病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。
___どんな男かと思ったら、こんな奴だったのねぇ。
「結構な言いようだ。」
___かっかしないで、まるで山羊のよう。
「ふん。」
揶揄われているのは分かっている。
妖精という生き物は往々にしてそう言うものなのだ。
他の種を揶揄って楽しんでいる。
まるで彼等の拠り所である自然のように。
「何のようだ。寝顔を見られたから、殺すのか?」
___ああ、そんな噂が立ってるの?嫌だ、そんなことしないわよ。
「しないのか?」
___ええ。あれは作り話、そんなことしないわよ。
「そうか。」
剣から手を外す。
身構える必要も無さそうだ。
___よしよし、その物騒なものがあるのは、こっちからしても迷惑なのよ。
私らの自然の産物を良いようにしてくれちゃってぇ~と、妖精は放く。
可愛い見た目に反す荒々しい物言いが印象的だった。
「何のために現れた?」
___……まあ、頼まれごとをね。あなたの、大切な人から。
「大切な人?」
___ええ、ミミィとかっていう少女からよ。
「ミミィが?この近くにいるのか?!」
___いないわよ。いたら私なんかを通すはずないでしょ。もっと向こうの妖精からの頼まれごと。
妖精は指をさす。
丁度太陽の光が漏れ出し、映し出した山の輪郭が見えた。
「なにを?」
___一言、待ってる。と、あと、これ。
妖精はその美しい日根を二、三回羽ばたかせる。
キラキラとしたものが飛んだ。
目の前に落ちてきたのは、小さな花だった。
いや、花の形をした石?水晶か。
「これは?」
___はぁ?見て分からないの?花よ。
「しかし……」
___私達は妖精よ?自然の花をむしって渡すわけないでしょう?これは、魔法でで出来た花なのよ。
五枚の大きな花弁が美しく、透明な花だった。
残念ながら名前は分からないが。
「これを、ミミィからか?」
___ええ、悪趣味というか、趣味が良いというか。今度あったら言っておきなさいよ。
「は、はあ。」
花の趣味を言うなら、自分は全くもってこだわりがないので、ある意味これで正解なのかも知れない。
が、まあ、
「もし良かったら、ありがとうと伝えてくれ。」
___……良いわよ。あなた、あの子の何なの?
何なのか。
困った。
「そうだな。親代わりだ。残念ながら親としては未熟な上に、結局良い親にはなれなかったが。」
そんな俺が、親代わりと、名乗って良いものか、少し戸惑った。
そして、戸惑った自分に戸惑った。
___ふぅーん。まぁ、私達は親なんていないから分からないけどね。伝えとく。
「頼む。」
いつの間にか山の上からほんの少し顔を出した太陽が妖精の顔を照らした。
白い肌が赤く見える。
白い服が光って見える。
綺麗だった。
___もう森に戻るわ。
「そうか。」
___次、寝顔見たら殺されるかもだから気をつけてね。
「……先ほど、そんなことは無いと。」
___言ったかしらそんなこと?
「此方を誑かしていたのか?」
___さぁてね。少なくともそれを信じ込んでくれたおかげで、私は緊張することなく、話が出来たわ。
妖精は、人をおちょくるのがどこまでも好きなようだ。
___じゃあ、
「ああ。」
ふっと消えた。
煙のように、靄のように、霞のように。
自然に溶けていった。
「で、妖精からもらったと。」
「ああ。」
花をじっくり見ながら、レジーナは首をかしげた。
「その妖精、ミミィが危ないとか言ってなかったんだよね?」
「特には。」
「あっそう。……んん?」
レジーナは何かに気が付いたように唸り、目を細める。
良く歩きながら見れるものだ。
「これさ、花弁に柄がついてる。綺麗な柄……」
「そんなものあったのか、気が付かなかった。」
「…………。デリス。これは気付かなくちゃ駄目だわ。」
「ん?」
後ろを歩いていたレジーナは少し歩みを早めて俺の隣に立つと、前を向いたまま、ん、と花を渡してきた。
それを受け取り、鞄にしまう。
何かあったのか、と話し掛ける前に、レジーナが口を開く。
「ミミィ。無事みたい出よかったじゃない。今はまだ。」
「………。そうだな。」
「急ぎましょう。私の考えが正しかったら………」
「『今は』、は終わってしまうかも知れない。」
***
こんにちは。まりりあです。
タマネギを切った後の手のニオイが好きです。
では、また次回。




