病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。4
白い髭の優し後なおじさんを中心に、その横に右大臣と左大臣。
そして、壁際の椅子には未だに此方を睨んでくる姫が座っている。
有識者会議、と言ったら聞こえは良いが、ようは断罪である。
命令以外の行動を取った勇者への。
「………議題について、読み上げさせていただきます。
今回の魔王討伐において、勇者は王の命令である魔王の討伐を果たした後、我が国に危害が加わるやも知れない危険分子である魔王の娘をあろうことか救い出し、連れてきた。これは、国家の平和を揺るがす重大問題である。との、意見が、議会から出ていますが、デリス。何か言い分は。」
甲冑を外され、後ろ手に回されたデリスは勇者であるのに罪人のようだった。
「……分からない。彼女のどこが危険だというのだ。」
ホールに声が響く。
高い天井にぶつかった声という波がそこにいた者達の鼓膜を震わせた。
「……そりゃあ、あれだろ。俺達人間では太刀打ちできない魔力を持っている。魔族の王の魔力は特別だ。俺の右手が傷むほどにな。」
頬に大きな刀傷のある左大臣が言う。
その手は指が無い。
昔戦った魔族の王に吹き飛ばされていたのだった。
「……………あんな子供が、私達にたてつけると。」
「年齢で力を測るのは良策と言えないぞ。若くても、弱くても、才能が無くても、ほんの少しの知恵さえあれば、この世に出来ないことはあまりない。餓鬼が油断した大人の四肢を食いちぎっていくことは往々にしてある。」
「…………。」
では、どうしろというのか。
今すぐこのてで処刑しろと?
「………話を延ばさないでください。処刑したいならすれば良い。しろというなら命令をよこせ。」
右大臣が眼鏡の上の眉をピクリと動かした。
今まで口を閉ざしていた王がゆっくりと立ち上がる。
「そう、カッカしないでくれ勇者よ。この度は魔王討伐、素晴らしい働きだった。」
「恐れ入ります。」
これでも一応王家の家来として部類すれる勇者だ、敬意を称し、頭を垂れる。
穏やかな声でよいよい、と笑うと、王は顔を上げるように言った。
「さて、君の働きは本当に素晴らしいことだ。それは、確かだよ。たとえ、その後になにか問題があったとしても、私はそのことをまずは褒めるべきだと思う。議会の皆もそれは分かってくれるよな。」
目を細めた笑顔のまま、俺の後ろに並ぶ議会議員の方を見る。
驚いたようにもたついたあと、勿論です、と議会長が言う。
それに満足したように何度か頷くと、玉座に戻った。
「さて、デリス。君はどうしたい。」
「はい。質問の範囲が広すぎるかと。」
「うん。そうだね。つまり、君はしたいようにすべきだと言うことだよ。君自身も、そして君の拾ってきた戦利品も。」
「戦……利品?」
おそらく、いや、確実にあの娘のことを表していると分かった。
戦利品。そうだ。そう称せば、確かに、逃げ道はある。
「お言葉ですが、王。」
右大臣が王に進言する。
その言葉を遮るように王が腕を上げた。
「デリス。分かっているな。持ち帰った宝は責任を持って管理せよ。その宝が人の血を吸うことがあった場合、私達は勇者を罰せなくてはならない。それは私も、そして我が娘も望んじゃいない。」
姫の方をチラと見る。
あちらもこちらを見ていたようで一瞬目が合う。しかし、素早く逸らされてしまった。
セレーヌ姫なりの優しさだろう。
遠望の国から送られてきた扇と言うもののの下に隠された顔が、ほんのり赤く染まっていた。
きっと、柄でもないことをしたと思っているのだろう。
それは、とても有り難くて、彼女を今一度愛おしく思うには十分なことだった。
まあ、自分ご彼女と結ばれることは無いのだが。
「恐れながら、進言をお許しください。私は、田舎に下がろうかと思っております。手に入れた宝はすべて国に納めます。」
「………ふむ。そうか。」
「しかし、ただ一つ。どうにも手放しがたい宝がありまして、それを所有することをお許し願いたい。」
背後がざわつく。
左大臣はなんだそれ、と右大臣に聞き、聞かれた方は二つの意味で頭を抱えていた。
「許す。若隠居とは羨ましい限りだ。余生を楽しく過ごせ。」
「はい。また、魔王が現れましたら、是非ご依頼ください。」
「そうだな。娘のためにも、またお世話になろう。」
王は静かに笑った。
魔王の娘を両手にだいた俺は、いままで旅をともにしてきた仲間に見守られて、今城門を出ようとしていた。
レジーナが両手に抱えきれないほどの荷物を渡してきた。
こんなにいらないと言ったら、お前じゃなくて、その子のためよ。と、少女の方を指さされる。
これにはぐうの音も出なかった。
とにかく、おそらくもう長らく会うことがないだろう二人に、ありがとうと一言残し、握手をする。
長らく共にいたからか、それ以上のものは必要なかった。
と言うより、あまりに物事がトントン拍子で進みすぎて、実感がなかった。
だからせめて、その二つの行動に万感の思いを込めたつもりだ。
未だくったりしている少女を抱き上げると、せめてもの報奨だと渡された馬にまたがる。
行き先は分からなかったが、きっと魔王城よりは近いはずだ。
「じゃあな。」
「ええ。」
「元気で。」
簡素というか、一見冷ややかにさえも思えるやりとりでも、これがすべてだった。
***
こんにちは。まりりあです。
左大臣さんは、決して、馬鹿ではないですよ?
ただ、うん。筋肉が脳にまで進行してる系の人なだけで。
ただ、偉い人で凄い人なんです。
さあ、勇者と魔王の娘の田舎暮らしが始まりますよ!
楽しみですね。
ところで、魔王の娘なんですが、きちんと名前があります。
その名も………ミミィ。
次回からはなんの躊躇もなく、使わせて頂きますので、
「え?誰?」ってならないでくださいね。
では、次の機会に。