病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。3
「え、ええ………」
困惑したように呟くデリス。
姉妹もいない彼にとって、女の繊細な感性ほど意味不明なものは無いらしい。
今回ばかりは、完璧に姫の勘違いなのだが、自分が何かしたのではないかと頭を抱えだしてる。
可愛そうなものである。
「デリス、ドンマイ。」
レジーナが帽子を被り直しながら、彼の肩に手を置いた。
「……いや、わからねぇ。おれなにかした?」
「あえて言うなら言葉が足りなかった。いや、君は何も悪くないかな。」
「だよな。」
じゃあなんでこうなるんだよ、と、唸る。
可哀想な男だ。
本当に。
「う……うん……」
そんなことをしていた三人の目の前で、少女が唸る。
そして、そっと目を開けた。
長い睫毛に隠れた金の縦瞳孔の瞳は魔王のそれと一緒だった。
暫くぼう……と空を眺める。
状況が把握できていないのか。
掠れる声で言葉を発した。
「ここ………どこ……?」
「ここは、王都だ。王の城の医務室だ。」
「王………?だって、王はお父様じゃ………」
「それは、魔王。ここは、人間の王の城だ。」
「人間…………?にん……げん…」
確認するように反芻する少女。
それを見守っていた人々の前で、少女はそっと目を閉じた。
突然その額にある角が光り出しのようにた。
青い光が溢れるように流れ出る。
勇者の一行だから分かる。
これは、魔力だ。
極限まで洗練された混じりっけの無い魔力。
まずい!
そう思った三人は思わず戦闘態勢に入っていた。
勇者は剣に手をかけ、
魔法使いは杖を握り、
武闘家は拳を握りしめた。
「……くっ………ふぇ…おとうさま……お父様……どこぉ……」
泣き声に三人ははっとする。
よく考えれば分かったのだ。
そもそも、悪意と戦意をかんじない。
魔力を感じただけでここまで過剰に反応してしまうのは、魔王討伐直後の副作用というか、常に気を張っていたことから来る癖というか。
とにかく、無く女の子の前でする行動で無かったと、三人は手を下ろした。
たとえそれが魔王の子であったとしても。
「お父様……ないの……お父様の魔力が……どこにも」
「魔力が分かるのか。」
「うん。ずっと……遠くにいても…分かる。感じれる。でも………今は……分からない。」
「そうか……。すまない。君の父さんは、私達が殺したんだ。」
「………えっ……」
目が開かれる。
信じられないというように此方を眺めてくる。
目線が痛くて、離したかった。
でも、出来なかった。
幼い少女の親を殺したものとして、真っ直ぐに向き合うのがせめてもの償いだった。
「なん………んで……」
「君の父親は魔王だった。それ以上でもそれ以下でも無い。この国の王様が魔王を倒してこいと、私達におっしゃられた。故に殺した。」
「え…………じゃあ、なんで私は。」
「お前を殺すのは任務外だ」
嘘だ。
本当は殺せなかっだけ。
殺したくなかっただけ。
この小さな体に終焉を迎えさせるのは、何となくいやだった。
無責任だけど、生きていて欲しかった。
「………でも、私は、どうなるの?殺……されるの?」
「さあ。」
どうも言えなかった。
どう考えても処刑だろう。
だって、魔王の娘なのだ。
魔族であるということすら差別の対象になるのに、魔王の娘など生きてる意味すらも見出されないだろう。
生きてる意味とは、なんなのだろうか。
この娘よりもよっぽど他人を不幸にする人間はいるだろうに、そいつらは同族だからと黙視され、この娘が人ではないという理由で殺されるのだから。
正義を背負うというのも、やりきれない。
分厚い城の最奥の扉を小さい手がノックした。
鈴の転がる。と言うより、細い糸をピンと張って弾いたような儚げな声が響く。
「お父様。入室をお許しください。」
声に反応するように内側から扉が開く。
「おお、セレーヌ。どうした。」
「お父様。お願いがありますの。」
机の向こうに座る父親がペンをそっと置いた。
窓からの逆光で影を背負って見える。
「君のお願いというと、デリスのことかな。」
「はい。彼のことはもう聞きましたか?」
「ああ、右大臣から聞いたよ。大変だね。」
「では、どのような決断を下すおつもりですか?」
「…………。」
にっこりと笑う。
少し、背中が粟立った。
嫌な空気だ。
「姫が内政にあまり口出しするものじゃないよ。私は、君を巻き込みたくは無いのだが。」
「あっ、も、申し訳ありません。出過ぎた真似をいたしましたわ。」
皆は、この父のことをふわふわした決断力のいまいち無い、威厳の内奥と勘違いしているものもいる。
この男の恐ろしさを理解しているのは、私と、両大臣。そして、議会の一部の者だけだろう。
通常時は見えない、見せない恐ろしさがそこにはあった。
頭を垂れた私の頭をポンポンと優しく叩く。
編み込んだ髪が乱れるのも気にならなかった。
「良いんだよ。娘が勇者と仲良しなのは、良いことだ。こんなことにならなかったら、彼と結婚させるつもりだったんだよ?気付いてた?」
「え、ええ。まあ。私も、彼の方のことは好いておりますし。」
「え“………パパと結婚するんじゃ無いの?」
「お父様は………その………」
ゴクリとつばの飲み込む音がする。
目の前の、愛娘に何を言われるのかと戦々恐々している父のか。
将又、上司の機嫌が娘のたいどによって決まる役人達のか。
沢山の人の無言の圧力を感じながらぽつりと呟いた。
本当のことを言うのは、恥ずかしくて、頬が熱くなるのを感じる。
「お父様は、好きすぎて結婚できない……。あ、それに、お父様にはお母様がいますし。私は、両親のこと、お似合いだと……あ、ら?」
気が付いたら、目の前に座っていた父の姿が無くなっていた。
否、机に突っ伏して、見えていなかっただけだ。
「お、お父様?」
「なんだっけ………聞く聞く、え、もう。やだぁ。デリスの件、セリーヌのしたいようにしていいよ。全権あげるよ!なんてったって、セリーヌちゃんはお父さん大好きな良い子だからね。」
「は、はあ。ありがとうございます。」
視界の隅で秘書官が親指をたてていた。
チョッロ……
***
こんにちは。まりりあです。
この話、題名を長くしたんですよ!今時の話は名前が長くて、名前だけでどんな話か分かって良いですね。ですが、大変なのは、打ち込みに時間がかかること。
作者でさえ、時々間違えてしまいます。てへ。
誤字脱字ありましたら、お知らせくだされ!
それでは、いずれかの再会まで、御免!古典風。