だと思っている。木枯さんだぞ。路上ライブどんだけしたと思ってるんだ。警察の対応くらいにだって慣れてるよ」
と自信満々に言った。
ならいいのだが…
そんなことをしているうちにホームルームが始まった。
秋霖が新宿で路上ライブすることがすごく楽しみだ。多摩地域のみならず、都心に羽ばたいていく挑戦的な姿勢の秋霖がかっこいいなと思った。
素直に凄いと思った。
ということを考えていると、
「なにぼーっとしてるのよ。冴えない顔がもっとキモくなってるよ?」
あれ、もうホームルームが終わっていたのだと驚愕した。
というのはどうでもよくて、容赦ない言葉で話しかけてきた女は、柏川 咲愛だ。
こいつとは中学から同じ。元々ボカロを語り合う仲間で、結構仲良くやらせてもらっている。
秋霖とも仲がよく、たまに俺と咲愛と秋霖で遊びに行ったりもするくらいだ。
こいつはロシア人のハーフで綺麗な金髪である。
中学の頃からツインテールをしていて、認めたくはないが、めちゃくちゃ可愛いのである。
俺と一緒にいたらもったいないくらいの美人だ。
そして女の子らしいいい匂いが今日も、、、、
あーーーーーいい匂い。
……いかんいかん、俺が変態と勘違いされるところだった。
「ねえ梅霖、なにいやらしい目で見てるの?控えめに言って、死んで欲しい」
あのぉ咲愛さーん???控えめに言って死ねだったら、控えめに言ってなかったらどうなってたの〜?
かなり恐怖を感じるんですけど〜?
しかしそんな口悪い人ではあるが、本当は結構優しい。
俺が勉強でわからなかったところをすごく丁寧に教えてくれたり、咲愛と二人で遊びに行った時に俺が財布を家に忘れてしまって、昼食を奢ってくれたり、雨が急に降ってきた時に傘に入れさせてくれたりした。
あと、俺の制服のネクタイが曲がっていて直してくれたこともあった。
その時は不覚にもキュンときてしまった。
好きなのかな、とも思ったが多分それはない。
勉強、運動、料理、優しさ、そして美しい顔、綺麗な髪の毛と、全てを兼ね備えた最高の女であるが、二つ欠点がある。
それは、
とにかく歌が下手なのだ。
カラオケに行くといつも五十点台、高くても六十点。しかもほとんど音が外れていて、また歌詞がフレーズに入りきっていない。
こいつとカラオケに行くと無性に腹が立ってくるのだ。
歌が下手なのは個性である。
しかし、その辺の歌が下手な人たちとはレベルが違って、もうわざとなのではないかと疑ってしまうくらいなのである。
もう一つが、俺のことを嫌いだのキモいだの、とにかく嫌いアピールをしてくるところだ。
「あ、咲愛。今週末に秋霖が新宿で路上ライブやるらしいんだけど、行くか?」
咲愛もこの前秋霖の路上ライブに行きたいと言っていたので誘ってみた。
しかし、
「は?なんでお前といかなきゃいけないの?嫌なんだけど。一人で行けば?」
容赦ない!!!!!!うざい!!!!
「わーったよ、もう一人で行くよ」
すると咲愛は顔を赤くして怒る。
「なんでもっと一緒に行きたいアピールしてくれないの」
と、ボソッと呟く。
が、俺にはなにを言っているかきこえなかった。
「わかったよ。行けばいいんでしょ行けば」
と嫌そうに言っていたので
「んじゃ行きたくないならいかなくていいぞ」
と言ったら
「は?いかせなさいよバカ」
と言ってきた。
どっちなんだよと思ったがまあ行くなら行くでいい。
そんな話をしていると後ろの方から
「あの、私も行きたいわ」
と、声が聞こえてきた。
行きたいとか言ってきたやつの名は五十嵐 小雨だ。
嵐なんだか小雨なんだかはっきりしてくれ、雨量で学校までバスで行くか自転車で行くか、変わってくるんだぞ!
とつっこみたくなるような名前だ。
「私、路上ライブ興味あるわ」
小雨はクラスでは陰キャに部類するが、普通に可愛い。
見た目は黒髪ロングの清楚系。
ピアノがアホみたいに上手く、数々の国際的なピアノコンクールでも優勝をとりまくっているくらいだ。
小雨は陰キャのため、クラスではとても静かなので友達もいない。
コミュ症なのだろう。
なのにそんなやつから話しかけてくるなんて、明日は雪なのかと思った。
小雨は話を続ける。
「私、梅霖君のこと気になる」
ん?え?いきなりなにを??
「は?小雨さんが梅霖を?きっも」
俺が小雨に返す前に咲愛が先に反応していた。
「気になるって、どういう?」
俺は返答する。
「簡単なことだわ。私は梅霖君のことが好きなのよ」
え、。動揺が隠せない。
「ふーん。あんた、梅霖のことが好きなんだ。へー」
ん?咲愛さん?なんでそんなに小雨のこと睨んでるの??
僕、怖いよぉー。
「まぁいいや。あんたもうちらと新宿に来てもいいよ?」
「やった♪」
あのー、俺には発言権ないんですか??でもまあいいか。別に一緒に来ても害があるわけではないし。
「梅霖君のこと、今週末必ず落としてみせるわ♡」
あのですね、俺を落とすとかなんとかは自由にしてくださいって感じなんですけど、最後のハートマーク、すごく恐怖を感じました。
ってかあんまり話したことないのに、なんで俺のこと好きなんだろう。
疑問に感じた。
そんなことをしていたら一限目が始まる鐘が鳴ったので席についた。
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