病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。29
……。
たとえば、
目の前で人の死を看たら人はどう思うだろうか。
人により、反応は違うだろう。
悲鳴を上げる。
固まる。
顔を歪める。
十人十色の反応を見せるだろう。
俺は、慣れていたと思っていた。
目の前で命が消えていくことに、
この仕事をしていれば他人の死も、自分の死も、すぐそこにある。
手を伸ばせば届く。
足を滑らせれば転げ落ちる。
その距離にそれはあった。
無。
自分の死とは無である。
だが、他人の死には多くの理由を価値を求めたがる。
当人が意図せぬところに。
さて、当人が価値を持たせて死ぬのなら、
それはどういうことなのだろうか。
死んだ後のことはどうにも出来ない、
自分の死に意味を持たせることは不可能なのだ。
では、どうするか。
自分の死を他人に託し、意味をつけてもらうのだ。
ミミィの場合、それはアルジェだった。
そして、目の前に立つ父親達だった。
なぁーんだ。
意外と簡単なのね。
痛みもある、苦しくもあるが、
元々発作などをよく起こしていたから、
苦しみは多少我慢できる。
でも、やだな。
こうして、支えられると、思っちゃうではないか。
ああ、見たいなって。
もう、あんまり見えないのに、
求めちゃうじゃないか。
「ミミィ!」
「……。」
玉座の上、四肢の細い華奢な少女はその体に自ら杭を突き立てた。
心臓の上、一発で死ねるところに。
青天の霹靂。
まさに言葉どおり、霹靂に撃たれたような衝撃があった。
ごぽっ……と、ピンクの唇から、赤い血が流れる。
力が抜けるようにその体は玉座から倒れ込もうとした。
が、
「倒れちゃ駄目。」
その体を支える少女がそこにいた。
「アル……ジェ……」
「ん?もう長くないんだから、無駄に話さないほうが良いよ。」
「ん………。」
赤い血を拭ってあげ、少女はミミィの顔を前に向かせた。
「……現王の……遺言、として次期王の座を……デリスに……、くっ…、ゲホッ、けほっ……」
咳き込む度に血が溢れて飛ぶ。
痙攣するように震える体を玉座に縛り付け、ミミィは言葉を続けた。
「アル……ジェ……、あなたはアルマデス……チェスタ…と、共に、彼等を……ぐっ、ごほっ……」
「うん。分かってる。
「はぁー、はぁ、おね、がい、ねぇ……」
最早、首も据わらず、うつむき気味である。
それでは喉に血が詰まってしまうので、アルジェがそっと顎を持った。
「ミミィ……」
呆然と、デリスは呟いた。
それでも、ここでは反響して、ミミィの耳に届く。
「はぁ、っ、なに……デリス……」
「お前……元からこのつもりで……」
「うん………こほっ……あげたでしょ、花。」
「花?」
「うん。」
懐の花。
何のことか分からないという顔をすれば、
疲れた顔でミミィは笑った。
「はっ……はは…、やっぱり……花、言葉、知らない……ね。」
「すまん、分からん。」
デリスは、手に持った花を睨み付ける。
花言葉なんて洒落たもの、自分には似合わないし興味もなかった。
こんな時に、それを後悔するなんて。
「まあ……良いよ。でもさ……」
コヒュー、と、ミミィの喉から高い音が鳴る。
喘息みたいだが、喉に血が詰まって息が通らないのだろう。
弱々しく笑ったミミィは、消え入りそうな声で問いかけた。
自分に向けたみたいな、デリスへのとい。
「自惚れても、いい……かな……、私のために……来てくれ、たって……。」
「っ!!」
「勇者……だから…とか……、人々の、ため……とか……その中の……一つで……いい……からぁ……」
レジーナが崩れ落ちた音が聞こえた。
自分の子供に重ねたか、
時たま、相談などをしていたため、情が移ったのか。
分からないが。
少なくとも言えることは、彼女が選んでくれたピンク色の口紅の引かれた唇から発せられた言葉に、
彼女なりの何かを感じたのだろう。
その優しいピンクが黒々しい赤に染まっていっても。
抱きしめていた。
引き取ったとき、あんなに小さかった体は、いつの間にか大きくなっていて、
あんなに温かかった体温は、成長と共に低く、そして今、冷たくなりつつあった。
彼女の失われていく熱を取りこぼさないようにきつく抱きしめた。
「い……いたい……」
「っ……すまない。」
「いい……よ。あったかいなぁ……デリスは……」
「そうか?」
「うん。鎧の上からでも分かる……あのね……」
耳元で囁かれた。
俺は、
ほんの少しミミィを恨んだ。
「ごめん、なさい。ありがとう………」
消え入るような感謝の言葉が、
彼女の最後の言葉となった。
***
こんにちは。まりりあです。
さぁ~て、さてさて、皆さん。
ここで馬鹿みたいなこと言ってもしらけると思うので、特に言うことありません。
では、また次回。




