病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。26
つまるところ、親の心子知らずという奴である。
この世に点在する多くの悲劇の中に、それは存在するだろう。
入れ違いはよくあることだ。気持ちも、行動も。
喜劇王シェイクスピアもそれを上手く使い込んだわけだ。
いくら血がつながっていようと、共にいた時間が長かろうと、
互いの思っていることを理解しきるのは人には無理である。
ただ、
どう考えているかを考えることは出来る。
それは、立場が近しく、
考え方が近ければこそのものだが。
「………君ならさぁ、分かるんじゃないの?」
「……さあ、どうでしょうか。」
森の中、共に妖精が運んできた言葉を聞いてくれたアルジェがぽつりと溢した。
曖昧な答えを返したのは、自分でも分からないから。
信じてあげたい自分の考えが、理性が導き出した答えと矛盾し、1番苦しんでいるのは自分だから。
でも、ここまで来たら。
彼のために命を擲つことこそが、最上の美徳であるように思えてならない。
「ふ~ん。まあ、私には関係ないし、親の顔なんて、もう忘れちゃったからねえ。考えてたことなんて、分かるわけもない。」
「考えが理解できるのは、その者と近しい考え方を持っていて、その者の立場を理解している者。言葉にすると少し違う気もしますが、そうでしょう。」
「まあね。こうしてこの子達と共にいるのも、一緒に戦えるのも、この子達が私を理解してくれているから。」
ねぇ~、と、周りの光を手でかき回すと、それにそって光が動いた。
「アルジェが心を開いているからです。私は、結局彼の心は分からない。彼は、美しい心しか言い表してはくれなかった。多く美しい面を見ると、その分計り知れない闇があるようで。」
「なるほどねぇ~。」
ばさっと鳥の羽ばたく音がした。
近くの木の梢から、二、三匹羽旅だったのだ。
家族か。
まとまって生活するグループか。
あの中にも周りの者を理解したいと悩む私みたいなのはいるのだろうか。
手をかざす。
それは一段と突き抜けて青く。
木の葉から漏れる光が眩しい。
黄色、赤、オレンジ。
暖かい色の光に照らされ、心の孤独さが身に染みた。
これは、思い込みだろうか。
孤独は思い込みだろうか?
それでも、
もう、この思い込みが心地良い。
なにも手にしていない私の、1番重いものをあなたに。
きっと貴方は要らないでしょう。
困って、笑ってくれ。
「子供は親の心は分からない。一生追いつけない何時まで経っても親は親だから。分かるはずもないんだ、親は、子供には綺麗な心しか見せたがらないから。それは、子供も同じでしょ。」
「そうかも……知れません。」
「どう?三人も親をもつ子。」
服の上から、紅の入ったケースの輪郭をなぞる。
これは、私が使わなくては。
私のためのものだ。
「いつか……私が親から大人だと認められたときがありました。」
「……。」
「紅を、渡されたんです。その時、あるおばさんにも言われました。親の心子知らずだねえって。」
「………それで?」
「私は、親にこそ、子供の気持ちを知ってもらいたかった。でも、私が隠してたんですか?」
ポケットから取り出したケースは冷たかった。
銀のバラの花びらが少し欠けていた。
つきんっと、痛みが走った。
胸に。
これが精神的なものなのか、身体的なものなのかは分からなかったが、痛かった。
眉をしかめるほど。
ゆっくり蓋を開けると、そこにはあの時と変わらないピンク色。
「良い色だねぇ。」
「はい。」
紅差し指でそっとなぞって唇に乗せる。
塗り方なんて知らないから、上手く塗れているかも分からない。
あまりに雑な塗り方にアルジェが苦笑いを溢した。
「了解。分かったわぁ。後で塗り方教えてあげる。」
「ありがとうございます。これからは毎日差そうと思ってたので。」
「へえ。急な心境の変化?それとも忘れていたの?」
「忘れたことなんて一度も。ただ。」
化粧なんてしたら、デリスから追い出されるから。
いつか嫁に出されるから。
それは嫌だと思っていた。
でも違う。
デリスがくれた、
自分の短剣を売ってまで用意してくれたこれは、
「これを塗っていたら、デリスの娘でいられます。」
「デリス、それが君の親?」
「はい。血の繋がらないもう一人の親です。そして、私がこれから倒される、勇者の名です。」
「………。」
鳥が、鳴いていた。
タイミングも音もバラバラに、ただ、皆一生懸命に声を上げていた。
誰かを呼んでいるのか。
将又、寂しさを紛らわすためか。
「お馬鹿さん?」
「はい?」
「なぜ、殺される?」
「それしか、方法がないと思ったから。」
「盲目的にもほどがある。デリスは知ってるよ、見たこと無いけど感じたことはある。あれは…こわぁい男だねぇ。」
「そうですか?」
「うん。そうだょ。それはあなたも同じ、その隠した胸の内の計画、ぜぇーんぶ、私には分かる。」
「分かるんですか?」
「分かるとも。だてに長く生きてない。さて、ハッピーエンドは要らないかしら?」
「今でも十分……」
「甘い!貴方は発想は良いけど、詰めが甘すぎる。それじゃあ最悪両方死ぬ。もしくは貴方は父親を悪に仕立て上げることになる
。」
「………はい。」
「分かってたならどうにかするだけの努力をしなさい。力は、ここにあるんだから。」
アルジェは立ち上がった。
***
こんにちは。まりりあです。
ううむ。きつい。
鼻水が止まらない。風邪じゃないんですけど、花粉かハウスダストかでもう駄目です。
窓閉めろよ。
では、また次回。




